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Re: お姫様は笑わない! オリキャラ募集! ( No.33 )
日時: 2010/11/27 15:48
名前: 白銀の夜 ◆/.wGEvSoxI (ID: bQbYMR0G)

彼女、アヤカの声で静まり返る。
金髪も驚いて口をあけている。
リクシナは時間が止まったようなそこを一人、アヤカの方を向いた。

「さっきから訊いてれば、自分勝手なことを。リクシナの言うとおり、たとえこの国の姫でも今は逃亡者。貴族なんて関係ない」

淡々とした口調で言う。
ただ、その声には貴族への恨みを感じる。

「リクシナも回りくどい言い方なんてしないではっきりしたらどう?」

少々きつめの言い方だが、リクシナへの応援のようにも聞こえる。
リクシナは視点をアヤカから金髪へ変えた。
第四王女としてではなく。

「今の私は王族ではなくただの一般平民です。王族への反感を抱かないで下さい。文句なら私のところへどうぞ。それと、あなたが目障りだと思うのならば私もここから出ますし。反論があるならお聞きしますが?」

挑発の言葉も交えながら。
その挑発にのせられたのか、「このっ」金髪が武器を持った。
木の枝などを切るためにつかう、尖った石だ。

それをリクシナへ振り上げて、


「やめなさい」


一つの言葉がとんできた。
今度は皆の視線がその声のもとへ。

「まったく、それは武器ではないわ。手を下ろして」

声の持ち主、森の神ウィルビウスは静かに言う。
怒っているようにも聞こえるが優しい声だ。

地毛の深緑の髪がユラユラ揺れる。
歩く度、日光が髪にあたり髪を光らせる。

「リクシナちゃん、大丈夫?ってまぁ大丈夫よね。口でも勝ってたしあなたにも武器があるものね」

リクシナの懐を見る。

皆はやはりポカンとしていて、動いていない。
動いているのは「また会いましたね」とでもいいそうなリクシナとアヤカだけだ。
ウィルビウスはそんな状況を気にせず笑っている。

「えっと、どうしたんですか。森の巫女さん」
「森が騒いでいたから、来てみたんだけど……思ったより大丈夫だったしね。どうせ今日のうちにここを出るのでしょう?お話をしないかしら」
「いいですよ」
「じゃあ、そこの少年少女も一緒に」

リクシナたちはユウジとアヤカを連れて、あの緑に囲まれた湖のほとりにでた。
アヤカは状況がつかめたらしいがユウジはわからないらしい。

「久しぶりね、アヤカちゃんにユウジ君。大きくなったわねぇ」

ウィルビウスは楽しそうに言う。
というかウィルビウスだけが楽しそうだ。

リクシナは笑わないし、アヤカもクールだし、ユウジは驚いているし、で。
ウィルビウスは神鈴束を鳴らした。
シャラン……と。

すると、ウウウゥと唸り声が聞こえた。
獣の声。

「狼、ですか」

あの時のだ。
銀と白の毛並みが特徴的な。
満月のような瞳。

「この狼はルグエスって言うの。私が名付け親なんだけど。この森に住んでるのよ。旅のお供に連れて行ってくれない?私からの餞別よ」
「「「…………」」」
「え?何…?」

リクシナたちの無言に体を縮める。

「いや、旅をするのは私であってこの人たちは関係ないじゃないですか」
「あら、そうなの?」

ウィルビウスはわざとではなく本当に分からなさそうに言う。
ルグエスは唸るのをやめて座った。

「だってそうでしょう?ユウジ君は旅に出たいとか思ってたし、アヤカちゃんは………元王族についていくのも悪くないと思うわ。貴族が全員同じなのか、その目で確かめるのも」

リクシナは何の意味かは分からないが。
アヤカは「ええ」と瞳を閉じた。

「私は、あなたがいた貴族が大嫌い。でも、あなたは違った。できるだけ、力になるからよろしくできる?」
「……心強いです」
「俺は、自分勝手みたいな理由なんだけど」
「……いえいえ、そんなことはないと思います」

ウィルビウスは笑う。
初めからわかっていたような。

リクシナはウィルビウスにお礼をいい、ルグエスを見た。
狼なんてどう扱えばいいかわからないのに、心が通じ合うような感じがした。

朝日は昇り、もうすぐ昼だ。
金髪の前を、勝ち誇った目で通り過ぎ、リクシナたちは森をでた。