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Re: ある日の放課後の魔科学 キャラデザ完成!参照400突破! ( No.42 )
日時: 2010/12/22 23:39
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)

木葉とシヴァンが白雪を背に守ろうとしている最中、戦場は——大変なことになっていた。

「うりゃああああっ!!」

「うわああああっ!!」

叫び声が二つ、爆音の響き続ける戦場に混じる。その二つの叫び声にはある特徴があった。
一つは、渾身の一撃を相手にぶつけたかのような気合の叫び。
もう一つは、悲鳴そのものである。

「全軍今だっ! 突撃いいっ!!」

「「うおおおおおおおおっ!!」」

凄まじい勢いで反乱軍率いるエルゲート将軍は王国軍を攻めていく。
その勢いに王国軍の兵士は根負けしたかのように敵前逃亡を図る。
圧倒的に戦況は反乱軍が有利だった。
逆に今まで何故このような戦況に至らなかったのかが不思議になるぐらいであった。

「じ、ジース様! 戦況は圧倒的に不利に……!」

側近の兵士からの伝言を受け取ったジースは眉間にシワを寄せて忌々しく言う。

「あのネズミ共っ! これ以上好きにさせるかっ! 白雪らを狙っていた魔術師を反乱軍にあてろ!」

「はっ!」

ジースからの伝言を受け取った兵士は素早くその指示を伝えに行く。
白雪やシヴァンらを倒せば反乱軍の猛追は止まり、一気にこちらに流れが変わると思っていた。
だがしかし、エルトールは先ほど発射して少し時間をおかなければ使えない上、反乱軍が何故か指揮を高めその猛追はもう既に普通の兵士たちでは抑えられなくなっていた。

「打てええええっ!!」

掛け声が王国軍内で起きる。
魔方陣がいくつも発生し、そこから溶岩のようなまさに火の玉と呼ぶべきものが排出される。
そしてそれは隕石の如く反乱軍に突如として襲いかかってきた。

「ぐわああああっ!!」

「耐えろっ! 耐えるんだっ!」

エルゲート将軍は作っておいた対魔術のための岩壁に隠れる。
そこで襲い掛かる爆風と共に火の玉の嵐を防ぐ。近くに落ちると自分の視界すらも地面と共に揺れた。

「くっ……! 猛追を止めてきたか……!」

エルゲート将軍は壁に隠れつつ、苦い顔をして舌打ちをする。
ただ一つだけ、反乱軍には弱点があったのだ。
それは、魔術師がいないということだった。
肉弾戦には経験があり、めっぽう強い反乱軍の兵士たちだが、魔術には敵わない。
まともに喰らいさえすれば命の危険性がひどく高いのである。
壁も何度も火の玉を喰らって来ただけあって既に半壊状態である。

(これであのレールガンとやらを打ってきたら……!)

猛追は崩れるどころか、動ける兵士がいるかどうかさえも不安になってくる。
——あのレールガンとやらをどうにかできれば……!
そう思いながら、ふと目線を柱の方に向けた時だった。

「あ、あれは……!」

そこに見えた姿は、遠目からでも分かる銀髪の美少年の姿。
その姿はとても見覚えがあり、同時に懐かしく感じた。

「し、シヴァン様っ!!」

昔から王と共に忠誠を誓った銀髪王子がその丘にいた。
傍に立っている不思議な服を着た少年は恐らく木葉だろう。
そしてまた、レールガンをとめたのはシヴァンだとその一目で感じ取ったのだった。

「よくぞご無事で……!」

エルゲート将軍が感極まって涙を潤もうとする時、すぐ近くで火の玉が落ちる。
その爆風でエルゲート将軍は少々吹き飛ばされる。そしてまた、気付かされる。

「ジースよ。お前は何も守るものがない……! だがな、俺にはあるのだっ!」

エルゲート将軍は大剣を構えて活気をつけようとしている王国軍の軍勢に立ち向かっていく。

「守るべき、我が忠誠を交わした大切なお方がっ!」

いくら傍に火の玉が落ちようとも決してひるまないその勇姿は騎士ではなく——
守るべきものがある男の姿であった。




また一方、瀬菜はというと——

「許せないっ! あの機械〜ッ!!」

と、全速力でレールガンの元へと向かっていた。
それを止めようと必死に兵士は瀬菜に向けて剣を構えるがそんなものなど眼中に入らない。

「どきなさ〜〜いッ!!」

右腕に握り締められている蒼い機械仕掛けの剣を振るうたびに兵士が舞うという何とも滑稽な画であった。

「な、なんて凶暴な女だっ!」

「うるっさいわねっ! 余計なお世話よっ!!」

「ひぃぃっ!!」

瀬菜の気迫に完全に圧されている兵士たちは何とも心細いことか。
たった一人の少女にレールガンのある建物内を荒らされまくっているのだから面目が全く立たない。

瀬菜はそれに比べて全く別のことを考えていた。
それはもちろん、木葉のことだった。
いつまで経っても、心配そうに白雪を見つめる木葉の画が頭から離れない。
——頼む!
あんな真剣な顔をして頼まれたら断りにくいものである。
出来ることならば傍にいて守ってやりたいと思っていたというのに。
そんな乙女の気持ちを知りもしない木葉今頃何をしているのだろうか?

「あぁ……! もう! ムシャクシャする〜〜ッ!!」

そんな乙女の内情で兵士達は半分八つ当たりのように吹き飛ばされるのだからたまったものではない。
とはいっても木葉からしてみれば今日が"初対面"なのである。
それは乙女にとっては何よりも悲しいことであった。

「……ずっと、待ってたのに……!」

自分にじゃなく、他人の、それも女の子にあんな心配そうな顔を向けるなんて考えたくも無い。
だが、実際目の前で見せ付けられた。木葉がどう思ってるにしろ、あの表情には心を打たれたのである。




(俺は何をやってるんだろうなぁ……?)

エルゲート将軍や瀬菜たちが奮闘している中、俺はため息をついていた。
傍では銀髪少年が先ほどまで剣を構えていたはずだというのに既に鞘へと収めていた。

「……暇だ」

「だな」

やる気になっていたシヴァンから暇だと言われたのでそのまま生返事を返すしかない。

「………」

そこで黙るのか。

「……寒」

俺が身を震わせながら一言言う。
何度も言ったと思うが、俺は制服姿だからな? そんな防寒対策的なのとってないからな?
全速力で走って逃げたりしているから汗かいたりして体が火照ってるために気付いてないと思うけど。
今こうやって落ち着いてみると、かなり寒い。

「すまん、俺は鎧とマントぐらいしか……あ、マント貸そうか?」

「いや、いらねぇ……」

制服にどうマントをつけるのだろう。それにつけれたとしてもダサすぎるだろ……。
少し人並みとずれた発想をする銀髪少年の素顔がだんだんと分かってきたような気がしないでもない。
それにしても暇だ、と本気で感じ始めてきた俺はどうせだから白雪のことを聞こうと思ったその時——



「レールガンを……シヴァンらの方に向けろっ!」

ジースの命令が下る。
魔術師たちには戦場を。そしてレールガンはレヴァンの方に放つことにしたのだった。

「後二回ほど受け止めれば魔力も尽きるだろうて!」

ジースは高笑いしながら、命令を下したのであった。




「シヴァンっ! あれ!」

何か咄嗟のことだったので呼びつけにしてしまったが本当に咄嗟だったのである。仕方ないといえるだろう
それは突如として放たれた——レールガンであった。

凄まじい爆音、そして虚空に迸る閃光はまさに一瞬だった。
あの時はよく分からなかったが、今ならばよく確認できる。
剣で、受け止めるのさえ難しいほどの速度を保つ"それ"を。

「——ッ!! はああっ!!」

シヴァンは、受け止めていた。そのまま押し切るようにしてレールガンを消滅させる。
——すごい、とは思ったがそれよりも気になることがあった。

「ぐ……!」

苦しそうにシヴァンは顔を歪ませて剣を雪の地面に刺し、膝をついた。
レールガンは消滅できた。ただ一つ、見た目だけで分かったことがあった。
——シヴァンは、既に限界が来ているということだった。