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第一話【消える消えるとある生徒】

彼女は流れでるあせもそのままに家の中を走り回っていた。
ぎらぎらと照りつける陽光とエアコンをつけているのに高い室内温度を気にしていないのか、それとも気にする暇が無いのか。
彼女はばたばたと家の中を走り回った後、すぐにいすに座って泣き出すという珍行動を繰り返していた。
その理由は、自分の娘、塩塚華蓮がいなくなったからである。
そして聞くところによればこの区内スベテの小学校の生徒が【勉強をまじめにやっていて先生に従順な模範生徒】を残していなくなっているらしい。
集団誘拐なのではないか、と思うと彼女の心臓は切り裂かれたように痛むのであった。
そして、彼女がふたたび椅子から腰を上げようとしたその時、手元においてあった携帯電話が震えた。
彼女はそれを手にとって枯れて震えている声で返答した。

「……もしもし。」

彼女の沈んでいる声とは反対に、明るく興奮した声が携帯から聞こえてきた。
その声は華連と同じクラスの【阿波　陸奈】の母親、阿波　玲子の声だった。

「もしもし!?　学校の生徒、見つかりましたわ！」

何故子供達が消えたのにそのように明るくしていられるのかと苛々していたが玲子の言葉で彼女の苛々は吹き飛んだ。
先ほどの震えて掠れていた声ではなく、しっかりとした良くとおる明るい声で返答を返す。

「見つかったんですか!?　良かったです……で、娘
達はどこに？」

彼女の返答に玲子は一瞬躊躇ったのか間を空けて話し出した。

「それが、学校に……」

凄まじい絶叫が彼女の口から漏れるまで、あと僅か。