コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 空を飛部 ( No.8 )
日時: 2010/12/27 17:47
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

……あっ……。
俺はその言葉を言われてやっと気づくことが出来た。
なぜ麗華が慌てていたのか。なぜりん姉が瞳に涙を浮かべていたのか。
そして、なぜこの忙しいときに麗華が小説を書きたいといったのか。
——それはすべて『思い出作り』のためだ。
麗華はクールで知的で女王様な存在で学園に通ってはいるが、決して寂しくはない、一人がいい、羞恥心が全くない、そんな血も涙もない女王様ではない。
むしろその逆だ。
だって、俺が初めて麗華とあったときも彼女は泣いていたから。心の中で。
そんな彼女があと何ヶ月で分かれる俺たちと寂しくないわけがない。
だからこその活動。だからこその小説だろう、と俺は思った。
まぁ、何で小説かは分からないが。
さっきまでやめさせる気持ちでいっぱいだったのに、麗華の本当の気持ちが分かってしまった俺には、止める事なんて出来なかった。
だから俺は言う。
「……ちっ。しょうがねぇな。……しょ、小説書くぞ……」
素直にはなれなかったが。
「えっ? ……今なんて?」
まるで、自分が聞いた事が間違っている、そんな感じの聞き返し方だ。
素直なりきれない俺となぜ急に肯定されたかわかってない麗華。すべての事情を知るりん姉。
「っ! だ、だから小説書くんだろッ!!」
こんな風にみんなで補わなければ何もできない三人。
「う、うん、小説ね。か、書くわ。 当たり前じゃないッ!!」
それでも麗華は思い出がほしいと思ってくれた。
俺はそんな麗華に感謝したい。ありがとうってな。
麗華は俺が小説を書こうと言い出したのが、そんなにうれしかったのかとてもニコニコしていた。
まるでそれは人を虜《とりこ》にするであろう女王様の微笑みだった。
こんな微笑が見れるのなら俺は、小説ぐらいでガタガタ言わないでおこうとそう決めた。
「あーそれと——」
麗華もう一ついいたことがあるらしく、微笑みながら話しかけてきた。
「それと、なんだ?」
俺は、そんな微笑んで話しかけてきた麗華に頬を緩めながら耳を傾けた。


「小説の内容を考えたり、書いたりするのは湊だからね」


「——はッ?」
真っ先に自分の耳を疑った。
「で、私が監督、りんごが監督補佐ね」
「いや、ちょ——」
「いい? これは決定事項だからね」
「わかりましたよ、麗華ちゃん」
「少し待てっていってる——」
「よし、今から小説についての会議をはじめるわよッ!」
そういって、麗華はきらきらした目で楽しそうに会議をはじめた。
 …………。
 前言撤回。
少しは小説の事で文句は言わせろよ。