コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔術と姫と佐藤の王子 ( No.3 )
- 日時: 2010/12/13 18:33
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
- 参照: プロローグ 【下】
力が無いと思われていた王子が、姫以上の大きな力を秘めていた為にバランスが崩れてしまったのだ。
その結果、このままでは人類の危機と言われるまでになったのだ。
それを阻止するために姫と王子は考えた。
命を自ら絶つことでバランスの調整を図ろう、と…
そして姫と王子が消えた。
偉大な力を持った姫と無力であった筈の王子の出来事から、多くの姫と王子は愛し合うことを恐れ、愛と結ばれる事の無い虚無の存在となったのだ。
愛を感じ、普通に生きたい姫や王子の願望から生まれたのが良くご存じの話と言うわけだ。
後に物語の中で幸せを手に入れた姫と王子。
知られてはいない、はるか昔のお話……
「姫と王子の昔話、どうだったかな?」
—昔話っぽく無かった。
若者が本を閉じる。
二人の話を見届けていたかのように吹くことを止めていた風が、急に音を出し始める。
「確かにそうだったかもしれないね」
—でも面白かったよ。
少年はぎこちない笑顔で、言うと若者を見つめる。 若者は本を同じように鞄へ仕舞うと、空を一度見上げて言う。
「そろそろお開きにしようか」
—もうこんな時間なんだ……
少年は驚いたように言うが急ぐ素振りは見せず、若者についで立ち上がった。
—また明日も居るの?
少年の言葉が闇に吸い込まれる。
若者は一度躊躇ってから首を横に振った。
それは明日はいないという事。
—なんでいつも居たの?
「人に逢うためだったけどもうその必要はないみたいだからね」
—逢えたの?
寂しげに言う少年。
それに若者は今度は大きく頷いて、鞄を手で握りしめた。
「だから、もうここには来ないかもしれない」 —さようならだね
「うん」
—またいつか逢えるかな?お兄さんともっと話したいな。
「私もだよ。いつか逢おう、いや逢えるさ」
若者は笑顔でそう言うと、歩き出した。
少年から。
公園から。
この町から。
この世界から、遠ざかる様にして。
それから、その若者が公園に姿を現すことは無くなった。
そして少年も、忘れられるかのように姿を見せなくなっていったのだった。
昔々。
そこには、自分の罪により死を選んだ者がいた。
一人は選んだどおりの結果。
しかし、もう一人はそうはいかなかったという。
今も何処かで、あの頃のままの姿で。
生きながらえている。
そんな。
はるか昔の、話の中のお話。