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Re: お姫様は笑わない! ( No.13 )
日時: 2010/11/15 19:40
名前: 白銀の夜 ◆/.wGEvSoxI (ID: bQbYMR0G)

『迷子になるから、ここから動かないでよ』


そう、ユウジから言われたはずなのだが。

「……本当に複雑ね」

そんなの無視して森の中を探検するリクシナ。

森に来たのに遊ばずどうする。
って感じだ。
わんぱくというより、森の中が珍しいだけだと思う。

みんながいた楽園からずっと一直線できてるから迷子にならない。
道なき道を奥深く進んでいく。

時々見つけた川や湖で喉を潤す。
水は透き通っていて、歪んだ世界を見さしてくれた。

綺麗な花もところどころに咲いていた。
紫や赤や水色。
色とりどりの花がたくさん。

お城の中では見れない風景がそこにあった。

中庭でも表せれないだろう。

どんどん日が陰って、夕暮れに近づいてきた。
そろそろみんなが心配する。
一直線で進んできた道を帰り始めた。


                 ★


もう日は堕ちて、辺りが闇のように暗くなった後。

「おいっ、リクシナはいたか」

森の見捨てられた者たちがリクシナを探していた。

トイレに行くといったきり帰ってこないのだ。

「くそっ、どこにも行くなっていったのに」

その声には怒りと悲しみが混じっている。
楽園には火の灯ったランプが木にぶら下げてあり、昼のようにとはいかないがかなり明るい。
広場の少し離れた場所も探してみたが全然見当たらない。

あと少しでも離れるとここには戻れなくなる。

なぜなら

「リクシナに言っておけばよかった。昼と夜で森が変わることを」

そう、この森は昼と夜とで森の図形が根本的に変わってしまう。
その中間の朝方と夕方は森が移動するので楽園からでないことになっているのだ。
夜の図形は誰も知らない。

でも、それをリクシナは知らない。

知っていれば夕方になる前にここに戻っていたかもしれない。

「くそっ」

夜はまだまだ続く。


                 ★      


「……ッ…イッ」

また枝が皮膚を刺す。
血が出てきた。

これでもう十カ所だ。
足に五、両手に四、頬に一つ。

絆創膏なんて持ってきてない。

「なんで……ここには木が無かったはずです」

一直線で進んでいったら木にぶつかったのだ。
リクシナは間違ってはいない。
たしかにここには木なんて無かった。

「……さっきもだったけど、森が動いてる…?」

さすがはリクシナといったところか。
察しが早い。

でも、遅い。

リクシナの体力がもたなかった。


リクシナはその場に倒れこんだ。