コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 1 ‐ 07 ( No.60 )
- 日時: 2010/12/06 19:03
- 名前: 夢久 ◆inazumaCHw (ID: yjS9W/Zh)
バターを塗ったトーストに目玉焼き、簡単なサラダ。いつも通りの普通な朝食を、まだかまだかと飢えている胃に次々と放り込む作業が終わると、段々眠くなってきた。
よく考えたら、俺は日曜いつもなら十時ぐらいに起きているところを六時ぐらいに起こされたんだ。そして訳のわからないことを言われ、色々と未彩に体を壊され、壁まで壊され、頭の中が眠気に浸食されている上絶賛混乱中になっていたんだ。それが今思えばほんの二時間弱という短い時間の出来事で。
冷静になればこれが現実だなんて思えない。が、何回頬を抓っても目の前にある世界は変わらないし、何回見ても俺のベッドには未彩が——てちょっと待て。
「未彩、お前誰の許可を取りそこに寝ているんだ……!」
「あたしの許可。ここきもちいーねー」
「俺の許可を取れ! お前の許可はミジンコ程度の価値にしかならねえよ!」
きもちいーねーってそこは俺のベッドなんだが……。まあ、まあな、そんなに至福そうな顔で言われると無理矢理どかすなんてことはそのしたくないというか、な? 仕方ないからだぞ?
自分の中で言い訳——ではなく論理的証明をし、ひとまずベッドの件は忘れることにする。
さて、明日は月曜なんだよな。つまり学校がある。そしてさっき母さんもちらっと言っていたが未彩が転校してくるのだ。
コイツが。転入。俺の通う学校に。学年もクラスも一緒とのこと。
……あれ、そういえば未彩って何歳なんだろう。姿は……だいたい俺と同じぐらいだけど。ま、今聞いても無駄っぽいし——なぜならすでに奴は寝息をたてているからである——どうでもいっか。
で、そうじゃなくて。コイツ、本当にきちんとできるんだろうか……こんな奴がだぞ? 初対面で他人を馬鹿・性癖症扱いする奴がだぞ? 平気で人の骨を折ろうとする奴がだぞ? しかも無駄に力は強くて、見習いとはいえ死神で……。ダメだ。不安な要素が多すぎる。
いや、でも落ち着け。俺が気にすることじゃない。俺はこんな奴とは何の関係もありません、という風に装えばいい。例えいとこと言われても、一緒に住んでいると言われても、仲が良いわけではないと言えばいいんだ。そうすれば奴がどんなおかしいことをしたって俺は無関係だから大丈夫。周りに混ざって傍観していればいい話だ。おお、俺天才。
「……ふぁう」
すると可愛らしい声が後ろから聞こえてびくっとする。ななななんだ、まるで後ろで美少女が無防備に寝ているというようなギャルゲ的展開になったかと思ったじゃないか。誰だ、こんな恥ずかしい勘違いをさせた奴は。
深く深呼吸をして後ろを見る。視界に飛び込んできたのは、頬をほんのりと桃色に染め、すー、すー、と静かに寝息をたてている未彩だった。
……あながち、というより全然勘違いじゃなかったんじゃないか……?
そんな文章が俺の脳をよぎった。ふむ。ではさっき俺がした勘違いを思い返してみよう。“まるで後ろで美少女が無防備に寝ているというようなギャルゲ的展開”だったはずだ。じゃあ今目の前で起こっている現実を確かめてみよう。そうだな、“俺のベッドで性格は生意気だけど顔は可愛い美少女が無防備と言える状態で大人しく寝息をたてている”だ。
……いやいやいやいや、落ち着け俺。
騙されちゃいけない。コイツがどんな奴だと思ってるんだ。そう、コイツは俺の大切な骨と関節を何回も折ろうとした凶悪な奴だ。こんな外見上の可愛さに騙されるな。
もう一回深呼吸をする。あまり未彩を見ないようにして、すーはー。よし、落ち着いてきたな。そのまま平静状態を保ち、一階に下りて千春の相手でもしていよう。俺はそういう役が似合っているんだ。
「……しんと……」
……だ、騙されるな。ここで折れてしまったら終わりだ。負けるんじゃない真斗! こんな、寝言なんて可愛いわけがないんだからな! 可愛いわけが——
「真斗の骨……変な音……」
「ないぃぃぃいッ!?」
今なんて言ってた!? 俺の骨の音!? それはいったい何があったら、どういうシチュエーションの上でそんな音がでてくるんだ! お前の夢の中で俺はどうなっているんだ! なんで……なんで、夢の中でも俺はそうなってしまうんだ……。
俺は未彩にちゃんとした人間として扱われているのだろうか。……ダメだ……違うと信じきれない……!
まあ……まあ、いい。さっきまでの変な雰囲気は飛んでいったし。……正直かなりほっとしている部分もあるのだがそんなことはおいておくぞ!
よし、俺も一階に下りてソファで仮眠をとることにしよう。千春が色々と邪魔しに来るかもしれないが、そんなことは日常茶飯事だし俺の強力な睡魔がそんなものに負けるとは思えない。
そう思い始めた途端、急激に眠気が増幅してくる。さがってくる瞼を手でこすりながらなんとか開けて、心地よい睡眠に期待しながら階段へと向かった。
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次から第二話突入です。いよいよ? 学校生活の場面。