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Re: ある日の放課後の魔科学 第2話スタート ( No.17 )
日時: 2010/12/07 00:12
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)

俺たち三人は目の前にどんぶり草を置いて(言っておくが飲み物だからな?)話を聞き入った。

「この世界は一つの王国によって成り立っています。そこには、もちろん王様と貴族がいて……
先代の王様はものすごく優しく、国民を第一に考えるとても素晴らしい方でした」

先代の王様のことを話す白雪はとても嬉しそうに話した。だが、それも一気に暗い表情になる。

「ですが……秘書でもある大臣が反乱を起こし、先代の王様が捕らえられてしまいました。
大臣だけならまだよかったものの……ご子息5人の中の3人が大臣の味方についたのです」

「……ずずー……」

「アンタ、タイミング悪すぎるわよっ!!」

ゴスッ!
またしても殴られた……。すみませんね! 寒くなってきたものでお茶啜らないとやってられんのですよ!
「ちゃんとわきまえろ! バカ!」とまで言われた。そこまで言わなくてもいいじゃないすか……。

「それで……その大臣たちの政治はとても乱暴で、自分たちのことしか眼中にないようなものでした」

「ひどいわね……」

「確かにな……」

ゴスッ!

「何でぇっ!?」

「アンタが相槌打つんじゃないわよっ!」

「俺って何してもダメなんですねっ!?」

同感して頷いて返事することすら許してくれないとは。もう何も言わずに黙っておこう……。

「王様は、今現在城の牢屋に閉じ込められています。その王様を助けるべくして立ち上がったのが反乱軍。
反乱軍は、今現在もなお王国と戦い続けています」

瀬菜は何か考え込むように「うーん……」と、唸るとその次の瞬間、言葉を口に出した。

「ということは、白雪は反乱軍なの?」

すると白雪は首を横に振る。
そして次の言葉は何とも衝撃の走る言葉であった。

「私は……反乱軍ではなく、王国の人間なんです」

「え……?」

意味がお分かりになっただろうか?
反乱軍ではなく、王国の人間。つまりは王国側ということだ。
王国側だというのにああやって襲ってくる理由は別のものにあるようだ。俺がさっきから気になるのは——

「その、お前の首にかけてるその綺麗な銀と青色をしたネックレス……それが秘宝とやらか?」

「ッ!? どうして……!?」

体を一気に硬直させると、驚いた顔で俺の顔を見てくる。
戦闘前に秘宝やら何やら言ってたしな。まあでもまさか適当に言った物が図星だったとはな……。

「秘宝?」

瀬菜はそのことを知らなかったので首を傾げるのも無理はない。
先の戦闘だって襲われていたから助けてやったという感覚なのだろうな、瀬菜からすると。

「……これは、王国代々伝わる伝説の秘宝なんです。これをとある場所で使うと、あるものを召喚でき、
その召喚されたものは正義にも悪にも世界を染めることの出来るほどの力を持っているらしいです」

——んなバカな。と、ここに来るまでの俺は言っていただろうな。
だがしかし、目の前であんなゲーム世界見せられたら信じざるを得ないだろう。
この世界自体が、俺にとってはありえない、ゲームの世界であるのだから。

「その秘宝を何で白雪が? 普通の王国側の人間といえど、そんなもの手に入らないでしょ?」

瀬菜の言葉はもっともだった。
普通の人間ならば、そんなもの手に取る、目で見ることすらも叶わないはず。
だがこの白雪という少女は平然とその秘宝を持っている。それはつまり"普通じゃない"ことを意味していた

「私は……」

白雪は思いつめた顔で顔を俯ける。
どうやら、あまり知られたくないことでもあるようだった。
あまり強引に聞きたくないが、この白雪という少女が何者か分からないことでは
この先どうすればいいのかまるで分からない。だからこれは絶対に聞いておかねばならないことだった。

「私は……王国の、ご子息なんです……!」

「……えーと、それは王国の5人しかいないご子息の一人ってこと?」

「はい……」

「………」

俺と瀬菜は思わず顔を見合わせた。
えーとあれか。王様のご子息で、女の子だから……この子、王国の姫か。
んじゃあれだな。俺は王国の姫に腹を跨れてのしかかりされてたってことか。……。


「「ええええええっ!!」」


俺と瀬菜は二人して驚きの声をあげた。
目の前に、この世界の姫ともいえる人物がいる。
まあなんていうかだな。それなりの覚悟はしていたがそれほどの人物だとは思わなかった。

「ご無礼をお許しくださいっ!」

俺はとりあえず謝っておいた。
タメ口、そして心の中でこの小娘……! っと、思ってしまったりしたこと。
今となっては後悔の材料でしかない。

「え、え!? いきなりどうしたんですか? 木葉」

「あぁ! だから敬語だけど名前だけは呼びつけだったのはそういう位だったからか!」

ガンガンと床に握りこぶしをぶつける俺の姿はさぞかし怖い絵だろうに。
瀬菜は俺より早くに落ち着きを取り戻し、話を戻した。

「えっと……? じゃあ貴方は王国のお姫様ってことになるわね?」

「あ、はい。一応そうですね……」

「……なるほどね……結構、大変かもしれないわね……」

何かボソボソと瀬菜は言っているが俺の頭は既にパンク状態だ。

「それで? 貴方の目的は一体何?」

瀬菜の次の問いに白雪は決心したような目で唐突に話し出した。

「私は……! この秘宝を使って召喚できるという召喚獣を召喚したいと考えています!」

つまりは、白雪はこの秘宝を使って出てくる召喚獣で世界を救おうというのだ。
王国の姫といえど、今は敵とみなされているようだった。
それほど秘宝には価値があるということは効果は本物だろう。
たった一人で、王国の少女といえど、このか弱い体で、一人考えて戦っていたのだ。
それはどんなに辛いことだろうか。一人で戦うということは。

「——分かった」

「え?」

俺は立ち上がる。何だか今なら何でもやれそうな気すらした。


「俺たちが手伝う! もうこうなったらやってやる。俺たちも世界を救うアルバイトをさせてくれ!」


一瞬、アルバイトという言葉で首を傾げた白雪だったが、すぐに笑顔となり

「はいっ! 宜しくお願いします! 救世主!」

と、返事をしてくれた。