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Re: 蒼穹、紅く燃えゆ アドバイス募集中 ( No.4 )
日時: 2010/12/18 12:10
名前: No Ink Ballpoint (ID: uUme72ux)

Part3 煩悩─Passion─

志織をクラスへ送った後、翔は暑さによるダメージでふらふらの脚を動かして、何とか教室まで到達した。
彼が所属するクラス、二年A組の教室に。
この日だけは、彼は自分が窓側の席である事を深く呪った。
腰を据えた座席付属の木製椅子に座った刹那、窓から燦々と降り注ぐ灼熱の陽光。

(…何の試練だよ、これ)

暑さに対する耐性が無いに等しいのに、神はこんな悪戯を仕掛けてくる訳で。
とりあえず、雨乞いでもするか、と灼熱の陽光にやられた頭で妙な事を考えた彼が腰を上げた瞬間だった。

「おはよう、鴉間」

その声が耳に入った瞬間だった。
鴉間 翔は心臓が飛び出るのではないかと思ったくらい驚き、声の主に視線を向ける。
視線は、窓際である彼の席の隣にある席に向いた。
其処に、声の主はいる。

「あ…。お、おはよう、咲原」

彼は、視線が隣の席に座っている少女を映した瞬間、頬が紅潮するのを確かに感じた。
心臓は高鳴って、口で言葉を紡ぐのも難しくなる。
その視線が捉える少女は、実に可憐な美少女だった。
繊細に造られた彫刻にも負けず劣らない綺麗な顔立ちに、彼女の美麗さを一層引き立てている紅色の髪。
咲原 廉那、それが彼女の名前だ。

「妙に暑いね、今日は。猛暑って奴かな?」

「う、うん。た、多分、そうじゃないかな?」

ふーッ、と息を吐いて、額に滲んだ汗を拭う。
彼女のそれだけの挙動が妙に美しく見えてしまう。

「それじゃ、鴉間。また後でね」

微笑を湛え、翔に手を振った彼女は、友達の所へ去って行く。
特に会話が弾んだ訳では無いが、有意義な時間だった、と彼は感じていた。
去って行く彼女の背中を視線で追った後、彼は窓側を向いて、ぼんやりと灼熱の陽光を注ぐ蒼空に視線を変える。

(あぁ…、今回も僕からは話に行けなかった…)

残ったのは後悔。
彼女との会話は、有意義で、とても幸せだった。
だが、それでは駄目なのだ。
これでは、どれだけ時が経とうとも、彼女に告げる事はできない。

(僕の”想い”を)

そんな事を考えながら、彼は溜息を吐いて、蒼空を眺めていた。
快晴の蒼空から窓を通して降り注ぐ、灼熱の陽光を浴びながら。
何処か憂鬱そうな表情で、ただ一人の少女の事を考えて。