コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.45 )
- 日時: 2010/12/23 21:32
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
瀬菜は猛進していたが急に立ち止まった。
それは、信じられない光景が映ったからであった。
「な、何してんのよあのバカッ!!」
それは、木葉が剣を構えている姿だった。
その瞬間——閃光が木葉を襲っていく。
「木葉ッ!!」
と、その場で叫んだ時だった。
鈍い音共に頭が揺れる。
「——ッ!!」
「やっと捕まえたぜっ! この小娘!」
瀬菜がいるのは、敵陣の真っ只中。
立ち止まればもちろん、敵が襲ってくる。つまりは敵に殴られたのだった。
頭から血がポタポタと落ちる。だが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
——大丈夫、あいつは生きてる。
そう、心に信じ聞かせて
「はぁぁぁぁっ!!」
「なっ——! ぐわああっ!!」
鈍器で瀬菜の頭を殴った男は軽々と吹き飛ばされる。
瀬菜はそのまま駆け上がっていく。
——あいつは、いつだってそう。ここからでも分かる。決意を込めた目をしていた。
その時は、いつだって——
自分が出来ること。それはレールガンを一刻も早く破壊することだと決意を固め、駆け上がっていく。
何がなんだか分からなかった。
何が起きたのか、何がどうなったのか。
ただ、目の前が真っ白になって——
「お、お前……!」
シヴァンの声が聞こえる。その声はどこか驚いたような言いぶり。
そして、やっと視界が開ける。何が起きたのか、説明してくれるナビゲーターの一人は欲しいものだった。
「えーと……?」
手に持った剣がいつの間にか振り落とされていて——いつの間にか、エルトールは影も形もなくなっていた。
後ろを振り返るが、白雪の姿も容易に確認できる。
「止め……れたんですか?」
何度も顔を縦に振って頷くシヴァン。
どうやら——マジで止めれたようで。
「……えぇ〜〜……?」
どういう展開か全く理解不能であった。
その時、またしてもレールガンが光りだし、閃光を放ってきた。
また、目の前が真っ白になったかと思うと——レールガンは跡形もなく消え去っていた。
ついでに言うと、シヴァンの顔も呆けた感じになっていた。
「え、えぇ〜〜……?」
一度だけではまだしも、二度も止めることが出来たのであった。
それも、シヴァンは二度受けただけで多大なダメージを喰らったと言うのに、俺は全然余裕だった。
「なあ……俺、何者?」
さっき一般高校生とか言っていた自信が無くなってきたことだけは確かであった。
「ど、どういうことだっ!?」
案の定、ジースは動揺が冷めなかった。
目の前の光景が、信じられなさすぎるのだ。
あの"小僧"は一度ならまだしも、二度も止めたのだった。
それも、平然な顔をしている。
「わ、わかりません……! あのような"化け物"が反乱軍側にいたなどっ!」
側近の兵士と共にジースがざわついている時、いつぞやの公爵オッサンが飛び出てくる。
「あ、あれがそうですっ! あれが、救世主と名乗っていたものですっ!」
その言葉にどよめきがさらに強くなる。ジースも目の前で見せ付けられたら信じざるを得なくなってしまった。
「あ、あれが……予言の救世主だというのかっ!」
予言——それは、王国古来に伝わる聖書に書かれたものである。
王国が二つに分かれ、共に戦いを始めた時、救世主たるものが異世界より現れ、場を制す——と。
それはあくまで御伽話などの世界であって、皆信じることはなかった。だが実際に目の前にいるのだ。驚かないはずはなかった。
「く、クソゥッ! 構わん! 戦場にレールガンを戻せっ! もう奴らはよいっ!」
と、標準を別に切り替えるように指令を出した直後だった。
目の前の光景の中に、右腕に巨大な蒼い機械仕掛けの大剣を持ち、美しい容姿を重ねた一人の少女が映る。
どうやらそれは陣外のようで空に浮かんでいるようだった。
「これで……! お終いよっ!!」
その美少女が、何か呟いたと思いきや、右腕の大剣が少し先端部分を変え——銃となる。
「いっけええええっ!!」
その美少女、瀬菜は渾身の思いを込めてレールガンに向けてその銃口を向け——響かせた。
銃口から連続的に轟くような銃声と共に弾が出る。それらはレールガンに当たっては砕けることを繰り返す。
だんだんとレールガンは形を無くしていき、そして凄まじい爆発音と共に消滅していった。
「ば、バカなああああっ!!」
ジースの叫び声が続く。
地面が大いに揺れ、体が冷たい雪の床へと転がる。
そして、それとほぼ同時刻に柱が唸りをあげて飛び出る。
白雪の周りが綺麗な虹色を描き、周り一帯を包んでいく。
「召喚……成功かっ!」
シヴァンの声と共に白雪の体と一緒に何かが入り込んでいく。
それは——レイとライの姿だった。
先ほどからずっと見ていなかったレイとライの姿がこの目でしかと確認できる。
それらは組み合わさり、そして金色の光を戦場全体に覆った。
「こ、これが——聖獣……!」
その金色の光から生み出されたのは、巨大な金色に光る狼のような犬のような巨大なものだった。
「グオオオオオオオオッ!!」
その聖獣と呼ぶにふさわしい金色の獣はおたけびを挙げて俺とシヴァンに近づいていく。
そして、傍まで駆け寄ったかと思うと、姿勢を低くした。
「……乗れってことか?」
「……どうやらそうらしいな」
俺とシヴァンは両方顔を見合わせて頷く。
そうして聖獣の背中へと乗り込んだ。
「グオオオオオオオオッ!!」
すると、ものすごいスピードで雪の地面を駆けていく。
周りの美しい雪景色も全てこの聖獣のために彩られたものさえ見えた。
戦場の、誰もがその聖獣の姿に目を奪われていた。
敵味方、争うという気持ちはもう無かった。
「まだだ……! まだ終わっておらん!」
ジースが駆け寄った先には、ご子息3人の姿があった。
ご子息3人はいつの間にか手に手錠がはめられている。どうやら人質扱いとしていたようだった。
怯えた目でご子息3人はジースを見ている。
「まだ! 人質が——!」
「あんた、往生際悪いのよ」
後ろから聞こえてきたよく聞こえる高い声。
ジースは一目散に後ろを振り返るとそこにいたのはレールガンを破壊した美少女の姿。
「ま、まだだ! ワシは負けておらん! まだ——!」
その時、その場を駆け込んでくる巨大なものが見えた。
それは、金色に光る聖獣だった。
「速ッ!! てかいきなり止まんなああっ!!」
「え——きゃああああっ!!」
木葉がものすごい勢いで美少女へ、瀬菜へと飛んできたが——
「この変態〜〜ッ!!」
「ぶへええええっ!!」
俺はそのバカでかい剣の平らな部分で殴り飛ばされるのでした。
だがここで気を失っている場合ではない。俺はゆっくりと立ち上がる。
一つ、言わなければならないことがあるからだ。この目の前にいる往生際の悪いオッサンに。
「あのさぁ……。俺、もうガマンできないから言わせて貰うよ」
出来るだけ俺は優しい声でそのオッサン、ジースへと話しかける。
「ひ、ひぃ……!」
ジースは完全に戦意喪失。今にも命乞いを始めそうな感じを醸し出していたが、そんなことは知らん。
「とんだアルバイト原因を作りだしやがって! おかげでおニューの制服ズタボロだわ! この野郎ぉぉぉぉッ!!」
「え——! ギャアアアアアアアア!!」
瀬菜によって頬が二倍ほど膨らんだ俺は、とりあえずオッサンの顔面を思い切りよく一発、殴ってやった。
その後、不思議なことに王国軍、反乱軍共にすんなり和解して戦争は幕を閉じたのだった。