コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ある日の放課後の魔科学 キャラデザ完成!参照400突破! ( No.41 )
- 日時: 2010/12/21 17:35
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
「どうだ? 白雪」
「うん。もう随分楽だよ。ありがとう、シヴァンお兄様」
白雪は笑顔でシヴァンに言った。よほどシヴァンのことを大切に思っているのだろう。
何にせよ、本当によかったと俺は思った。
このシヴァンって人が来てなかったら俺たち死んでただろうしな……。
俺は一つ、安堵の意味を込めてため息を吐いた。
そのため息が聞こえたのか、白雪は俺の方へと何故かすごいスピードで見る。
「木葉っ!」
「へ? あ、はい?」
そしていきなり名前を呼ばれる。
それも結構強い口調だったので何事かと思う。
「大丈夫でしたか!? ケガはないですか? 本当に無事ですか!?」
「え、あ、えーと……あ、うん」
「よかった……」
安堵のため息を逆に白雪に吐かれる。
すげぇ心配された言葉の連続だったんですが。どこか頭でも打ちました? 逆に心配です。
「お前——!」
そして何故だか白雪の兄である美少年、シヴァンが俺に鬼の形相で詰め寄ってくる。
俺、何か悪いことしましたっけっ!? あ、あれか! 白雪をお姫様抱っこしたこととかかっ!?
兄としてそれは許せなかったのだろうか……? でもそれぐらい許してくれてもいいような気がする!
俺の葛藤とはまた別に、シヴァンは俺の予想外の言葉を言った。
「——ありがとうなっ! 白雪を守ってくれて!」
「……え?」
全くの予想外。ていうかお礼言うのに鬼の形相で来ないでください! 勘違いすること間違い無しですよ!
頭を下げてシヴァンは俺に言う。
自分的にはそんな大層なことした覚えはないのだが……?
「え、えーと……ちょっと、白雪どうにか言って——白雪?」
白雪に助けを求めようとして声をかけると、白雪は表情が真っ赤でボーッとしており、俺を見つめていた。
熱でもあるのかと半歩近づいてみる。そこでやっと白雪は「はっ!」と言って目が覚めたようだ。
「な、ななななんですかっ!! ……こ、木葉! 近いですっ!」
「え? そんな近くもないと思うんだけ——」
その瞬間、俺の目の前に刃が通り過ぎる。
今の目線は顔を真っ赤にした白雪ではなく、白い綺麗な刃の表面だった。
「貴様ぁっ! 白雪に触れようとするなど何事かっ!」
「さっきまで俺に詫びてましたよねぇっ!?」
頭下げてた人が今は敵対しているような睨みで俺を見てくる。
そんな、この距離で刃が目の前ということはお姫様抱っこ状態を見られてたら完全に死亡フラグだな……。
微妙なところで変に運が良いような気がするな、俺。
「お、お兄様! 剣を下ろし——!」
その瞬間、ものすごい量の火の玉の嵐。
火の玉といっても皆さんはどんな火の玉をご想像で?
玉に火がついてるようなバカげたものじゃないよ? じゃあ何に火がついてるのかって?
岩にだよ。
「ちょ、待てええええっ!!」
凄まじい勢いで俺含む三人は走り出した。向かうはもちろん、柱の方にである。
だが、柱が火の玉に当たらないように出来るだけ迂回しつつ行かなければならない。
「ま、魔法とか弾き飛ばせるんじゃないのかっ!?」
俺が走りながらシヴァンに向けて叫ぶ。
後ろは、見たくない。きっと火の玉の嵐だからだろう。後ろからすごい音と地響きがする。
白雪も、さっきまでお前どうしてたんだと聞きたいぐらいの走りっぷりである。
「無茶を言うなっ! 魔法を破壊するには俺の魔力も必要なんだっ! そんなバカスカと——!!」
目の前に火の玉が襲い掛かる。
上から飛んで来て俺たちの上空を越えてきたということだろう。
「横に転がれっ!」
「うおおおおっ!!」
人生の中でこれほどまでにダイブした日はないだろうな。
雪のおかげか腹の痛みはさほどない。だがしかし爆風によっていとも簡単に飛ばされる。
爆風って、初めて生で受けてみたがこれほどまでに恐ろしいものとはな。
とにかく……何とか傍にいた白雪を守ろうと一緒にダイブしたんだが。
「ふう……大丈夫か、白——雪?」
目の前に移ったのは白雪の真っ赤な顔。
そして、俺はまあ……白雪の顔を? 上から覗き込んでる感じ。
白雪は、まあ……寝転がって? 俺を見上げてる感じ。
他人から見れば……俺が白雪を襲っているかのような構図バンザイ。
「う、うわぁっ! ご、ごめんっ!!」
俺は焦りつつ、なんとか横に飛び退く。
だが、白雪はそのままじっとしたまま、何も言わずにただ赤い顔をして俺を見ていた。
あれ? 白雪さん? 眠たいのだろうか、目が少々とろけているような気がしないでもない。
「おいっ! 二人共大丈夫か!?」
そしてその後すぐにシヴァンが俺たちの元に来る。それで白雪は我に返って速いモーションで起き上がる。
「? どうしたんだ? 白雪」
シヴァンが語りかける。すると、白雪はもっと赤い顔をして——ってこれ以上赤かったら死ぬんじゃ!?
「な、なんでもないですっ!」
と、言うばかり。やっぱり白雪はシヴァンが大好きみたいだな。
俺は何故だか姉や妹の姿が浮かび、苦笑してしまった。
「着いたな……! 急ごう!」
どうやら魔力か何かの種切れか何かのようで火の玉はもう飛んでこなかった。
その隙に俺たちは柱の傍まで辿り着く。
「よし、白雪。召喚詠唱をしてくれ」
「はいっ!」
と、返事良く白雪は言うと例の秘宝とやらを取り出し、呪文のようなものを唱えだした。
「詠唱が終わるまで……ここで白雪を守るぞっ!」
(あぁ……やっと着いたのか……)
「……返事はっ!?」
「え! あ、はいっ!?」
どうやら俺に言っていたようだ。それが俺はやっとここに着いたという達成感に浸りすぎていたな。
何ていうかいきなり言われたような感じだから返事してしまったけども、何を言われたのか全く分からない
「お前、武器はっ!?」
考えてる最中にシヴァンがいきなり質問を投げかけてきた。
「え? 武器? いや……ないけど」
「なら魔法は何を使う!?」
「え? 魔法? いや……ないけど」
「……嘘を言うなぁっ!!」
「嘘じゃないよっ!」
どうやら俺も戦力に入れていたようだった。
予想外だという顔を俺に向けてくる。そんな顔されても。
「よく平凡の住民がここまで……」
何か逆に感心されてるんですけど……。
「まあいいっ! これも試練だっ! いくぞっ! ……えーと」
そういえば名前教えてなかったな、と思う。
「杜坂 木葉だ」
そう言うと、シヴァンは「む……」と言った後剣を前へ構え、目線は戦場に向けたまま言った。
「シヴァンだ。よろしくな、木葉」
横にいる美少年、銀髪王子が——小さく、笑ったような気がした。