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Re: ある日の放課後の魔科学 3話スタート ( No.29 )
日時: 2010/12/12 23:57
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)

「ずずー……」

一旦落ち着いて今は降臨の渓谷の地下にあると言う反乱軍の基地中にいる。
んで、そこでも出されたのはドンブリ草だよコノヤロウ。
この世界の飲み物はドンブリ草しかないのかと問いたいところだが冷たい体にはよく温かさが染みる。

「それで……どうしてこんなところに基地を?」

白雪が若く、騎士の鎧のようなものを着ているエルゲード将軍へと言った。
エルゲード将軍は「はっ!」と敬礼すると少々申し訳無さそうな形でドンブリ草をおいて話し出した。

「現在、王国側に何やら謎の兵器が投入され……防戦一方になってしまい、不利な状況に陥っております」

エルゲート将軍は悔しそうに拳を握りしめる。
しかしだな。謎の兵器というのがどうにも引っかかる。

「その謎の兵器っていうのはどういうものなの?」

瀬菜が俺の疑問を代わりに問いかけてくれた。
エルゲートは白雪の顔を見て、双方頷くと、瀬菜の顔へと向き直り、事を話し出した。
どうやら確認を取ったようだ。多分救世主だから大丈夫とかなんとかやり取りを頷くだけでしたのだろう。

「謎の兵器というのは……何の魔法なのか、高出力の電撃のようなものが機械から出されるのです」

「機械から?」

俺がそう言うと、エルゲート将軍は再度白雪の方へと向く。
きっと俺も瀬菜と同じような感じに……?

「えっと……」

え、どうした白雪。俺も救世主じゃなかったというか! 俺のことをまず救世主と呼んでただろうっ!

「……いいんですか?」

エルゲート将軍は白雪に再度問う。俺のことをさっきから訝しげな目でチラチラと見てくる。
ちょっと待ってくれ。ここまできてその扱いはないだろ。

「……死亡フラグね」

「お前ボソッと不吉なこと言うなよっ!!」

瀬菜が横から恐ろしいことを言ってきたので即座にツッコミを返す。
白雪はその後、頷いてくれて何とかエルゲート将軍の話を聞くことが出来た。
俺だけ一つの事柄を確かめるのにどんだけ前途多難なんだよ……。

「はい。ものすごく巨大な機械です。そこから高出力の電撃のようなものが出されるのです」

改めてエルゲート将軍は質問に答えてくれた。
とはいっても……この世界にそこまでの技術があるのか?
王国の将軍だったエルゲート将軍がその機械のことをまるで初めて見たもののように言う。
この違和感は一体何なのだろうか。

「——何者かの魔術師が一枚噛んでるわね。それもこの世界の魔術師じゃなく、私と同様に魔科学の」

「俺たち以外にも同じような奴がいるのかっ!?」

俺は驚きを隠せない。
こんなバカげたことは俺らぐらいしかいないと思っていたからだ。
俺たちと同じような環境の奴がいる。つまりは俺たちの世界から来た奴が他にいる?

「どこの誰だかは知らないけど、この世界に何らかの影響をもたらせようとしてやったに違いないわ」

瀬菜は飲み終わったドンブリ草の入っていた瓶を机にそっと置いて言った。
ということは……瀬菜のようにバカでかい剣みたいなのを使う恐ろしく強いのが相手にもいる?

「まあでも……それぐらいだったら私は止めれるけどね」

「ほ、本当ですか! 救世主殿!」

エルゲート将軍が瀬菜の言葉に興奮して急に立ち上がる。
ていうかね、エルゲート将軍の背中にチラチラ見えこれまた大きなバスターソードが怖いです。
まあ、騎士だから仕方ないのかもしれないけど。

「本当よ。私も同等の、それかそれ以上の力が使えるから。……それにしても何者かしらね」

「ありがとうございますっ! 助かります!」

なあ、ずっと感じるんだが結構話噛み合ってないときあるよねぇ!?

「そうでしたら、そちらの若者も何か力が……?」

「え、俺?」

いきなり俺のことを言われたので正直焦る。
何を言おうか迷うな……。適当にすごそうな力でも——

「あぁ、こいつはただの私の小間使い」

「誰が小間使いだゴルァアアッ!! なった覚えないんですけどねぇっ!?」

「あぁ、何だ……」

「エルゲート将軍も納得しないでくださいよっ!! そこ信じるとこじゃないですから!」

「でも何も使えないんですよね?」

「うっ……」

チクショウ。反論できねぇ……!
でもここは俺も威厳ってもんが——

「使えないわね」

「やかましいわっ!!」

「そうですか……」

「ガッカリしたような顔をなさらないでくださいっ! 泣きたくなるんでっ!」

こういう時は何で他人とここまでチームワーク抜群何でしょうかね……?
俺だけ理不尽だと思いませんか? 

「そこの小間使い」

「それを言うなああああっ!!」

「冗談よ」

「お前が言うと冗談じゃなく本気に聞こえるんだよっ!」

「じゃあ本気よ」

「もうどうでもいいです……」

俺の精神ズタボロにして楽しいですかと問いたいところだが言ったら言ったでまた何かやられるだろうな。
ため息一つ吐いてとりあえずこれからどうするかを落ち着いて聞くことにする。

「それで? これからどうす——」

ズドォンッ!!
ものすごい地響きと共に揺れる。地下だというのにこの揺れはよほど激しい証拠だ。
そして次にサイレンがいきなり鳴り始めた。

「総員!! 戦闘準備に入れっ!」

「はっ!!」

エルゲート将軍は声を荒立て、中にいた兵士に告げるとすぐさま行動に移した。

「もう時間がありません。相手は今度こそ此処で終わらせるつもりです……。
クソッ! この聖地にはいくらなんでも進行してこないと思っていたが……ここまで外道とは!」

エルゲート将軍はすぐさま指揮体勢に入るためか慌ただしく動きだした。

「皆様もここにいてはもはや危険ですっ! 私と共にきてくだされ!」

エルゲート将軍の言葉に俺と瀬菜、そして白雪は顔を見合わせ頷くとエルゲート将軍の後を追っていった。






「ジース様! 爆発魔法が奴らの基地上に命中いたしました!」

王国の紋章を鎧に付け、兵士の格好をしている男は立派な椅子に腰掛けている風格のある男に言った。
その男は、元大臣こと現在の王であるジース・オルターナーである。

「ネズミ共は出てきたか?」

「まだの様子でございます!」

「よし……第1部隊、第2部隊共に進行させよ」

「はっ!」

兵士は任務を受け、敬礼一つするとその場を立ち去っていった。

「大臣、いいのか?」

ジース現王に話しかけてきたのは貴族の服を着ている青年。
顔はお世辞でもイケメンとはいえないような顔。太っているのが原因なのかもしれないが。
その他に同じような顔をした男が3人いた。その4人こそが王族子息である。

「貴様らも情は捨てよ。憎いのだろう? 妹が、弟が」

その大臣の言葉に一同、子息は皆頷いた。
その目はまるで誰かを憎んでいるかのように。

「その心があればよい。その心があれば……な」

ジースは高らかに笑う。
それはまるで憎しみに満ち溢れているようにも感じ取れるほど風格のある笑い声であった。