コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.7 )
日時: 2010/12/17 17:57
名前: 遮犬 (ID: XvkJzdpR)

今日はのんびりとまだ顔の見慣れていないクラスメイトと授業を受け、そして帰宅。
真っ直ぐ家に帰ると、すぐさまアルバイトのチラシを確認。そしていいアルバイトを見つける。
後はそのままアルバイト先を決定できれば俺の今日の予定はほぼ完了するだろう。
アルバイトを見つける理由は、もちろんこの一人暮らし学校生活で仕送り金では自由なことが出来ない。
それに食べ物もやたらと質素。これはもはや親から働けといわれているようなものだろうな。
つまるところ、俺はいいアルバイトを探していた。でもそれは自宅で、それも普通の店のチラシで、だ。

「あの……帰っていいか?」

一人、俺はとある教室で椅子に座らせられている。
目の前には美少女二人。仏教面したのと可愛らしい顔をしたのが。

俺は今更ながらに後悔している。どうしてあんなものを信じてしまったのか。
そもそも、学校でアルバイトの紙とか見つけることすらおかしい。
俺は、ある一枚の掲示板に貼ってあったチラシを見つけたことが事の原因であった。

"素晴らしきアルバイトを探していませんか?"

何でこんなものに騙されたのだろうと、今更ながらにため息物だ。
そしてそのアルバイト面接の会場たる今はあまり人気のない旧校舎の無人教室へと辿り着いたわけで……


俺はその面接会場たる教室を一応ノックして入る。
書いてある内容は全く、というより何も書いていなかったので不気味だったが、ある一つの項目が目に付く
それは、時給や給料等は個人の頑張りによりいくらでもあがるとやらが。
それがなにやら金欠の一人暮らし高校生には魅力的で、とても素晴らしいものに見えた。

(とっても素晴らしいぜ……!)その時の俺はものすごくバカで単純で金の亡者だったと認識しざるを得ない

中は普通に机が一つ。椅子が両側に一つずつあり、何とか顔合わせできるかなというぐらい。
他は黒板と少し本の入った本棚ぐらいだった。

「なんていうか……本当にここで面接するのか?」

半信半疑でとりあえず中に入る。だが、見た通り誰もいなかった。
時刻は放課後により、部活動が始まる時刻。
外は結構騒がしくなる頃なのだが旧校舎の方で部活動をするのは文化系の方であるために騒がしくない。
むしろ静まりすぎて逆に不気味に感じる。


そして無為にも時間はただただ流れ…10分、20分、30分……

「もう帰ろうっ! うん。見なかったことにしようじゃないかっ!」

何とも無駄な時間を過ごしたと言いたげに思い切りよく椅子を引き、立ち上がる。
その時だった。

「待った」

どこからか声がした。

「君、アルバイト募集の紙を見て来た子だよね?」

辺りを見回す。するとその声の主はいた。
外見は声に似てとても穏やかそうで、なおかつ可愛らしい雰囲気を漂わせる。
美人、ともいえるが美少女、ともいえる。

つまりは女性の方が長いセーターの裾を手で可愛らしく持ちながら教室の出口から話しかけていたのだ。

「えっと……あ、はい」

何ともいえない返事を返してしまった。
というか、30分〜40分ほど待った後のこの状況。フリーズしてしまうのも仕方ないといわせてくれ。

「あ、やっぱりそうですか。お待ちしておりましたよ」

「え?」

お待ちしておりましたって、俺の方が30〜40分ほど待ってたんだけども。

「あ、お待たせしました、ですね」

可愛らしく照れ隠しのような笑顔を見せて言う。
正直、ものすごく可愛いんだが。

「……あ、申し遅れました。僕の名前は伊集院 雪乃(いじゅういん ゆきの)と申します」

いきなり自己紹介された。少し大きいであろう女性用ブレザーを着て、お辞儀される。
ていうか……僕っ娘? マジか……。

「あ、え、えーと……俺の名前は杜坂 木葉っていいます」

俺は今、顔が赤いのだろうか。ちょっと暑くなって来た。
俺の名前を聞いた瞬間、何故か伊集院は驚いたような顔をした後、とびっきりの笑顔に変えた。

「ふふふ。可愛いお名前ですね?」

あぁ……いい……。……って待て!! 俺は今までこの名前を可愛いとか言われるのが嫌じゃなかったのか!

「どうしたんですか? いきなり頭抱えて……」

「い、いや……大丈夫です。病気なんです」

「病気? それって大丈夫じゃないんじゃ……」

ま、まずい……。なんていうか、冗談が通じるのかどうか読めない。
というか、俺の冗談のレベルが低すぎるのか? いや、でも——

俺が悶絶、そして伊集院が心配そうな目で俺を見ていた時だった。

「あーもう、しんどい」

言葉通りにダルそうな声がどこからともなく聞こえてくる。
とは言ってもここは3階で、聞こえてくる場所は扉一点のみだとは思うが——

「って何で黒板が扉みたいにっ!? ていうかすげぇ!!」

説明するととても難しいが、俺の興奮を説明してやろう。え? 興奮じゃなくて状況? わかったわかった
つまりだな。黒板がSF映画の如くにすげぇスライド音と共に左右に開き、そしてその中から——
無愛想な顔をした美少女一人が登場。

「——あんた、誰?」

「……はっ! 危ない危ない……つい、このSFすぎる感じに感動のあまりフリーズしてしまっていた……」

俺がぶつぶつと一人でフリーズしていた成り行きをアバウトに話すが、謎の無愛想美少女は——

「あぁ、アルバイト?」

「話全然噛み合ってないねぇ!?」

全くもって違う話になった! ていうかこの状況からどうやってアルバイトの話に繋がるんだよっ!

「まぁ……でも、今回もダメそうね」

無愛想な美少女は大きくため息を吐き、何だか俺にとって失礼なことを言っているような気がするが……。

「あ、でも瀬菜せなちゃん。この人が"あの"……」

いきなり伊集院が無愛想な美少女に話しかける。どうやらこの美少女、瀬菜という名前らしい。
すると瀬菜は驚いた顔をして

「え!? こいつが!?」

とか俺を指さして言った。
ものすげぇ、失礼だと思いませんか貴方。

「………」

若干、睨みつけるような形で俺を観察している瀬菜。そしてため息一つ吐いて言う。
てかこっちがため息吐きたいよっ!って言いたかったがやめておく。

「アルバイトを言うわ」

(やっとか……)そう思ったのは束の間。


のちに後悔することになる。



「アルバイトの内容は、世界を救うことよ」



すごい勢いで、全身がフリーズ化したのは言うまでもない。