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Re: ある日の放課後の魔科学 第5話完! ( No.56 )
日時: 2011/01/03 23:30
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: zWHuaqmK)

「ん……」

今日は久々にグッドモーニングだ。
それは足がつって起きたのではなく、普通に起きれたからである。
これはもうグッドと呼ばずしてなんと呼ぶか。
時計を見るとまだ針は余裕の時刻を差していた。

「さってと……用意しない……と?」

ぷに。
何かがが俺の腕の方に当たったな。それも柔らかい……。

「すー……すー……」

何故だか寝息も聞こえる。うーん……?
ゆっくりと俺はその寝息の立つ音の方へと目を向けてみるとそこにいたのは。
白き可愛らしい幼女ともいえる美少女、白雪の姿。そして腕についてあるのは白雪の赤く綺麗な頬っぺた。

「……あのー? 白雪、さん?」

気持ちよさそうに俺の腕に抱きつきながら寝ている白雪を見ると心安らぐってものだが……。
いや、ちょっと待てええええッ!! これはいかんだろっ! なんていうか放送禁止だろっ!

「ちょ、どうして白雪さんと俺は大分離れて寝ていたというのにここまで来てらして!?」

ちゃんと区切りをつけてまで俺と白雪の接触を断固して拒んだのは瀬菜である。

「いいっ!? 変なこと、白雪にするんじゃないわよっ!? 朝見にくるからね!? してた場合は……!」

とか、死亡フラグ立ちまくりなこと言われてたような……。
ピンポーン。
そんなとき、俺の思考回路をすべて遮断させるかのように鳴り響くインターホン。

(ひ、ひぇぇ〜〜〜〜ッ!!)

「ちょっと、来たわよっ! あけなさいよっ!」

「ま、まだこんな時間帯なのに来ますかねぇっ!?」

俺の焦りの声がどうやらインターホンに届いたらしく「何? ……ちょっと! あけろっ!!」と、ドアを叩く始末。
完全に勘違いか何かされてませんか? 俺。

「お、おいっ! 白雪! まずいって! これ見られたらまずいって! 起きろぉぉっ!!」

「ん、ん〜……木葉、うるさいよー」

可愛らしく唸りながら目を瞑ったままの状態で俺に言う白雪。
いや、そんな萌えはいらねぇんだよっ! 今はほら! ドア前で魔王が……!

「これ見られたらまずいって……! それどういうことよっ! 覚悟しなさい! 木葉ぁっ!!」

「か、勘違いですってっ!! 俺は何もしてねぇよっ!」

「してないなら早くあけなさいよっ!!」

朝っぱらだというのに近所迷惑という四字を知らんのかあいつはっ!

「白雪っ! 頼むから起きてくれっ! 何でもするからっ!」

「……何でも?」

いや、まて。どうしてそこに食いつくよ?
白雪は俺の言葉を聞いたとなるとすぐさま飛び起きた。

「約束ですからね?」

「え? いや、何をだ?」

白雪は小悪魔じみた顔で笑うとパタパタと可愛らしく騒がしいドアまで駆け寄るとカギを開けた。
そして即座にドアが開く。俺のいる位置からでも見えたのは魔王の怒りの片鱗である顔だった。
真っ赤になって魔王たる風格を醸し出している。

「木葉ぁぁぁぁっ!! ……って、あれ? 白雪!? 大丈夫?」

何が大丈夫だ。俺の心中は大丈夫ではないんだがな。

「何もされなかったですよー」

「人聞きの悪いことを……」

俺が一人ぶつぶつと呟いていたら瀬菜が睨みを利かせて俺を見てくる。怖すぎる……。

「まあいいわ……お腹もすいたし、ご飯でも作りましょう」

俺は瀬菜の言葉に驚く。

「ちょ、待った! お前もしかして飯食ってきてないのか?」

靴を脱いで家の中に入ってくる瀬菜を見ながら俺は言った。
無愛想な顔つきで瀬菜は口を開く。

「そうよ。文句あんの?」

「いや、文句あるとかじゃなくてだな……」

俺は食費が、と言おうとしたところで声を押しとどめる。
とつてもなくかっこ悪い気がするし、同級生にそんなことを言っても無駄だと思ったからでもある。

「材料ならあるから」

と、後ろ手に膨らんだスーパー袋を持ち上げて見せてきた。

「わざわざ買ってきたのか?」

「は? んなわけないでしょ? 昨日あまり作らなかったからその材料の残りよ」

瀬菜は顔を少々紅潮させながら言いつつ、狭すぎるキッチンに袋を置いた。
いや、どう見ても朝市で買ってきたとしかいえないような新鮮味のある食材につい苦笑してしまう。

「な、何よ!」

「いや、なんでもない。俺も手伝うよ」

俺は立ち上がって瀬菜の手伝いをしようと近づいていくと、右手の平を見せ付けられる。

「あんたは来なくていい。私だけで料理する」

「え? いや、二人の方が早いしきっと美味しいものが……」

「いいからっ! あんたと白雪は座ってなさいっ!」

何故だか切れる瀬菜。血糖値高いんじゃないのか? そんなこと言ったらただじゃすまないから思うこともやめるけども。

そうして俺と白雪は言われたとおりに座って待つことにした。
その間、何もやることがないので洗濯物をとりあえず干したりしようと立ち上がる。

「何をするんですか? 木葉」

この口調のおかしいのは白雪特有だな。だけどまたこれがいいと思うんだけどな……いや、待て、何か俺おかしいな、最近。

「洗濯物を干すんだよ。手伝ってくれるのか?」

「はいっ!」

即答の笑顔で頷いてくれる白雪。結構洗濯物を干したりするのは腰にきて面倒なんだよな……。
横から少し不器用でも丁寧に洗濯を渡してくれる白雪の存在は腰に優しかった。

「熱っ!」

その最中、後ろのキッチンで瀬菜が思い切りよく火傷まがいなことをしていた。

「大丈夫か?」

俺が近寄ろうとするとまた右手のひらを見せられる。どうやらこれ、近づくなってことみたいだ。
しかし、瀬菜の表情はいつになく涙目でとても女の子らしいといったらあれだが、か弱くみえた。
本当に痛いのだろう。火傷した部分を必死で隠そうと手で覆っている。

「見せてみろよ」

俺は瀬菜の右手のひらを左手で遮ると近づく。どうやら瀬菜も堪忍したようで何も抵抗はしてこなかった。

「うわ……本当、痛そうだな。冷やさないと」

俺はせっせと氷を用意して白雪にビニールの袋を取ってもらうように指示し、氷を袋の中に入れてそれを火傷の上に乗せる。

「〜〜〜〜ッ!!」

どうやら相当痛いようで足をジタバタさせている。
こんな一面もあるんだなぁとか思いつつも相手は女の子ということもあり、俺は出来るだけ丁寧に処置を行った。

「よし、このまま押さえてろよ?」

俺がそう言っても瀬菜はケガを見つめるばかりで頷きもしない。
その時だった。

ジュ〜〜っと焦げ臭い匂いと共に焼ける音が聞こえる。

「木葉っ! ご飯がっ!」

白雪がキッチンの方を指さす。

「やべ……っ! 火、消すの忘れてた!」

俺は急いでキッチンへ駆け寄り、火を消した。

「あー……黒コゲだな……」

フライパンにあるものはもはや食えるものではなかった。

「ふう……しょうがねぇな……」

俺は余った食材で適当にメニューを決める。
その食材たちは俺の生活費では到底買えないような代物ばかり。腕によりをかけて作ろうと準備に取り掛かった。




「ほらよ」

俺は次々とテーブルの上に料理を置いていく。少し張り切りすぎたとも思ったが久々に腕が鳴ったから仕方ないこともあるだろう。

「朝ご飯なのにこんな食べれないわよ……」

まだ少し涙目の瀬菜がボソリと呟く。
かなりの量の料理が所狭しと小さなテーブルにある。とても朝飯という量ではない。
時間はさほどかかっていないのは俺の時間短縮術のたわものだろうな。

「まあ、食べてくれよ。結構頑張ったからさ」

俺はそういいながら瀬菜に勧める。白雪は言わなくてもバクバクと美味しそうに食べていた。だが上品である。

「美味しいですー! とっても美味しいですー! 瀬菜様! 食べないと損だと思いますですー!」

白雪ってこんな喋るような奴だったかと思いながら瀬菜の顔を見る。
そして瀬菜だけ様付けでなんで俺は呼びつけ?

「ん……じゃあ少しだけ」

すると瀬菜は近くにあったスープを一口飲んだ。
鬱な表情はだんだんと和らいでいき、それは驚愕の表情となった。

「美味しい……!」

「だろ?」

俺は笑顔で返してみる。
こういう時に母と姉の一人でも生きていけるようにということでの料理特訓は使えるもんだなぁ……。

「あ、でも結構やばいな……! 早く食べろっ! 食べろっ! ……てか俺何の用意もしてねぇよっ!」

俺は慌ただしく動き始めた。何の用意もしてなく、学校があることすらも料理中は忘れていた。

「何言ってるの? 今日は休日じゃない」

「……え?」

瀬菜の言葉に首を傾げる。
そういえば今日は何か記念日がどうたらこうたらで……。

「創立記念日ね」

「あぁ、そうだったな……」

力がだんだんと抜けていってへたりこんでしまった。

「え、じゃあお前は何しにきたんだ?」

瀬菜を見ながら言う。すると呆れた顔をされて即答された。

「部活動は休みの日にもあるものよ。ただし午後からだけどね」

「あぁ……なるほど」

俺は妙に納得点が不自然だと思いつつも納得しとくことにした。

「でも用意しなさいね、二人とも」

「え?」「へ?」

俺と白雪の呆けた声が同時に出る。
瀬菜は人差し指をさして先ほどの涙顔とは打って変わって自信満々に言った。

「買い物に行くのよ」

「買い物ぉ?」

何か色々と面倒なことに巻き込まれそうな気がとんでもないほど俺の五感に当たったんだが気のせいだろうか?

——そして、俺の見てないところで瀬菜はさりげに笑顔を見せた気がしたことも


これも、気のせいだろうか?