コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お姫様は笑わない! ( No.61 )
- 日時: 2011/01/06 13:26
- 名前: 白銀の夜 ◆OnuzI5zYIA (ID: bQbYMR0G)
外はそこそこ暗くなく、前が見えないことはなかった。
リクシナたちは、まだ誰もいない村を歩く。
村全体はそこまで広くない。
お城と大きさが変わらないくらい。
家も少ない。数える限り十軒がバラバラに建っている。
家の隣には必ず井戸と畑。
自給自足みたいだ。
(あたりまえですよね)
お金が回っていないから。
それでここまでしているのだからすごいほうか。
もしかしたら、あの家の中には家族以外の村人も一緒に住んでいるのかもしれない。
窮屈にしながら寝ているのかもしれない。
「リクシナ、あそこ」
アヤカの目の先。
木がいっぱい立っている。
村人たちが植えたのだろう。
そこだけしか木が生えていない。
「入ってみますか」
入り口みたいなものから二人が入る。
中には、湖。
大きくなく小さくなく。
中間の湖。
底は深そうだ。
井戸の水がなくなったらここから水をもらうのだろう。
「……誰」
後ろから、声。
二人が振り向くと———一人の少女がいた。
二人より年上だろう少女。
黒髪のストレート。腰ぐらいまである。
白い肌に夜のような黒い瞳。
「……昨日の旅人?」
「え、あの」
「……どうしてここに」
「探索」
困っていたリクシナの代わりに答えるアヤカ。
少女は二人を睨んで
「……なんの?」
……迫力がある。
ゾクッと背筋からの寒気。
それでも負けんと答える。
「行方不明の子供たちのことについてです」
「…………」
「なんか、白い女の子が犯人みたいで」
「私たち、その女の子をみたことがあるので捕まえてみようと思ってるんです」
ちょっと最後のほうは嘘が混じっている。
捕まえようとの理由は面白そうだから、なんだけど。
「……余計なことはしないで」
「でも村の子供がさらわれているのでしょう?私たちが協力しても村には支障なんて出ませんよ」
「……そういう問題じゃない」
「じゃあ、どういう問題ですか」
「……いいから余計なことはしないでっ」
黒髪の少女はそう言い捨てて去っていった。
リクシナは黙る。
「リクシナ、今のも遊んでたの?ユウジの時みたいに」
「……いいえ、ちょっと確認を」
「なんの?」とアヤカが尋ねる。
リクシナは息を吐いて
「あの人、何か隠してますよ」
「何でそう思うの」
「ああいう捨て台詞、いいから余計なことをしないで、理由になってませんよ」
「私たちがよそ者だから、もしかしたら子供になにかするかも、とか考えてるんじゃないの」
「どうしてですか?犯人は分かっているんですよ。つまり、触れてはほしくない真実があるということです。私はあの人を追いかけます。アヤカは先に帰ってください」
「私も行く」
「それはいけませんよ。……早く帰らないとユウジが使え物になりませんから」
アヤカは微妙な顔で頷く。
リクシナは軽く頭を下げると木々を潜り抜けて出て行った。
*
「———クスクス」
少女は笑う。
あの部屋で、真実を見ながら。