コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ◇◆人はそれを恋と呼ぶ◆◇ ( No.39 )
日時: 2010/11/25 20:14
名前: *ちぇっく* ◆rYQoPja4V2 (ID: CFE7lDA5)

第七話 −行方を追って−

[奏太目線]



「…う……?」






ココは…何処だ?




ゆっくりと目を開ける。

そこには、いかにも実験室、という様な風景が広がっていた。
ゴポゴポと音を立てるフラスコが、余計にそう思わせる。

自分の体は、なぜか鉄柱にロープで縛り付けられていた。




「確か俺—…」




その時。




「目が覚めた?…哉森君。」
「!」

とっさに顔を上げた。
目の前にいたのは、銀色の髪の男の子。
コバルトブルーの瞳が嘘のように輝く。

「なんで俺の名前を…っていうかお前は誰だ?」

「秘密〜♪」



「は!?」

俺は言葉を失った。
なにより、気持ち悪かった。

「こんにちわぁ、否、初めまして。
 
   僕が生きてるけど存在してない、

 君と同じ受験生の亜縫 霞です」


気味悪く笑いながらそいつが言った。

「じゃあ…手紙を出したのも…!?」
「うん、ぼくだけど」

何の問題もないようにケロリと言う。

「冗談じゃねぇ!早く返せよ!」

「うん、わかった。

  じゃあ愛紗ちゃんたちが来たら返してあげるよ」

「なっ…愛紗達は関係ないだろ!?」

愛紗達のことも知ってるとなると、ますます気持ち悪い。
俺は内心一刻も早くここから逃げ出したかった。
でも、こいつはその気はないらしい。

「大アリだよ!

まぁ『キミが話さなかったら』関係なかったケド」

「…っ!!」

「まあまあ、そうあせらずに。

   ゆっくりしていくといいよ♪」

二コリと蔓延の笑みを浮かべてそいつは言った—…。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[愛紗視点]


(待っててね…奏太…!)

そう走り出し、ちょうど『目的地』についたときだった。

「おぅーい、愛紗ちゃーんっ…」

聞きなれた声がした。

「!? 波兎君!」

「これ、今朝哉森君がおとしていったんだよ〜」

ずっとおっかけていたのだろうか、息が荒かった。
波兎君はお気に入りのパーカのポケットから、
銀色の鍵を取り出し、私に渡した。

まだ真新しく、傷一つついていない。

「なにこれ?」

「多分、僕にぶつかったときに、落としていったと思うんだけどっ」

波兎君が錠を見つめながら言う。

「ホントは、さっき渡そうと思ってたんだ…

    だけどホラ、僕、忘れちゃってて!!」

「だけど、奏太こんなの持ってたかしら?」

玲も私の手の上の錠を見つめながら言った。

「とりあえず、俺たちが持っておこう。」

河野が軽く頷きながら言った。

「…探しに行くんだね、哉森君…」

波兎君が、急に声の調子を落として言った。

「あ、ごめん、そのことは…」

「大丈夫、誰にも口外しないよ!

  授業のほうも、うまくごまかしておくから」

波兎君がニコッと笑いながら言った。
こういうとき、やっぱり友達思いだなぁって思う。

「じゃあ、僕もう戻るね。がんばって!」

「ありがとう、波兎君っ!」


私たちは波兎君が見えなくなるまで見つめていた。


「…とりあえず、ここにはなにもないみたいね」

「そうだな、落ちてたのは波兎が拾ったその錠だけだったみたいだ。」


「何処行ったんだろ…奏太…」

私は手の中の錠を見つめながら呟いた。