コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お姫様は笑わない! ( No.11 )
- 日時: 2010/11/11 22:41
- 名前: 白銀の夜 ◆/.wGEvSoxI (ID: bQbYMR0G)
ホームレス
「見捨てられた者」
リクシナはその言葉を訊いたことがある。
とある事情で捨てられた者、仕事などが見つからない、もしくはリストラされた者などが家を無くし、世を彷徨っている人たちのことを指す。
貴族などでも時々ある。
王族のリクシナには関係ないだろうが。
「この森は幽霊がでるこで有名ですが、人が住めるのですか?」
リクシナが訊くと
「へ、幽霊?」
と真っ青な顔で訊き返された。
「そんなのいないからっ」
必死の弁解。
とてつもない慌てよう。
さては幽霊が苦手なのだろうか。
「そうなのですか」
身の安全が保障され、安心する。
ともあれ、森の中へ入っていく少年。
道なのか…?と思われる複雑な道をスイスイ進んでいく。
時々ウサギやキツネなどを見かけた。
黒い森の表面とは裏腹に中は綺麗な緑をしていた。
こんな綺麗な森をみたことはないだろう。
木々からの木漏れ日は浅く地面を照らす。
雨が降っても葉が庇ってくれる。
誰がこの森を幽霊がでるなどと嘯いたのか。
「この森は神様がいるって言われているんだ」
少年は言った。
「周りは黒いけど、それは神様がこの森を荒らす者がこないようにするための手段だって。神様はこの森が大好きなんだって」
「……私も、ここが好きです」
だろ、と笑った。
黒い表面。
だからといって悪く言うものじゃない。
中をちゃんと見て判断するべきだ。
「ねぇ。君」
「君じゃない。ユウジって言うんだ」
ユウジと言う少年。
家族以外で知った初めてのほかの人の名前。
「ユウジ、その森の神様に会ったことがありますか」
「あるよ」
冗談ではない。
真剣だった。
「一回だけだけど、訊いていたのと同じだった」
彼は言い切った。
神様。
森の神。
一度でいいから会ってみたいとリクシナは思った。
外に出てきて何も知らない王家の少女。
その存在はとても薄い。
それでも家の中に閉じ込められて、苦しむ平民の姿を見ながらなにもできない。
それでも、今、外に出れて、それで神様に出会えたのなら。
自分は幸せだと感じることができるだろう?