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Re: 空を飛部 ( No.5 )
日時: 2010/12/26 13:47
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

「へぇ〜。そんな夢を見ていたのね」
「そうだったんですか……」
やっと理解してくれたのか、二人は怯える事もなくなって普通に接してくれるようになった。
説得した時間は、二十分程度だったがそれでも俺にはとても長く感じられた。
もちろん、最初は信じてくれなくて俺の事を精神病院に連れて行こうとまでしやがった。さすがにそれは困るから病院の件も説得した後に夢の事を説得した。
 まさか、一つの事柄に対して二つの説得が必要にならとは思わなかった。
 「長かった……。ここまでの道のりは長かった……」
マジ、泣きそう。だって、やっと信じてくれたんだぜ? 
……考えてみろよ。自分の大切な人からドン引きされて、接し方は異常者扱い。
さらには精神病院に連れて行こうとする。
ここから普通の関係に戻すのがどれだけ大変なのかを。そりゃあ、泣いても仕方ないだろ?
「……はぁ。ったく、それなそうと言えばいいのに」
話を聞こうとしなかった奴にため息つきながらいわれるとカチンとくるな。
でもまぁ、いい。ここは抑えておこう。
「でも良かったです。みなちゃんが元に戻って」
いや、俺が元に戻ったんじゃなくて、りん姉たちが元に戻ったんだからね?
けど、そう言ったりん姉の顔はとても女性的な顔で、さすがお姫様と言われる事だけはある。
だって、可愛い過ぎるんだぜ?
姉弟? そんなの関係ないな。ほんとに可愛いものはすべての壁を越える事が出来るんだよ。
俺は、自分の姉の可愛さに酔いながら麗華に聞きたい事があったのを思い出した。
「そういえば、麗華。今日は何かするために集めたんだろ?」
俺は今日、麗華から何かをするって聞いたから、こうして部室にきたわけだ。
教卓の上に座っている麗華を見ながら言うと、彼女は待ってましたと言わんばかりに顔を綻ばせた。
「この部活の活動目標が決まったわ。それはなんと——」
部活の目標かぁ……。何になったんだ?
…………。
………ん!?
まってよ!?
……………………なんか俺の気のせいかもしれないが……。
……かなりの既視感《デジャブ》に襲われるのなぜだろう?
俺は背中にいやな汗を感じながら、一旦、区切った麗華の発言の続きを待った。
そして麗華はこちらに微笑みかけながら言——
「みなちゃんは——」
「それ以上言うなぁぁぁッ!!! りん姉ッーーーー!!」
 ——おうとした言葉をりん姉は遮《さえぎ》った。
「私の彼氏か——」
ちょ、まじかよ!? しんじられねぇッ! 俺、また死ぬだろッ!?
俺は急いで続きを言わさないために姉の口を手で封じた。
「ふんがぁ!? ふんぐぅぐうぇッ!」
「いいから少しは黙れッ!!」
もう今は姉とは思わねぇッ! 俺はまだ死にたくないからなッ!!
「ちょ、ちょっと? 何やってのよ?」
「……麗華。これは大切な躾なんだ。だからガムテープをもってきてくれ」 
麗華は俺が何を言ってるのか分からないという顔をしているが、俺の顔があまりにも真剣だったのだろう、部室の棚にある物入れからガムテープをとってきてくれた。
ガムテープを麗華から貰い受けるとそこからはまず抵抗しようと頑張る手を縛ることにした。
「み、みなちゃん!? なんて事をするんですかッ!! お姉ちゃん、許しませんよッ!?」
手を縛ろうとしている間は、口を押さえる事が出来ない。なので、りん姉は口で何とか説得しようと俺に話しかける。
「み、みなちゃん? こんな事しても何の得も——」
「うるさいッ! 少しは黙っていろッッ!」
やっと、手を縛る事が出来た。
りん姉が必死に抵抗するもんだから手を縛るのにかなりの体力を使ってしまった。
「うぅ……。おねがい……。みな……ちゃん。もう……や……めて…。」
「ハァ……ハァ…大丈夫だ。ハァ……ハァ……すぐに済むから……」
俺は息切れをしながら、瞳を涙で潤ましているりん姉の口をガムーテープで塞ぎにかかった。
「……お…願い……。…これ以……上は……」
りん姉はまだ説得しようと頑張っているが、鬼の仮面をかぶった俺の心には通じなかった。
「…ハァ…往生際……ハァハァ……が悪いんだ……ハァハァ…よ。」
俺は必死にりん姉の口を塞ごうと、手がガムテープで縛られて地面に転げている彼女の体の上にマウントを獲得した。
ったく、てこずらせやがってッ! やっとこれで終わるッ!
そう俺が確信したとき——
「姉になんて事やってるのよッ!!」
ドカッ!!
「ごほッ!?」
麗華に殴られた。
何で殴られたと思う? 一、やけにバットに似た木製の棒。二、木製バット。三、釘つきのバット。
正解は全部。信じられる? 麗華はそれで俺を本気で殴ったんだぞ? しかも、鳩尾《みぞおち》。痛いなんてレベルじゃないだろ、普通。
「……ごほッ。れ、麗華…。お前なんて事するんだよ……」
りん姉の上でマウントを取っていた俺は吹き飛ばされて、壁にぶつかっていた。何とか体を奮い《ふる》立たせるが、口の中は不純物の味でいっぱいだった。
そんな俺を麗華は、さらに素手で殴りつけてきた。
「姉にセクハラするなんて信じられないわ」
そう言いながら、殴り続ける。
顔、腹、鳩尾、男にとって一番大切な場所。男にとって二番目に大切な場所。
多分、1分ぐらいしか殴られてないと思う。だが、俺にとっては長すぎる1分だ。
まさか、命守ろうとしたらこうなるとは、誰が想像できよう。
ガッ、ゴッ、ボコッ、グチャッそんな音を立てながら麗華は殴り続けた。