コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 2 ‐ 02 ( No.73 )
- 日時: 2010/12/10 18:50
- 名前: 夢久 ◆inazumaCHw (ID: yjS9W/Zh)
まあそうこうしているうちに学校に着き(俺の体力も尽き)。
“藤満学園”と彫られた石板が校門にあり、その門をくぐるとわりかし綺麗な校舎が見えてくる。広い校庭はきちんと整えられていて、ちり一つ落ちていない。……というのはまあオーバーな表現だが。けれども綺麗なのは本当で、俺は結構この学校が好きだったりする。
なんとか処罰を受けないよう、それとなく空橋の気を逸らしながら他愛もない会話を続け、教室——俺が所属する2‐Cの教室のドアをガラリと開けると。
「あら遅かったですわね二人とも」
「って、なんで天埜宮がこんなに早く来てるんだ」
黒く艶のあり、腹ぐらいまでの長さの髪を揺らして振り向いた女子——天埜宮楓。
結構人のいる教室の中で、その綺麗な黒髪は一際目立っている。緑色、といっても空橋とは違う、深みのある緑色の瞳。古くからある名家のお嬢様だが、高慢ちきなところなどは全くない、のんびりのほほんまったりとしていて——
「楓ー! 平咲君達じゃなくて僕の方をその綺麗な目で見てくれよ!」
「殺しますわよお兄様」
……しているのだが、天埜宮の兄、三年生の椿さんに関しては思わず目を逸らしてしまうほどの黒いオーラを纏う傾向にあるようだ。まあ椿先輩も朝っぱらから二年の教室に乱入してくるほど妹が好きなのだから天埜宮に殺されるなら本望「そんな怒ったところもかわ——うぁァあ頬骨がァッ!!」……見ていない。天埜宮が畳まれた扇子を片手ににこやかに微笑んで倒れた椿先輩を踏んでいる光景など全然見ていない。まるで畳まれた扇子で誰かの頬を突き刺しつつ抉ったような音などは幻聴に決まっている。
「……えーと楓、それでどうしてこんなに早く? たまたま?」
そうそう、話を戻せば——いや全部幻覚及び幻聴に決まっているのだが——いつもはかなり遅めに来る天埜宮がどうしてこんなに早く来ているのか、ってことなんだよな。
首を傾げる空橋と同じ疑問を持った俺達に、天埜宮はくすっと笑い、少し自慢げに人差し指をたてた。
「今日、転校生が来るらしいんですわ。楽しみで楽しみで、思わず早く来てしまったんですの」
「ちなみにその情報は僕が「お兄様、黙ってくださらないと次は首を叩きますわ」……なんでもないよ」
めきゃっと何かが踏まれた音は気にせずに天埜宮の台詞のみを気にしよう。……転校生? って、ああ、未彩のことか。
空橋が驚いた顔をしているのを見てようやく気がつく。未彩が転入してくることは俺ぐらいしか知らないんだよな。きっと椿先輩が知っていたのはあの多方面に広がる情報網(妹を守るための)があるからだろう。
「へ、へえ……女子だったらいいけど。結構わくわくするわね」
どうやら空橋はそれなりに興味を持っているようで。……だがな空橋、確かに奴は女子だが迷惑をかける存在だ。そしてわくわくなどという平和で可愛らしい言葉は奴に向けて使うものではない。
まあ、こんなことを言っても「?」という顔をされるだけだし。それにどうせすぐわかることなんだから、今俺が言わなくたっていいよな。
そんなことを考えていると、がらりとわりと丁寧にドアが開けられる音が聞こえてきた。
「おはよー……って、あれ? 皆妙にざわついてない?」
その音の主は、俺の心友、笹本遥。
ふんわりしたレモン色のショートカットに優しい性格を表した明るい茶色の目。男子だが、ほんわかしていてすぐに人の手伝いをしようとしたり、一生懸命努力したりと空橋よりめちゃくちゃ良妻に向いているその性格も相まって一瞬女子かと勘違いしてしまう。
まあすぐに男子だということはわかるのだが、可愛いと思うことに変わりはない。可愛い、と言われると、急激にその優しい目に冷酷な光が差し顔には影が浮かび、ただ無言でこっちをひたすら睨んでくるという恐ろしい状態に変化することや少々無自覚毒舌なところをおいておけば。
そして、不思議そうに周りを見回している笹本を発見した途端、天埜宮が走り寄った。
「聞いてください遥君、今日はなんと転校生が来るんですわ!」
楽しみで楽しみで、とさっき言っていたが、本当にそうなのだろう。いつもおっとりしながらも気品を保っていた天埜宮が、まるで小さい子供が新しく身につけた知識を披露するかのような表情をしている。こういう天埜宮も可愛いもんだ。
「えっそうなの? ふぅん、仲良くできるといいなあ」
「きっと遥君なら大丈夫だと思いますわ」
口元に手を当て、ころころと鈴の音のように笑う天埜宮にはまたお嬢様らしい気品が戻っていた。うんうん、やっぱりこっちのほうが可愛いんじゃないか? まあ元が美少女だからどんな感じでも可愛いんだけ
「平咲君。楓が可愛いのは仕方ないけど楓は僕のも「あらこんなところにゴキブリがいますわ」ふぐぁッ!?」
「…………」
どうやらゴキブリ(という名の椿先輩)は天埜宮によって駆除されたようです。
……いや、それにしても実の兄を普通に踏みつけるのもあれだがもし本当のゴキブリでもああやって踏めるのだろうか……天埜宮はそういうところでよくわかんないからな……。って待て。なんで椿先輩は俺の心を読めたんだ……? ううん、恐るべし妹大守護神(という名のシスコン)。
「ま、まあ……転校生を楽しみに、HRを待ちましょうよ」
空橋が冷や汗をかきながら無理矢理に笑う。どうやら空橋も妹大守護神の力と兄撲滅大魔王(という名の天埜宮)の殺戮パワーを恐れているようだ。
……でも、そんな兄撲滅大魔王とはケタ違いのパワーを持つ転校生を、楽しみにできるわけないんだけどな……。
* 2 ‐ 02
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遥には姉がいたりいなかったりw←
楓に遥と、新キャラぞくぞくーですね。あとでキャラ絵を投稿しとくんで、見てみてください^^