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Re: お姫様は笑わない! ( No.67 )
日時: 2011/02/12 13:16
名前: 白銀の夜 ◆OnuzI5zYIA (ID: bQbYMR0G)

四話「表の裏側」

シナヴァという町は、一言で言うと綺麗だ。
白い建物に海の青。どこにいても展望台。
この国の都市、といってもいいくらいだ。

そんなこともあってこの町にはたくさんの外国人が住んでいる。
国民と外国人と半々。
言葉は世界共通なので通じる。

貴族たちも泊りがけでここにくることが多い。
今もあそこに——

「邪魔よっ、この愚民がっ」
「——ッ」

貴族にけられている平民が。
何をしたのか、遠巻きで見ている人たちにリクシナは聞く。

「何があったんですか」
「あのけられている人が、貴族が道を歩いているところに立ちふさがったんだ」
「理由、分かりますか?」
「ほら、あそこを見てみ」

その人が指す方向に倒れている犬。
起き上がる気配は、ない。

「貴族が乗っている馬車に轢かれたんだ。なのに謝りもしないから怒ったんだよ。“謝れ”って」

なるほど。
貴族の道をふさいだあげく、謝れとの命令。
貴族が怒るはずだ。
でも、どちらが悪いのかここにいる人たち全員が知っている。

死んだ犬と誇りを捨てない貴族。
あなたたちはどちらを選ぶか。

この人たちは貴族に加勢したんだ。
ただ見ているだけ。
心だけでは意味がないんだ。

ならリクシナの答えは決まっている。

「そこの貴族、その者に対する暴力をやめなさい」

あえて、怒鳴らず。静かに。
満月のように光る目の刃を向ける。

その立っているだけで感じる威圧感は、どれほどのものか。

貴族はリクシナを知らなかった。
いや、髪の色が紫のこの少女を王族と見分ける目がなかっただけ。
リクシナはずっと前にこの貴族の息子に虐められたことがあるのだから。
親がそのことを忘れているだけ。

「な、なんだ貴様。私にたてつくか!」
「……だから、何ですか。あなたがそのままこの者に傷をつけるというのなら、法により牢屋にぶち込んでやります」
「…貴様がそんなことできると——」
「——できますよ。王族の力で、あなたを牢屋の中に入れることくらい簡単です」

そこで貴族は気づいたみたいだ。
紫の髪をした貴族と縁のなさそうなこの少女が誰かを。

「入れられたくなければ、今すぐこの者に謝罪をしなさい」
「はっ!?」

貴族は嫌そうな顔をして

「すまなかった」

それでも頭を下げなかった。
貴族の汚い誇り。

「あなたもあまり無茶をしてはいけませんよ」

そういい立ち上がらせる。
そして死んだ犬のほうに目を向けると、そこには何もなかった。

「……リクシナ、このこ死んでなかった」
「…えっ!?」
「……いや、死にそうだったから応急処置をした。だから早く動物病院へ」

リトは犬を飼い主にあずけ、急かせた。
リクシナには一つの疑問。

「なんで、あなたがいるんですか」