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Re: お姫様は笑わない! ( No.14 )
日時: 2010/11/16 00:03
名前: 白銀の夜 ◆/.wGEvSoxI (ID: bQbYMR0G)

何分経っただろう。

ふと目が覚めた。

目の前には、道の倒れた途中ではなく湖があった。
木が移動したのだろうか。

でも、それは次の瞬間、間違いだと気づかされる。


「起きたか、リクシナ」


名前を呼ばれて振り向いたその先にはユウジがいた。

怒ったような呆れられたような顔をしている。

「……え…と?」

頭が追いつかない。
なぜここにユウジがいるのか。
なぜリクシナがここにいるのか。

「まったく、ここまで移動してあげたんだから、お礼をいいなよ」

なるほど。
道に倒れたリクシナをユウジが見つけた。
それを湖があるこの場所へ移動させた。
ということか。

「ありがとうございます」
「もう一つ」
「ごめんなさい」
「よろしい」

怒っていたような顔がただの呆れた顔になる。
なんか、わんぱく娘だなー、と思っているようだ。
本当はここが珍しくて探検していただけなのだが。

「朝、この森が動き終わって昼の状態に戻ったら楽園に戻ろう。あ、えっと、……」
「知ってます」

ユウジはこの森が動くことを教えようと思ったのだろう。
だが、もうリクシナは帰り道が分からなくなった時点で察している。

「夜と昼で姿が変わるんですね。しかも……変わるのは姿だけではない、そうでしょう?」

周りから聞こえる唸り声。

「夜になると出てくる生き物も違う。この声は狼ですね」

湖を背に立つリクシナ。

ユウジもゆっくりと立ち上がる。

察しのよすぎか、苦笑している。
リクシナは懐からそれを取り出した。

月に照らされ光る、銀。


ナイフ。


月が背後から照らす。
笑みの無い顔。
余裕有り気な雰囲気。

木の影から一匹。
銀と白の毛並みの狼。

リクシナと同じ、満月のような目。

ナイフを縦に振る。
ユウジは狼になれているのか震えていない。
だが、余裕ではなさそうだ。

楽園に狼は踏み込まないから。

銀の狼は襲う気配がない。
それでも唸り続ける。

リクシナは片手のナイフに目を向ける。
フムフムと頷いた後ナイフを懐へ戻した。

狼が唸るのをやめた。

「このナイフから敵だと想像したんですね。なかなか賢い狼です」

そういいながら狼に近寄った。

「おいっ」

ユウジが声をかけたが気にしない。
リクシナの頭の中は初めて見た狼のことでいっぱいなのだ。

でも一回触れると背を向けてどこかに行ってしまった。

はぁ…とため息をつくと

「ため息つくなっ、あれでも軽いほうなんだぞ!」

ユウジが寄ってきた。

「狼に近づこうとするなんて、無茶な…」

呆れられた。
でも、それでいい。

とても貴重な経験ができたのだから。

ごろんと寝転んだ草原はふかふかしていた。


                 ★


夜空に浮かんだ星。

紫に冴えた星たち。

手を添えてみた。


今なら、あの星が取れそうな気がした。