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Re: 蒼穹、紅く燃えゆ ( No.14 )
日時: 2010/12/26 12:11
名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)

Part6 我が家の晩餐─Dinner─

さぁ、待ちに待った晩餐だ。
そんな言葉を述べたのは、色素が抜けた様な灰色の髪の男性だった。
年代を感じさせる円卓に並べられているのは、妙に貧相な食物だけ。
”晩餐”などと豪勢な食事を連想させる言葉を使ったものの、並べられているのは味噌汁に白飯、焼き魚だけだ。
円卓を囲んでいるのは、灰色の髪の男性を含め、三人。
車椅子に乗った鴉間 志織に、肩を落として落胆する鴉間 翔。
灰色の髪の男性は、翔を一瞥すると、

「翔。折角の晩餐なんだ、沈んだ面をするんじゃねぇっての」

肩を竦め、灰色の髪の男性はそんな言葉を述べたが、翔は哀愁を感じさせる雰囲気を漂わせたまま。
ゴーン…、と鉦の音すら聞こえてくるのでは、と思わせるほどの。

「トレンスさん。兄様は好きな人に話し掛けられなかったから後悔に打ち拉がれてるんだよー?」

「おー、色恋沙汰かよ。良いねぇ、青春じゃねぇの」

「だけどねー、香苗ちゃんと姫子ちゃんに協力して貰ってるのに、まだ成果が上がらないんだよー」

「おぅおぅ、男らしさが無ぇな。それじゃあ駄目だ。告白くらいは軽々とやってみせろや」

二人の言葉は刃と化して、翔の心に突き刺さっていく。
結局、”兄様の恋愛に助言をする会”の協力の甲斐無く、咲原 廉那との会話は成り立たなかった。
何より、昼時に食事ができなかった為に、会話する元気すら失われていたから。
それを後悔しながら、毎度の如く志織と共に自宅に帰り、現在に至った訳だ。

「…明日から頑張るよ」

何の感情も感じさせない、何処か寂しさを感じさせる声色で翔は呟いた。
それこそ、諦めという言葉を感じさせる声色で。
そんな言葉を呟いた力を無くした様に見える翔に、トレンスは豪快な笑声を発し、彼を叱咤する。

「勝敗は時の運だ。恋愛も然り。時の風に身を委ね、時の波が来りゃあ乗れば良い。そいつが勝利の秘訣だ」

はっはっは、と豪快な笑声を交え、叱咤を述べたトレンスは早々に箸を手にする。
眼前の”晩餐”と表現した質素な晩飯を一瞥し、

「さーて、そろそろ我らが晩餐を戴くかね。腹が減っちゃあ戦はできねぇからな」

「戦はしないけどねー」

「言葉の文だ、気にすんな。さて、そんじゃあ…、合掌ッ!!」

待ってました、と志織はトレンスの言葉に従って合掌をする。
遅れて、落胆のままの翔も。
トレンスは二人が合掌の姿勢を取った事を確認すると、

「神と、世界と、気分屋な運命の女神に感謝して…、いただきます、っと!!」