コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Love in My home ( No.2 )
日時: 2010/12/10 21:51
名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: BojjKUtd)

Prologue

 ──この物語は、両親はいないがとても幸せに暮らす五人の兄弟の日常である。

「何か美味しそうな匂いがするぅ」
 寝ぼけ眼で現れたのは長男の槻谷准一。現在高校三年生の十七歳。せっかく先日美容院に行って綺麗に染めた栗色の髪の毛は、寝癖が酷い。まるで先程まで下敷きで頭を擦っていたような跳ね方だ。
 着ているグレーのスウェットはサイズが合っていないのか、ズボンの裾が床についている。だが本人はズボンを引きずってしまっている事を特に気にしていないようだ。いや、もしくは気付いていないのかもしれない。
 長男でありながら何処かふわふわとしていて地に足がついてない様な雰囲気だが、弟たちの将来を心配したりと、意外としっかり者である。

「准ちゃんおはよう。早く着替えないと遅刻するよ」
 炊きたてのご飯を茶碗につぎながら、准一に優しく微笑んだのは次男の槻谷悠二。高校二年生の十六歳。准一と同じ高校に通っている。脇辺りまである茶色の髪は襟足だけ残して下の方で結んでいる。黒のヘアゴムは苺の飾りが付いていて、とても可愛らしい。
 白シャツに青のネクタイ、緑のチェック柄のズボンという至ってシンプルな制服の上から黒のエプロンを着ている。エプロンの左胸には悠二を指す“Y”のアップリケが縫い付けられている。
 家族の為に働く兄の准一を少しでも楽にさせてあげたいという思いから、家事は全て悠二がこなしている。成績優秀なので、偶に弟の課題等も見てやっている。

「准にーちゃん、おはよー!」
 かなり元気良くそう言ったのは、三男の槻谷三月。中学三年生の十四歳。前髪をヘアゴムで結んでいるので、白い額が丸出しの状態。この前、准一の真似をして栗色に染めた髪の長さは耳下五センチくらい。
 淡いピンク色のシャツに赤のネクタイをして、その上から黄土色の薄いカーディガンを羽織っている。二週間程前はまだ風が冷たかったのでジャケットを着用していたが、最近は大分暖かくなってきたこともあり、薄手のカーディガンに変えた。ズボンは紺色でシンプルなデザインだ。
 良く言えば無邪気、純粋で素直。悪く言えば……というか直球で言ってしまえば空気が読めない馬鹿である。ほぼ何も考えずに行動する。

「おはようございます准一兄さん。昨日より五分早い起床だね」
 読んでいる新聞から目を離さず口だけで挨拶したのは、四男の槻谷四海。中学一年生の十三歳。三月と同じ中学校に通う。漆黒の髪はボサボサという言葉が相応しく、お世辞にも綺麗とは言い難い。結構な童顔で、特徴的なのは右目下の黒子。
 薄い黄色のシャツに三月と同じ赤色のネクタイ、寒がりの為未だにニットセーターを着て登校している。ズボンも三月と同じ紺色。パソコンのやりすぎで視力が悪い為、黒縁眼鏡をかけている。
 理科の授業や実験が大好きで、学校から帰ると白衣に着替え自分の部屋に籠るので四海の部屋は通称“実験室”だ。しかし大した実験はやっていないので白衣は新品同然驚きの白さ。

「おはよう准にぃ。昨日“遅刻ギリギリに家出るのもうやめよう”とか言ってたの誰だっけ?」
 そう言ってぷっと吹き出すように笑ったのは、五男の槻谷楓五。小学六年生の十一歳。色は四海と同じ漆黒の髪だが、四海と違うところは“よく手入れされている”というところ。風に揺れる度サラサラと音が聞こえてきそうな、とても綺麗な髪である。年齢にしては大人びた顔つきで左目下には黒子がある。
 グレーのVネックTシャツにデニム、上から羽織っているのは黒のロングカーディガン。末っ子だが、この槻谷家で一番洋服のセンスがあるだろう。……というか、他の四人が洋服に興味が無さ過ぎるのかもしれない。
 槻谷家一番の常識人で、末っ子なのに家計簿をつけたり兄達の悩みを解決したりと、かなりしっかりしている。だが言葉をオブラートに包むという事を知らずバッサリと切り捨てる事から、兄達は「毒舌」と言う。

 ──個性溢れる五人の兄弟の日常は、楽しく、とても温かい。