コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.10 )
- 日時: 2010/12/04 11:38
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
「いるのは分かっている。出て来るんだ!」
刑事みたいなセリフが外から怒号のように聞こえてくる。
きっとこれは白雪宛のものなのだろう。
白雪の表情はさっきまでとは違い、強張っているように見えた。
「一体何なんだ……?」
俺はどうしてこんな状況になっているのかが把握できなかったため、白雪に聞いてみる。
「あの人たちは……王国の人たちです」
白雪は強張った顔のまま、半分泣き出しそうになりながら答えた。
「王国? この世界は王国があるのか?」
俺の言葉に驚いた顔をして白雪は
「きゅうせ! ……木葉のところは王国がないんですか!?」
救世主ってまた言おうとしたうえにいきなり呼びつけ。ますます帰りたくなってきたなぁ……。
そうは思いつつも王国の人間が何故白雪を囲んでいるかということで、このままだと俺も帰れない。
そうこうしているうちに外からまた怒号が鳴り響いてきた。
「出てこなければ……ふたたび魔術を解放する!」
その怒号の後に何やら呪文のようなものが聞こえてくる。これってもしかして……詠唱か何かですか?
「まてまてまてぇっ!! 魔術? 聞いてねぇよっ!!」
「こ、こうなったら……戦うしかないですっ!」
「それもまてぇっ!」
俺の言葉をも無視して、白雪は立ち上がった後に一目散に外に飛び出していった。
「ちょ、ちょっと待てって!」
俺も必死で後を追いかける。
あんな自分より年下な女の子一人だけ行かせるわけにはいかなかった。
「ようやく現れたか……」
王国の兵士と思える20人あまりの小部隊が白雪のテントを取り囲んでいた。
そして、そのテントの中から現れたのは——小さな少女、白雪だった。
「何度も言っているように、渡す気はありません!」
白雪は声を荒げて王国の兵士たちに言った。
するとその王国の兵士たちの中から一人浮いた奴が出てくる。
いかにも公爵家! ってな感じのおっさん一名。
「君。あれは王国の秘宝たるものなのだよ。返してくれないと……色々と面倒なことになる」
「だってあれは——!」
と、白雪が叫ぼうとした瞬間、テントの中から俺登場。
とりあえず白雪に聞きたいことがあった。中にいても聞こえたこと。
「秘宝とか何やら……それって何だ?」
肩越しに俺は白雪に問いかけた。
白雪は微妙な顔をして俯く。まだ俺には話せないということなのだろうか?
「おい。貴様は何者だ?」
偉そうな長いヒゲを生やし、貴族の感じをあかるさまに醸し出しているおっさんが俺に言ってきたようで。
これはなんと答えればいいのだろう? 救世主だ! なんて答えたら笑われるだけに違いな——
「救世主ですっ!」
「……え?」
俺が何を言おうか戸惑っていた最中、隣にいた白雪が大きく、透き通るような声で言い放つ。
この小娘は出会った傍からそうだ。何でもかんでも突拍子もなく物事を言う。
救世主! とか言っても笑われるのがオチ——
「な、何っ! 救世主だとっ!?」
「そこ驚くところかっ!?」
ざわざわと王国の兵士たちも公爵みたいなおっさんに続いて騒ぎ出す。
(え、えぇ〜……あまりに予想外〜……)
この世界だと救世主だ! といっただけで何でももう免除されるんじゃないだろうか。
「あ、貴方様が……っ! 予言の救世主様ですか!?」
いきなり公爵おっさんが俺に敬語を使ってきた。今さっきまでのとは大違いだな、コノヤロウ。
「いや……俺はわからないが、どうやらそうらしい」
と、答えておいた。
俺は一般人だったんだぜ? いきなりこの世界にきて救世主ーだなんていわれても実感なさ過ぎる。
するといきなり高笑いが聞こえてきた。それは王国の兵士の方からだった。
「まあそうかっ! こんな小僧が救世主なわけあるまいか!」
と、公爵おっさんが笑う。何か妙に腹が立つことこのうえないのだが。
そして次に公爵のおっさんは右手あげ、不気味な笑顔を見せる。
「どうしても渡さないというのなら……その救世主とやらと一緒に地に眠らせてやろう! ——いけ!」
その掛け声と共に何か光るものが兵士の一部から見えた。
あれってもしかして——
「木葉! 避けてください!」
「——へ?」
目の前からは無数の火の玉。マジでか……?
「うわああああっ!!」
俺は目を瞑ることしか出来なかった。動けなかったのだ。
あぁ、もう当たって粉々になったのか、溶けたのかも分からない。
このままずっと目を瞑っていよ——
バチッ!
「いってぇっ!!」
何か強烈なものが俺の頬にぶち当たった。これが火の玉ですか?
「何寝てんのよっ!」
ぼんやりと目の前に立っていたのは——瀬菜だった。
「お、お前っ! どうしてここに!? てか帰らせてくれな——」
バチッ!
「ぶへぇっ!」またも殴られる。
「次そんなこと言ったらこれだけじゃ済まさないからね?」
その言葉にところどころ殺気のようなものが湧いて出ていることが分かったため、必死に頷く。
「な、何だお前はっ!」
公爵おっさんが瀬菜を指さす。
そういえば、瀬菜の腕になにやらとてつもなく物騒なものが握られている気がする。
それは、かなり大きく、長い、まるでガ●ダムが持っていそうな蒼く光る長身の剣のようなものだった。
「ま、魔術を切り裂いた……?」
横に寝転がっていた、といより避けていたのだろう。白雪が驚いた表情で呟いた。
一体コイツ……何者なんだ?
「さて……と。弱い者イジメは私の辞書にない。ということで……ここからは私が相手になってあげる」
どういう展開だ? これ。