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Re: ある日の放課後の魔科学 第5話スタート! ( No.50 )
日時: 2010/12/25 22:06
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: S19LK/VD)

「うがっ!」

眩しい太陽の光で目が覚めるのではなく、毎度のこと足がつって目が覚める。
これ、目覚まし時計いらないから便利ともいえるけど毎朝恐怖の連鎖ともいえる。
眩しい太陽の光なんて外にある無数のアパートたちに囲まれて当たらない。それがまた気持ちを憂鬱にさせた。
憂鬱といえば思い出せる顔は逢坂 瀬菜だ。
昨日だけでどれほど俺を蹴ったり殴ったりしたことか。初対面でそこまでやらなくてもよかろうに。

「あー……あのまま寝てしまったんだな……」

見渡す限りただ一言、汚い。
脱いだ制服やらが床に散らばり、洗濯物も部屋の隅に山積み。カバンなども散らかっている始末。
一人暮らしだとどうしてこうも生活が体たらくになってしまうのだろうか?

「風呂入るのも忘れてるよ……」

このまま学校に行くとちとまずいと思い、時間を確かめる。
が、時間は俺の想定範囲外の時刻を示していた。

「やべええええッ!!」

いつもならばもう出ている時刻を時計の針たちは指していたのだった。



「はぁ……はぁ……なんとか間に合ったか」

こういう時に、30分という通学路が仇となる。
もっと近いところにすればよかったと思っても、もう遅い。

「早々と俺の生活リズムは崩れたわけだ……」

ぼやきながら、俺は席を着く。
風呂にも入っておらず、眠気もまだ覚めていない。おまけに制服と髪も乱れている。
その姿を遠目で見て見ぬフリをするのは必然なのだろう。おかげで誰も話しかけてこない。
まあ、入学した当初の方なのでそれも仕方ないことなのだが。最初からイメージ崩れたのは明らかだろうが。

「あ、木葉君じゃないですか」

が、一人例外がいたようだった。

「い、伊集院……」

「何ですか? その意外そうな顔は」

伊集院は可愛らしく頭を傾げて言う。
純粋なキャラなようでちょい小悪魔なところがあるみたいだが、仕草はかなり可愛いな。

「い、いや……よく話しかけれたなぁ、と」

俺はそう呟きながら周りをちらちらと伺ってみる。
案の定、俺の方を向いて何か話しているように見えた——が、様子がおかしいように見える。
よくよく観察してみると、俺の方を向いているのではなく、伊集院の方を向いている奴が多かった。
それも男子だけではなく、女子もだというので驚きだ。

「あんな可愛い子、このクラスにいたか?」

「いや……ノーチェックだった……それに僕っ娘かよっ! 俺としたことがっ!」

「え、てか話しかけてるあの男は何? あの子の何?」

「あの男邪魔なんだけど……」

とかぶつぶつと聞こえ始めてきた。
俺はお邪魔か、悪うこざんしたねっ!

「どうかした? そんな怖い顔して」

伊集院が俺の顔を覗き込むような感じで見てくる。

「い、いやっ! なんでもないって!」

そんなことしたら何か勘違いされるだろうがっ! とか思ってしまう。
さすがに容姿に違いありすぎるので恋人同士と思われることはないだろうが。
一つため息を吐いて落ち着きを取り戻す。

「で? 何の用なんだ?」

俺が言うと「あぁ、そうだった」と、いかにも今思い出したかのようなリアクションを取りつつ口を開く。

「放課後、もう一度あの教室に来てくれるかな?」

「あの教室?」

俺が呆けた顔をしていたりでもしたのだろうか、伊集院は笑いながら続ける。

「うん。君が異世界に行くきっかけになった教室のことだよ」

まあ……その教室のことだろうとは思っていたけどな。
アルバイトの料金でも払ってくれるのだろうか?

「……分かったよ。じゃあ、今日の放課後な?」

「うん、よろしくね」

伊集院は告げることだけ告げると、さっさと自分の席に戻っていった。
……ていうか、伊集院って俺と同じクラスだったのか。全く気付かなかった……。




延々と授業を受け、ようやく放課後のチャイムが校内を鳴り響く。
一斉に皆席立ち、部活に行く者や帰り支度などをする人で賑わっている。
伊集院の姿を探そうと辺りを見回すが、既に伊集院は教室から去っているようだった。

「いつの間に……」

俺はカバンに教科書などを詰め込み、早々と教室を出て行くことにした。

移動中、様々な部活動の声があがったりして放課後の気分になる。
だがそれも旧校舎に行くにつれて薄れていく。周りが静かになる感じは妙に新鮮な気がした。

(俺の感覚では、学校は何か久しぶりな感じなんだよな……)

異世界に行っていた時間が少々多く、時差ボケみたいなことになっているようだった。
ボケた頭を一心不乱に動かしてかの面接会場とやらの教室の前へとようやく辿り着く。

「……いざ入るとなると、緊張するなぁ……」

何故だか緊張してしまう意味の分からない俺の心情を無理矢理に無視して教室をノックして入った。

「失礼しま——」

パンパンッ!
クラッカーのような音、というより本物のクラッカーが教室に鳴り響き、中の紙が俺の頭上に降りかかる。

「いらっしゃい〜!」

見ると、昨日会ったばかりの……名前は確か、駒貝 白犬だったか? 変な名前だからだろうが印象はある。
ていうかこれ、どういう反応を示せばいいんだ?

「お前はまたかああああッ!!」

と、思った途端に視界から瞬間的に白犬の姿が消え去った。
よくよく姿を追いかけてみれば壁に頭から埋もれているような状況。
さっきまで白犬がいた場所に手をパンパンと叩いているツインテ美少女こそが犯人だろう。

「ふう……まったく、油断も隙もありゃしない」

その後、白犬は壁から引き抜かれる。それに呼応するかのように教室に伊集院と瀬菜も入ってくる。

「……なんだよ、その嫌そうな顔は」

「……別に?」

明らかに不機嫌だな、瀬菜よ。
不機嫌な理由が全く分からないというのに俺を睨むのはやめて欲しい。
俺が原因とかいうわけでもないというのにな。
何故か伊集院がクスクスと笑っていたのはこのさい気にしないでおこう。

「さて……集まってもらったのは他でもないんだよ〜」

笑顔+そのなよなよした口調で威厳なんてものは跡形もない白犬の喋り方。

「木葉君の能力はやっぱり"アレ"だったよ」

白犬の言葉に俺以外の一同はやっぱりか、というような顔をして俺の方を向く。

「えーと……何がでしょうか?」

俺がわけも分からないので聞いてみる。
すると、白犬は教室のドアを指さして続ける。

「うん。それはね、もうすぐ"来るよ"」

「来る?」

その瞬間、ガラガラと教室の扉がゆっくりと開いた。
教室内の全員の視線がその扉を凝視する。

その、扉から出てきたのは——

「あの……入部希望なんですけど……」

白い髪、新鮮に見える制服、小さい幼女のような背、何よりも可愛らしい大きな目。
それは見たことのある人物だった。


「白……雪ッ!?」


俺は大きな声でその少女の名を呼んでしまっていた。


「はい? 何ですか?」


その少女は、無邪気に首を傾げてそう言った。