コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔術と姫と佐藤の王子 ( No.2 )
- 日時: 2010/12/13 18:10
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
- 参照: プロローグ 【上】
「こんばんわ」
—今日もまたいるんだね。
こんばんわという挨拶が標準となる時間帯。
人気の少ない小さな公園、そこにいつものように現れる二つの影。
「君もいつもいるんだね」
—お兄さんには言われたくないです。
一人は大きな鞄を腿に乗せた、二十代後半だろう顔立ちの若者。
「はは、お兄さんか……」
—?
一人は幼さに、何処か大人びた眼と口調をした少年。
—今日はどんな話をしてくれる?
「今日は……昔話をしようか」
音の無い二人の世界に、風が空気を斬る音が響く。
若者は大きな鞄に手を入れ、中から一冊の古い外装の本を取り出した。
無で固められたその本を少年に見せるように顎下へ持っていく。
「この本の中にある、小さな小さな昔話」
—昔話……
少年が呟くと若者は小さく頷き、本をゆっくりと開いた。
「これは、昔々の話……」
昔々。
王子様とお姫様が幸せに暮らす事が出来るように仕掛けられた、そんな……
どの昔話よりも古い話。
王子が姫を救い、ハッピーエンドを向える事が出来る物語。
それを作りだしたのは、それよりもはるか昔に人々の間で広まった物語によるものであると言える。
王子と姫が出会えば。
王子と姫が世界を壊す。
そんな、昔々のハッピーエンドの原点の物語。
世界のバランスを保つのは神ではない。
世界のバランスを保っていたのは神ではない。
世界のバランスを保つために生まれた者。
それが、我々人間である。
人間が保ち、創り上げてきた世界。
その中で大きな力を持ち、バランスを整える為に必要とされていた存在。
姫と王子。
慕われ、守られる姫と王子は力を持って生まれた者に与えられる名前であった。
姫が存在し、王子が存在する。
世界中のどこにでも、多くの存在があり、生きてきた。
しかし。
それを壊すことになる出来事が起こる。
バランスを保つ姫と王子の中で出会ってはいけない、二人が出会ってしまったのだ。
姫と王子の中でも偉大な存在で、一番と言っても過言でない程の力を持った姫。
姫と王子の中でも力は無いに等しく、バランスの微調整の為だけの存在とも言う王子。
二人が出会い、愛し合ったことで世界が崩れ始める。