コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お姫様は笑わない! ( No.12 )
- 日時: 2010/11/14 20:42
- 名前: 白銀の夜 ◆/.wGEvSoxI (ID: bQbYMR0G)
緑が光る道をぬけ、たどり着いたそこは
「楽園、ですか……」
花畑が広がる、『楽園』だった。
木々に囲まれた広場は限りなく花が咲いている。
本の中に出てくる楽園そのものだった。
「みんな出て来い」
ユウジが言うと、木の影から人が出てきた。
一人、二人………全員で十二人の人。
大小様々で、赤ちゃんもいればおじいさんもいた。
みんなリクシナを警戒している。
睨みつけて、拒絶しているがリクシナは全然動じない。
——この、嘘吐きの低貴族が!
昔の言葉がよみがえる。
そう、慣れている。
ずっと、昔から。
「警戒しなくていい。この子は追われているんだ。少しの間だけここにいさせてあげよう」
追われていることはあっているが、違う意味で追われている。
それをユウジは知らない。
逃げ出したのはリクシナだ。
だから悪いのはリクシナだ。
でも、それでいいと思ったのだ。
あのお城に何もしないでいるよりも、外にでて、こういう体験をしたほうがいい。
貴族だからって甘やかしてはならない。
今、この森で見捨てられた者たちと過ごすことで何か得られるかもしれない。
二度とないチャンスだ。
貴族が平民と共に入れる時間。
「わかった」
一人の少女が言った。
短い茶色の髪が魅力的だ。
それを合図に、次々と賛成の声が上がる。
もし、このリクシナという少女が貴族でここにいるとしたらこの人たちはどう反応するだろう。
十二人の中に金髪の少年が混じっている。
元貴族の人だろう。
リクシナが王族だとばれれば襲い掛かってくるか。
親は失業したのは貴様のせいだと。
まぁ、この髪がある限りばれることはないと思う。
「お嬢さん、名前は」
一人のおじいさんが訊いた。
リクシナは一瞬迷ったが、自分の名前が知られているはずない。
「リクシナっていいます」
名字を持っていたら怪しまれるだろうから。
今は伏せておいておく。
みんな、よろしくと言って、笑った。
リクシナは笑わなかった。