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Re:   、 マリオネット  【短編集】 ( No.7 )
日時: 2010/11/14 20:51
名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: OeKIzsMq)


 ▼君のいない日

—12月—
インフルエンザの大流行もあり、風邪を引く者が多い12月になった。外に出れば風が吹いただけで全身に鳥肌が立つというほどの寒さに覆われて、私の吐く息は煙のようにふわふわとしていて白かった。その光景がどこか心を擽る楽しさで私は学校に向かう途中何度も息を吐いた。学校の敷地内に入ってから、あることに気付く。二酸化炭素の出しすぎだということに。少し反省しながら私は下駄箱について、上履きを取り出す。床に向かって放り投げると小さくぱんっとおとを立てる上履き。私は手を使わず、足だけでもぞもぞと足を入れるとひやりと背筋の凍るような寒さを抱えていた、上履きだった。私はその場でうひゃっと間抜けな声を洩らすが、周りのものは誰一人振り向かなかった。

( 12月の寒さみたいに、皆が冷たくなったみたい )
そう思いながら、私はそっとその場を去った。

今日室内は淀んだ空気で埋め尽くされて、皆外から教室に入ってもマスクを取ることはあまり見られなかった。私は何も言わずに自分の席に付くと小さく短い溜め息を吐いた。それから、ごろんと机に倒れかけるとふっと瞼を閉じた。ふと、誰かが咳き込むのが聞こえた。風邪の時期だなあと鬱になりつつも私はそのまま、俯いていた。暫らく、私は机に俯いていると、とんとんっとどこか控え目な繊細な力で肩をたたかれた。ふっと顔をあげると柔らかな笑みを身につけた少女がいた。私はその少女を見つめてあっと声を洩らした。そんな私を柔らかな栗色の瞳で見つめて彼女はそっと言葉を紡いだ。

「 おはよう、七穂 」

面倒見の良い母親を連想させられるような微笑だった。私はそっと口元で笑みを作り彼女に対応する。

「 はよ、風邪引く人多いよねえ。聖奈も気をつけなよ? 」
「 ——・・ありがとう、優しいね 」

私は彼女の最後の言葉を聞いてえっと声を洩らした。今日は何回も声を洩らしたものだ。私は自分に心中で呆れながら、現実では表情をも出さず、ふっと口元に笑みを作って彼女の体を肘で突付いた。彼女はあぅ、と弱弱しい声を洩らしながら少しばかり、ほほを紅潮させて突付く私の肘を手で抑えてきた。その弱弱しい仕草はなんとも愛らしい。

「 優しくなんか無いよー? 」
「 そう、かなぁ? 」

彼女は疑問符を頭の中に浮かべたような表情をする。ふうん、私のことずっと前から優しいとばかり思ってたんだ。残念、私は本当は優しくなんかありません。私はちょっぴり悪戯っ子で悪い子よりなのでした。私は肘で突付くのをやめて、彼女との話に集中しようと思ったとき、彼女は少しばかり残酷なことを口にした。

「 荒野くん、今日は風邪でお休みみたいだね 」

空気が張り詰めた、というのだろうか。ピリリッと一瞬だけなったんだと思った。私は喋ろうとうきうきしていた口の中の舌をひゅっと縮こまらせた。思わず、何もいえなくなってしまう。目の前の彼女は私の異変に気付いたのか、あのことを思い出したのか、ごめんといって彼女は身を縮こまらせた。平気だよ、と不器用な作り笑いをすると彼女はとても寂しそうに頷いて自分の席へと戻っていった。私は彼女が席についたのを確認して、小さく溜め息を吐いた。遅刻じゃなくて欠席。それが少し、心には痛かった。荒野君というのは私の初恋の相手、その初恋は未だに続いてはいる。それ以上荒野君の話をするのは私が傷つくと感じたのだろうから、彼女は身を引いたのだろうな。私は彼女の心遣いに対して、感謝しつつ、あの人の席を見つめて、視界の端に涙を溜めた。

  ( 君の元気な姿を早くみたいな )

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納得いかない、読みにくいかもしれませんが、ご勘弁を!