コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.60 )
- 日時: 2011/03/16 23:52
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: Q2XZsHfr)
買い物という名の名目の元に瀬菜によって連れられて来た場所は——世に言うデパートという代物だった。
いや、それよりだな。この近辺にデパートあるとか聞いてねぇぞ。俺の毎回少し遠めのスーパーへ買い物に行く苦労は何だったんだ。
それならもうちょっと頑張って品揃えの良いデパートに行くほうが色々と便利だったかもしれない。
「さ、着いたわよ」
デパートを美少女、美幼女と俺の微妙な三人が歩き回った結果、いきついた場所とは——服売り場だった。
えっと……ここで何するんだ?
俺だけが疑問を浮かべている中、瀬菜と白雪はまさに今時の女の子だという感じで可愛い服を手当たり次第に取っていく。
といっても、取るのは毎度のこと瀬菜が取っており、白雪はそれを見ている様子はまさに小さい子供のようで滑稽だった。
そういえば白雪の服とか、全然考えてなかったなー……。俺のを着せる、といっても大きすぎてちょっと外へは出れないだろう。
それに何より年頃だから俺の服とかだと……「気持ち悪ッ!」(木葉の勝手なイメージ)とか言うのかもしれない。
そんなこんなでずっと制服姿、というのも何とも可哀想な話である。
「何その汗ばみながらの笑顔。気持ち悪ッ……!」
瀬菜に言われました。はい。それも汗ばみながらの笑顔って、俺そんなひどい顔してたのかよ。
ちょっとその状態で服売り場においてある鏡を——気持ち悪ッ!
……って何か自分で言ったら気持ち悪いのを認めてしまっているみたいでぇええっ!
「木葉、どうかしましたか?」
白雪が不思議そうに一人頭を抱えてもがいている俺の姿を見ている。
あぁ、どうかそんな無垢な目で見ないで——瀬菜は汚物を見るような目で見ないでください。お願いします。
「いや、なんでもないんだ。気にせず服を選んでくれ」
俺は白雪を服の方へと促してから聞こえない程度のため息を吐く。全く、最近ため息が日常茶飯事になってきたな。
にしても……暇すぎる。何かやることを探しにデパート内を歩き回るかな……っと、ちょっと待てよ?
「なあ、瀬菜」
俺は白雪同様に楽しそうに服を見ている瀬菜に声をかける。返事もせずに俺の顔をふと見る瀬菜。まあ、聞く体制と見ていいだろう。
「服の金はどうすんだ?」
いきなりデパートに連れて来られてだな、ちょっと俺もボケていたことは認める。だがもう目が覚めた。
服の金なんて、俺そんなに大金持ってないんですけども。
「私が出すけど?」
おっと、一瞬息詰まりそうになったわ。
「まてまてっ! それはダメだっ!」
俺の言葉に「むっ」と、呟いた後に腰元に手をやって瀬菜が俺を睨んできた。
「どうしてよ」
「どうしても何もねぇよ。お前に奢らせる理由も何もないからだ」
俺のこの言葉にさらに機嫌を悪くしたらしい。先ほどの笑顔はどこへやら。
そんな険悪な表情をする俺たち——といっても瀬菜だけなのだが、白雪は俺と瀬菜の顔を行ったり来たりと見ている。
その顔は戸惑い一色。だろうな。でも、これだけはひけねぇよ。これは母・姉コンビから教えてもらったことでもあるんだから。
「じゃあアンタは雪ちゃんに制服の姿のままいろっていうの?」
いつの間に『雪ちゃん』なんてあだ名がついているのか疑問だが、今はおいとこうじゃないか。
「そういうわけじゃない。ただお前に奢らせるってのは男という生き物的にはだなぁ……」
俺が言い分を言おうとするが、そんなことなど瀬菜は何の関係もないようだった。肩が震えているのがかなり気になる。
これは、まさに憤怒という名の俺死亡フラグですか。
「そんなしょうもないことなんてどうでもいいわよっ! それにこのお金はアンタが前に異世界で働いた分なのよ」
「俺が働いた分?」
俺の素っ頓狂な声に瀬菜は頷く。
確かに、だな。アルバイトとかなんとか言って何の報酬もないじゃないかと言っていたわけなんだが……。
まさかこんな形でもらえるとは思わなかったぞ。おい。
「俺の取り分とかって……?」
「無いに決まってるでしょ」
「ですよねー……」
俺結構命張ったつもりなんだけどなー。白雪の服のために飛ばされていくー……。
——でも、まあ仕方ない。俺自身が白雪を住ませるといっているのだから。
そのためには必要なものぐらいはしてやりたい。それに守る約束もエルゲート将軍としたしな。
そう思うとエルゲート将軍の顔が薄っすらと思い出される。あぁ、懐かしいな。
こうして、俺がじかに白犬先輩からもらう予定(?)だったアルバイト代金は見事に可愛らしい白雪の服の化したのだ。
まあ、可愛いから許すことにしよう。うん。
「そろそろ昼だし、飯でも食べないか?」
満足そうな顔をして微笑む二人に提案を持ち出してみる。
大きな買い物袋の中には服の他には白雪の生活用品多々大勢出揃っていた。これ、お金に変換すればいくらなんだろうか。
「そうねぇ……あ、ちなみにアンタのアルバイト代は全部白雪に使っちゃったから。昼飯ぐらい、アンタが奢りなさいよ」
「え、俺が?」
すみません。つい俺のアルバイト料金に期待してましたっ!
俺が自分を指差して言うと瀬菜は不気味にも顔を笑顔にさせて言った。
「女に奢らせると男の何たらどうたら言ってなかったけ?」
「……はい。奢らせてください……」
とっても泣きたい気分っていうのはこういう時のことをいうんだろうな。
普通にファーストフードとかで済ませようとしたら瀬菜に思い切り激怒され、女の子がいたらもっとオシャレなお店だとか。
——それより俺の懐を心配して欲しいんですけどもっ!?
結局、デパートの中にある結構高そうな小洒落た店の中に入ることとなった。全く、見た目どおり値段が高い。
これならいきつけの定食屋のカツ丼の方がよっぽど俺の腹には健康的だと思うけどねっ!
瀬菜はパスタ、白雪も同じようにパスタ、俺はコーヒーで胃をなんとか抑えることにした。
何でかって? 何度も野暮なことを言わせるものじゃないよ。全く。
瀬菜がトイレだとかなんとかいって席を離れ、少し経つと俺は白雪の様子が暗いことに気付いた。
「ん? どうしたんだ? 白雪」
俺が声をかけてもその表情は変わらないどころか、少々戸惑いを隠しきれないような雰囲気を放っていた。
「あの……私のせいで、その……」
白雪の目線をゆっくりと追ってみるとそれは俺の目の前に置かれたコーヒーを差していた。
白雪の今食べているパスタだって瀬菜が強引にも頼んだものである。いらない、といった白雪の言葉を怖れたのだろうかね?
「白雪のせいじゃないよ」
俺は少々笑顔を見せてからため息を吐く。ただしこのため息はいつもの疲れやだるさなどのマイナスを表すものではない。
——安堵、というか。そんなものを何故か俺はそのため息で表していた。
「俺は本当、元からあまり食べない派だしな。それに朝、俺が作りすぎた料理だって冷蔵庫にまだ大半残ってるし……」
「でも……」
白雪は俺に迷惑をかけていると思っているのだろうな。通りで最初から今までちょっと不安気な顔をしていたわけか。
「じゃあ、プレゼントだ。一緒に生活するために必要なプレゼント。そう思ってくれないか?」
「プレゼント、ですか?」
白雪は意表を突かれたような表情をする。プレゼントなんてものをもらったことがないのだろうか。
「あぁ、贈り物だよ。取っておいてくれ。でないと俺が恥ずかしいというかな……」
俺はそっと白雪の頭の上へと手を伸ばす。頭を撫でてやろうとしたのだ。
だが、その瞬間俺の手を阻むものがあった。
「せ、瀬菜……? どうしたんだ? そんな鬼のような面して……」
まるで夜叉の如く、鬼の如くに顔を強張らせていた瀬菜の腕が俺の腕をこれでもかと握り締めていた。
てか握力やばいって! 痛い痛い痛い痛いッ!!
「この……ド変態がぁぁぁぁっ!!」
「理不尽すぎるわああああっ!! ——ぶはぁっ!!」
見事に俺は殴り飛ばされて地面へとダイブするのであった。
殴られた頬を擦りながら俺達は学校へと向かっていった。
もちろん、部活動たる放課後部の招集があるからだ。
「ちゃんと頬の筋肉を鍛えてないからよ」
「頬の筋肉鍛えるって何だよっ!」
「自分で自身をビンタしてれば鍛えられるんじゃない?」
「それ、ただの変態だよなぁっ!?」
白雪は俺と瀬菜のやり取りを「まぁまぁ……」と少し宥めながら苦笑していた。
ったく。無茶なことを言いやがるし、何なんだ俺だけにあの理不尽さは。
ただよかったことと言えば……デパートにいたときにまあ、外見は美少女とか美幼女と呼ばれるだけあるからな(木葉主観)
そのおかげで結構周りの男共に「どうだっ!」という感じに優越は得れたかな。うん。
……なんか俺、悲しいな。
「失礼しまーす」
一応一言挨拶を言ってから放課後部の部室へ入る。
「ようこそー! ……って、あれ? 三人共、どうして両耳塞いでるの?」
白犬先輩が笑顔で出迎えたのに対して俺達三人は耳を塞いでいた。
理由は簡単。またいきなりクラッカーを鳴らされると予想したためである。
ま、といっても毎回そんなクラッカー鳴らすほど暇じゃ——
「もー、両耳塞がれてたらクラッカー鳴らせないじゃないか」
(えーッ! この人……! えーッ!?)
俺達三人の顔はただいま青白くなっていることだろうな。
「いい加減にしろぉっ!!」
いつもの如く朔夜さんがどこからともなく現れて白犬先輩を蹴り飛ばす。
そしていつもの感じで飛ばされる白犬先輩は毎度のこと愉快そのものだ。
「それで……何するんです?」
不意に聞いてみた。活動内容というものは全く聞いていなかったためだ。
得意気に「ふふんっ!」と朔夜さんが笑い、ウインクしてくる。うわ、めちゃくちゃ可愛いな、それ。
「……鼻の下伸びてるわよ」
「おっと」
瀬菜に指摘されて鼻の下のケミストリー(化学現象)を咄嗟に直した。危ない危ない……。
「実はねー……入部希望者、まだいたのよー!」
「「へぇ……」」
「……その興味なさそうな反応は何っ!?」
何といわれても……普通一般から見ては当たり前のことだろうに。入部希望者なんて。
「異世界から来た子よ?」
「「へぇ……え?」」
なんとなくその感じはしてたんだが……まさかのまさかだが、入部する人となると……エルゲート将軍? なわけないな……。
「今、雪乃ちゃんが連れてきてくれてるからっ! しばし待たれよっ!」
朔夜さんはそう言い放った後にすたすたと自分専用の席である机の上に副部長と大きく書かれた三角錐の置いてあるところに座る。
そして、動きが止まる。……。
「いや、何かしないんですかっ!?」
「何かって、何を?」
いや、知らんよ。俺入部したてなのに何をって逆に言いたい。
「大体、活動内容って何なんですか?」
俺の次の問いには白犬先輩がようやく失神状態から意識を取り戻した後、いつもどおりのスマイルで答えてくれた。
「んーとね。異世界を救うことだよー」
「……それだけですか?」
「主にねー」
「………」
ダメだ。何か色々と。
瀬菜や白雪の方を向いても俺と同じような感覚で少し頭を抱えているようにも見えた。
瀬菜の口がゆっくりと動き、小さく「この人たちは……」と、小さく呟いていることを目撃する。
これは毎度毎度のことなのか。この先どれだけ苦労することだろうか。
朔夜さんがもうちょいマシな方かた思ってたら正論言ったりする割には考えが白犬先輩同様だった。
「あ、そういえば一つ活動内容忘れてたねー」
白犬先輩が不意に言った。
「えっとねー。依頼を受けて、その依頼をこなしたりするんだよー」
「「何でそんな活動目標忘れてるんですかっ!?」」
俺と瀬菜の言葉が綺麗に重なる。
いやぁ、これはツッコミ入れておきたいところだよ。うん。凄すぎるボケは見逃すことは出来ないからな。
「あ」
朔夜さんの一言共に副部長の机の中からヒラリと一枚の紙が地面へと落ちる。
書いてあることをよく見ると——依頼届と書いてあった。
ちゃんと名前や内容も詳しく書いてあり、日付は——三日前だった。
「ごく最近のことじゃねぇかぁぁぁぁっ!」
敬語も忘れて俺が叫びをあげたことは無礼講ということで宜しくお願いします。
そして、その後に気まずくなった朔夜さんが
「てへ☆」
と、可愛らしくウインクして言ったことで俺の鼻の下が再びケミストリー(科学現象な)を起こしたのは言うまでもない。