コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

cast ( No.1 )
日時: 2010/12/19 16:46
名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: aUzRFwNt)

cast

纐纈 美維子/Hanabusa Miko(15)♀

宮戸 藍斗/Miyato Aito(現15)♂

風早 裕人/Kazehaya Yuto(15)♂

佐々木 瑞姫/Sasaki Mizuki(14)♀

prologue ( No.2 )
日時: 2010/12/10 21:39
名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: gdQ75u9F)

prologue


恋を避けていた少女。

恋は良いものだと教えた少年。

その二人の恋物語-----…。



出会えてよかった。

スキになってよかった。

貴方がダイスキ、ダイスキ-----。



ずっと傍にいたい。

ずっと貴方を見ていたい。

ずっと、ずっと----------。

#1 ( No.3 )
日時: 2010/12/10 22:10
名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: gdQ75u9F)

#1

 あの日、私は心に決めた。『もう恋はしない』と。もう悲しい思いをしたくなかったから。もう大切な人を失いなくなかったから。もう寂しい想いをしたくなかったから。私の恋の相手はあの人だけでいい、と。あの人以外は-----恋なんてできない。








 今日は、朝から教室が賑やかだ。なぜなら今日は、転入生が来るから。そして、騒いでいる大半が女子。言うまでもないが、転入生が男子だから。あっちこっちで、「イケメンかな??」とか「性格良い子が一番だってー」という声が聞こえてくる。まったくうるさいものだ。

 「美維子は楽しみじゃないの?」
 私の親友で幼馴染-----笹城瑞姫が声をかけてきた。

 「べっつにぃ〜」

 「美維子……。アイツもことはもう忘れなよ」
 アイツ-----彼氏で-----私と瑞姫の幼馴染。瑞姫だけが、私の思いを知っている。

 「やだよ…。アイツを忘れたら、私、アイツを---藍斗を裏切るみたいじゃん。そんなのやだから、私の恋の相手は藍斗だけでいい」
 瑞姫は、呆れたようにため息をついて、自分の席に戻って行った。そして、少しすると本鈴が鳴り、先生が入ってきた。

 「じゃあ、席つけよー。みんな知っていると思うが、このクラスに転入生が入ってくる。おい、風早。紹介しろ」
 
 「はーい !! えっと、俺は風早裕人。みんなよろしく !!」
 転入生の顔を見た。そして、私はハッとする。なぜなら…。頭から3cm程の短髪。キラキラした、好奇心旺盛な瞳。制服の着方も、全部が全部そっくりだった。



 事故で亡くなった彼氏、宮戸藍斗にそっくりだった----------。

Re: スキだと言えたら  Chapterⅰ ( No.4 )
日時: 2010/12/12 10:15
名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: 2pqBpCaH)

#2

 あの時の記憶がよみがえる。それは、私と藍斗と瑞姫が中一のころだった。私たち三人は幼馴染で、小六までは、いつも一緒にいた。でも、中学校に入ると、三人はクラスが離れ、それぞれに友達ができていた。それでも、私は二人のことが好きで、そして藍斗には小さいころからの恋愛感情は、変わらずにあった。

 私は、藍斗がスキだった。小さい時に出会ってから、ずっと。藍斗とずっといたかった。それが、中一になって叶ったんだ。私は、告白なんてするつもりはなかった。けど、藍斗から言ってくれたんだ。「ずっとスキだった。これからもずっと」って。次の日から私たちは、“カレカノ”になった。毎日が幸せで、幸せすぎて……。

 「瑞姫、おっさきぃ !! 瑞姫も早く彼氏つくってデートしなよ?」

 「むぅ。美維子ずるいぃ……。藍斗よりイケメンな彼氏作っちゃうから !!」
 そんなやり取りを瑞姫として、私は藍斗とデートに行った。中二の時だった。その日は、なにもかもが上手くいくと思っていた。あの時までは-----…。







 「んじゃ、風早は纐纈の隣な」
 と先生。や、待ってくれやい ! こんな感情がこんがらがっているときに !!

 「よろしく !! 美維子♪」
 いきなり呼び捨て !? しかも下の名前って……。どんなに顔が似ていても、性格は藍斗とは違った。私、なに期待してるんだろう? 宮戸藍斗は、私の心の中にしかいない。代りの人間なんて、存在しないんだから……。

 裕人は、やたらと私に話しかけてきた。正直ウザい。しかも担任が「風早に校内を案内してやれ」なんて言うし……。今は、その校内案内の真っ最中。

 「えっと、ここが音楽室でその隣のここが…」

 「なぁ、美維子」

 「…下の名前で呼ぶのやめて」

 「んでだよ〜。それより、美維子朝から悲しい顔してたから、なんかあったのかなぁ、と思って」
 悲しい顔、と聞いて藍斗のことが頭に浮かんだ。私、悲しい顔してたんだ……。気付かなかった。

 「俺、美維子に笑顔におなってもらいたくってさ !!」
 そう言って笑った裕人の顔は、やっぱり藍斗にそっくりだった----------。

#3 ( No.5 )
日時: 2010/12/13 22:06
名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: 2pqBpCaH)

#3

 こんなの……信じたくない。私が想っているのはアイツだけ。アイツだけが私の彼氏で、アイツだけが私の大事な人なんだ。だから、絶対に、そんなことは…………ないんだ。----------私が裕人をスキだなんてないんだから… !!!







 「ホームルーム始めんぞー」
 担任が言うと、さっきまでざわついていたクラスの子たちが、一瞬だけ静かになる。一瞬だけ、だ。それにしても、今日も朝から女子たちが騒がしい。もちろん、裕人に対してである。

 「わっかんないなぁ、なんだってそんなに藍斗にこだわるの? そりゃ、藍斗は良い子だったし、美維子にベストな彼氏だったけど…。藍斗だけ見てても、美維子は前に進めないよ…?」
 瑞姫は、裕人が転入してからずっとそんなことを言っている。

 「進めなくったっていいんだ。私には…私に必要な男子は、藍斗だけなんだよ」
 私はそのたびこうやって言い返した。

 「え〜? 裕人君いいと思うんだよなぁ〜。外見は藍斗にそっくりだしぃ、運動もできるしぃ、頭もいいしぃ、みんなに優しいしぃ♪ ダメなのかなぁ、裕人君はぁ?」
 瑞姫…。何故にそこまでに人格が変わるのか…。

 「美維子ー。数学のここ教えてー?」
 裕人が走ってこっちにやってきた。手には数学のドリルを持っている。
 
 「やだ」

 「えー、ケチー」

 「教えてやりなよ、天才的秀才の美維子ちゃん♪」
 瑞姫が横から口を挟んできた。

 「じゃあ、瑞姫がやればいいじゃん」

 「私、あったま悪いし☆」
 瑞姫が黒く見えるんですけど。気のせい…にしておこう。うん。

 「ね? だから教えてあげなって、み・い・こちゃん !」
 バンっと、瑞姫が私の背中を押した。

 「え? あ、キャッ… !」
 私は裕人の方へ滑って、そのまま-----私は-----…。








 「青春ですなぁ」
 呑気に瑞姫はそう言った。

#4 ( No.6 )
日時: 2010/12/18 16:37
名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: aUzRFwNt)

#4

 バカ。バカバカバカバカバカバカ。瑞姫の…バカー-----っっ !!! 周りのクラスメートたちが、まるでおもしろいものを見るように、こっちを見てニヤニヤしている。裕人までもが、顔を赤くして、私の方を見ている。誤解ですからね !? 私の意思でこうなったんじゃないから、全部が全部瑞姫のせいよ ! 瑞姫……。今日という今日はただじゃおかないからねっっ !! 

 「瑞姫ちゃん」

 「なぁに? 美維子ちゃん」
 さすがは瑞姫。私が、ちゃん付けや君付けで呼ぶと、たいていの人は私を恐れて逃げ出す。だが、瑞姫も私と同じように、恐れられる存在だ。簡単には怯んではくれない。

 「外で、ゆっく〜り話がしたいなぁ、って」

 「そう。それは奇遇ね。私もそう思ってたの」
 そして、私たち二人は教室を出て行った。






 〜校庭裏にて

 「さっきこと。どういうこと? どうして私を押し倒したりなんかしたの??」
 私は、瑞姫に迫って行って言った。

 「んー。だってぇ、美維子。美維子は裕人がスキなんでしょう?」
 は、はぁ? 顔がだんだんと赤くなってくる。私が、裕人をスキって? 私が藍斗だけそスキだって、瑞姫が一番よく知っているはずなのに。確かに、藍斗と裕人はそっくり。でも、性格はまるで違う。藍斗は、物静かで秀才。沢山の人といることは、めったになかった。でも裕人は、うるさくて馬鹿。人懐っこくて、いつも沢山の人といる。藍斗の方が…絶対良いんだ。

 「もうさ…美維子。いい加減にしてよ」
 瑞姫は---泣いていた。どうして泣くの? 瑞姫より、私の方が泣きたい気分だよ…。あんな恥かかされて………。

 「美維子。私が藍斗をスキだったって、知ってたよね?」
 うん、知っている。心の中だけで、私は呟いた。

 「あと、私が藍斗に告白して、フラれたことも。私、あの時は悔しかったなぁ。でも ! 藍斗のスキな人が美維子って知って、すっごく嬉しかった。悔しい、って気持ちが吹き飛んで、応援したい、ってなれた。だからこそ、藍斗が死んでしまった時は……すっごい辛かったんだ」
 瑞姫は、赤く腫れた目をゴシゴシとこすって、息を整えてからまた、喋り始めた。

 「藍斗が死んでしまったことは、辛かった。けど、悲しんで、落ち込む姿の美維子を見るのも、同じくらい辛かった。でも、少しして美維子は立ち直ってくれた。と思った。けど、違ったんだね」
 瑞姫の目は、さっきとまったく違っていた。-----怒った目をしていた。立ち直ったふりをした、実は今もまだ引きずっている、ということに対して。瑞姫は怒っていた。

 「私、いっつも言ってたよね。『そのまんまじゃ、良い男も見つかんないぞ?』って。でも今日は言い方を変えるね。-----今の美維子は、藍斗がスキだった美維子じゃない」
 瑞姫の言葉は、私の痛いところを突いていた。だから-----耐えられない。

 ダッ !!

 私は後ろを見て走った。耐えられなかった。藍斗のほかにも、私を大切にしてくれる人がいた。瑞姫がいたのに。私は瑞姫の信頼を裏切ってたんだ。ごめん、ごめんね瑞姫。

 「美維子 !? ちょ、何処行く気? 戻ってきてってば !!」

 後ろで瑞姫の声がする。でも後ろを向くことは、今の私にはできなかった----------。