コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 空を飛部 ( No.3 )
- 日時: 2010/12/23 07:55
- 名前: こるね (ID: mwz5SFMT)
「みなちゃんは私の彼氏かそれとも、麗華ちゃんの知人かの話ですよ、みなちゃん」
「——そうそう、どっちの……って違うわよッ! しかも私だけ知人って平等じゃないでしょッ!!」
「じゃあ、友人がいいんですか? 麗華ちゃんは?」
「さっきと対して変らないじゃないッ!」
…………何を言ってるんだコイツらは?
……雰囲気ぶち壊しじゃねぇかよ。もしかして聞いた俺が悪いのか?
「もう、わがままですね……麗華ちゃんは。……はぁ」
「いやいやいや。ため息つくっておかしいから、そこッ! ったくそんな事だからりんごは——」
「………………………」
いや、さぁ。なんかね。うん、違うんだよ。二人とも本当はさっき自己紹介したみたいにさ、ちゃんとまともな人物なんだよ。
だからさ、そこで『フンッ。なんだ所詮、主人公に惚気《のろけ》る典型的な小説じゃんかよ』とか言って読むの諦めらめないでくれぇッ!!
頑張って俺が話し戻すからさぁ! もう少し読んでみようぜ、なっ?
「何を言ってるんですかぁ! 麗華ちゃんこそ——」
「りんごだって——」
大丈夫だ。俺はよくある主人公みたいに女におどおどしたりはしない。
きちんと止めてみせるさ! 見ていてくれみんなッ!!
「まぁ、落ち着け二人と——」
「みなちゃんは絶対に渡しませんからねッ!」
「いや、だからおち——」
「何言ってるのよッ!! 姉弟でしょ!?」
「おちつ——」
「愛は時に肉親の壁も壊すんですッ!!!」
「あの——」
「そんな歪んだ愛なんて存——」
ピキッ!
「お前らぁぁあーーーー!! いい加減にしろぉぉぉーー!!」
ゴスーーーン!!!
ゴスーーーン!!!
二人の頭を思いっきりグーで殴ってやった。
「「すいませーーーーん!!!!」」
手加減も優しさも抜きで。それはもう、本気で殴ってやったさ。
だって、俺の頭の血管が切れた音したしさ。正当防衛だろ? このままいったら俺の髪、金髪に染まるところだったんだぜ、地球人なのにさ。
「いい加減にしろよ? 二人で醜い争いしやがって」
まったく、学園の女王様とお姫様が聞いてあきれるぜ。
「「だって、麗華ちゃん(りんご)がぁ〜」」
「だっても、ダンテもありません!」
二人とも頭に大きなこぶをつくり、泣いていた。
もうこれじゃどっちが年上か分からんな。
俺は仕方なく、並んで泣いている二人の方に歩き出した。
「……はぁ。ったく、二人とも子供じゃないんだから。それに二人とも大切な——」
一旦、俺はここで言葉を区切り二人の肩に手をおき、涙で濡れた瞳をしっかりと見ながら言った。
——もちろんベストスマイルで。
「俺の嫁だろ?」
「…………ッ!」
「…………えっ!」
フン、どうだ? 人身掌握をすべて知っている俺にとってこんな事、俺にとって楽な仕事さ。
そこらへんの主人公とは訳が違うんだよ! 今からはこういう脇役より主人公の方がかっこいい事を言うのが流行《はや》るのさ!
ックククク……フハハハハハーーーーーーッ!!!!
「気持ち悪いこと言わないで。湊、あなた頭大丈夫なの? さっき殴ったときに打ち所悪かったのかしら?」
グサッ!
「こんな子は私の弟ではないので、ちょっと探してきますね」
グサグサッ!!
あれ〜? あれれれ? もしかして俺今すごい気持ち悪かったのか?
いや、そんな馬鹿な!? そんな事はないはず…。だって、これで、確かに落としている奴がいたんだ。主にゲームの中でだけど。
つまり、恋愛シュミレーションゲームで役に立つって事は、現実世界でも役に立つはずなんだ! そうじゃないと俺は何のために女王様風の先輩系が出てくるゲームとお姉ちゃん系のゲームしたんだ!
これじゃ、全く意味がないじゃないかッ!!
「ね、ねぇ? ちょっと? 湊大丈夫? あんまり真顔で変な事言うから、からかっただけなのよ? だから、そんな落ち込まないで?」
その励ましはもちろん俺の耳に入るはずもなく。
「……ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……」
「み、みなちゃん!? 顔が現実世界に生きる価値がなくなった、そ、そう語ってますよ!?」
くそ、何で思い通りに行かないんだよッ! これだから、リアルは……ッ!
二次元のみんなはこんな感じの言葉ですぐ落ちたのに。1次元超えるだけでこれだ、こんな歪んだ世界のどこがいいんだよッ! セーブも出来ないこんな世界のどこがッ!!
「麗華ちゃんッ! みなちゃんが2次元がなんちゃらかんちゃらって言ってるよ!! どうしよう〜?」
……ん!? ……まてよ。今、何か閃《ひら》いた気がする。 えぇっと、確かセーブもできないあたりで……。
……セーブ……。…続きから……。もういちど……。……何を……。…この世界…。
「ま、待って! …………。今度はセーブとか呟き始めたわよ。早く止めないと何をするかわかんないわ!!」
そして思考はどんどん危ない方向に固まってきた。
そんな中、りん姉と麗華は俺の事を必死に正気に戻そうと頑張っていた。けど、そんな頑張りは虚しく、すこしずつ真実にたどり着く俺。
……人生……。……やり直す。……リセット……。
ッ!! そうかッ!!
「みんなぁ! 俺、人生にリセットボタン押してくるよ!!」
「「えッ?」」
俺は、りん姉や麗華の背中側にある窓に走り出した。もちろん、途中にある椅子や机は走行中に邪魔になったが、そんな事で止まれるほどの人格をもうすでに保ってなかった。
「みなちゃん!? そっちは窓しかないですよッ!?」
りん姉の声も後ろの方から聞こえてくるが、そんな事では止まれない。
ここは10メートルぐらいの正方形の個室だ。だから、走ればすぐにその窓のところに
着いた。
後は、窓を開けるだけ。
「ちょ、湊!? あ、あなた、まさかッ!?」
麗華の叫び声と同時に俺は、窓のロックを解除していた。
そして、後は羽ばたくだけ。怖くない。だって、ここから飛べばすぐに死ねる高さだしね。現実世界のリセットボタンを押すんだ。
そう意気込んで俺は、飛んだ。
後ろには麗華やりん姉の叫び声が聞こえるが今となっては関係ない。
その昔、ロウで固めてつくった羽は太陽で燃やされたと言う。
なら、何も着けずに飛べばいいだけの事だ。
飛んだ瞬間は、上に上《あが》がって気持ちいい。
けど、その後に待っているのは予想以上の恐怖。
たかが数秒は、俺の心を恐怖で蝕むには丁度いいかもしれない。
恐怖に蝕まれる時間、その時間がとても長く感じる中思った。
——やっべ、りん姉や麗華に俺のコレクション見つかったらどうしよう——
〜BAD END〜