コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: スキだと言えたら Chapterⅱ オリキャラ・イメソン募集 ( No.42 )
- 日時: 2011/01/30 16:18
- 名前: 美桜 ◆QfbalvjOYM (ID: 7YTWgvJr)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
#10 後編
「俺は……藍斗ってやつの…代り」
声に出していった。認めたくない真実を。
あの日、瑞姫に美維子の過去の話を聞いたときから、うすうす感じていた。でも、胡桃に言われ、実感できた。美維子は、俺のことスキじゃないんだ。美維子がスキなのは、藍斗っていうやつで、俺はそいつの代り。馬鹿だよな、俺。胡桃の言葉で動揺するなんて。
そのあとの記憶は、ほとんど残っていない。美維子が、俺に向かってなにか叫んだように思ったが、それすらも覚えていない。ただ一つ確かなのは、俺が家に帰るまで、胡桃が隣にいたこと。どうしてだっけ……。
家に帰り、部活の用意をして、もう一度家を出た。その日は集中できず、一回もシュートを決められなかった。
7時ごろ、家に戻ってきた。晩飯を食べ、自分の部屋へ行った。すると、携帯が光っているのが見えた。見ると、受信メールが二件。瑞姫と美維子からだった。瑞姫のメールの内容はこうだ。
『裕人、もしかして胡桃を信じたの ? バカ !!! 彼女を信じないで他人を信じるなんて』
瑞姫の言葉にはっとした。そうだ…。あの時、美維子は「な… !! 裕人、待ちなさいよ ! 胡桃のこと信じる気 ?」って言ったんだった。ホント、俺どうかしてた。確か俺、胡桃に突然告白されたんだった。それで美維子が来て……。
思いだすだけで、自分に腹が立つ。いつも、美維子を信じてたのに……。
次は美維子からのメールだ。恐る恐る見る。
『美維子だよ♪ 今日のこと、気にしないでね。胡桃のこと信じないで、裕人は藍斗の代わりなんかじゃないんだからね☆』
なんだ、元気じゃないか。返信しようとする。でも、もう一度考え直した。無理してこれを打ったのかも……。実はすごく落ち込んでたりとか……。
結局、俺は返信することができなかった。それが美維子を逆に傷つけてしまうなんて、思いもよらずに-----。
「おはよう !!」
俺は元気良く、教室に入っていった。今日、ちゃんと美維子に謝ろう。俺の挨拶に、みんなが「おはよう」と答える。席に座って、美維子の席を見る。まだ来ていないようだ。
本鈴のチャイムが鳴り、担任が教室へ入ってくる。美維子はまだ来ない。遅刻 ? まさか。美維子が遅刻するはずない。だったらなんで……。もしかして昨日のことで !? だとすれば……ヤバイ。かなり。
「………………と」
ん ?
「ゆ………と」
瑞姫だ。すごい形相で睨みつけてくる。こっちもかなりヤバイぞ…。
「今日瑞姫が学校来なかったら…。裕人、アンタを------」
ゴクリ。
「殺す」
「あ、はい」
ヤバ、俺殺される。
昼休み。まだ美維子は来ない。俺は瑞姫と一緒に南塔の裏に行き、瑞姫の携帯から美維子にメールした。今は携帯がどーのこーの言ってる場合じゃない。
『学校きなよ !!』
「送信、っと」
「それだけでいいのかよ」
「………」
何も言わないでおこう。
昼休み中に返事は返ってくることはなく、時間だけが過ぎて行く。五時間目、六時間目にも姿を見せなかった。
放課後。俺は瑞姫と二人、下校していた。
「裕人。美維子が一番傷ついているのは何だと思う ?」
不意に、瑞姫に質問された。
答えはわかりきっている。でも、自分で言うのが怖かった。俺は何も言えず、黙っていた。
「美維子は、大切なヒトを二回もなくしたんだ、って思っていると思う」
「大切な…ヒト」
「そう。裕人は気づかなかった ? 美維子は、藍斗がスキだった。でも今スキなのは裕人で、藍斗じゃない。裕人という、一人の人間がスキ。その人が自分を信じてくれない、誰かにとられてしまう。そんなの、誰だって傷つくよ。もし……もし、美維子が………藍斗がいなくなった時みたいになったら…」
瑞姫は泣いていた。でも俺は何もすることができないし、何も言うことができない。俺は弱い人間だ。
「裕人、私が言えるのはそこまで。あとは自分で考えな」
いつもの強気な瑞姫に戻った。
俺は頷いて、ある家へ走っていった。
美維子の家。恐る恐るインターホンを押す。すると、美維子の妹らしき人物が出てきて言った。
「姉ちゃんなら、さっき出て行ったよ。『裕人のとこ行く』って。もしかして、裕人ってあなたのこと ? 姉ちゃんはイケメンばかり彼氏にしてずるいなぁ」
その言葉を聞き、俺は自分の家へ猛ダッシュした。
-----頼む、美維子。待っててくれ… !
しかし、願いは届かなかった。残すところはあと一つ----------…。
藍斗って奴が死んだ、っていう海辺の橋へと来た。やっぱり、そこには美維子がいた。
「みい…こ」
「裕人 !!??」
驚いたように、美維子が振り返る。
「……ん。ごめん、美維子 !!!」
「どうして裕人が謝るの… ?」
「え… ?」
や、今回のことは完全に俺が悪いと思うけど。
「私が悪いんだよ。裕人に誤解させちゃったし。はっきりしない私が悪かったんだよ。だから、ちゃんと誤解解くね」
違う、誤解してたわけじゃないんだ !! -----そう言おうとした時に、美維子が言った。
「私は、裕人が大好きー----------っ !!!!!」
カーッと、顔が熱くなってくる。何もこんな人の多いところで言わなくたって…。
美維子は俺の方へ走ってきて、抱きついてきた。
「だから……もういなくならないで。誰のところにもいかないで」
「行くわけないだろ、バーカ」
そして俺は、そっと美維子の唇をふさいだ。
「私の----------」
「俺の----------」
「ファーストキス」