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Re: 白金の陽炎 ( No.1 )
日時: 2010/12/24 20:13
名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: 7aD9kMEJ)

第一章 陽光は静かに燃える

 いつの頃からか
 人類はいつの間にか超能力を扱った
 
 力を振りかざし
 権力を貪欲に渇望する大人の身勝手な争いは
 何世紀も続き
 多くの物を奪った

 一番犠牲になった子供は
 自爆兵に
 スパイに


 人体実験の道具になった


 終戦後も迫害を受けた子供達を
 我々大人は保護した

 それがこの大都市








 ”シェルター”



    :
    ・
    ・



 授業に使われていた3D映像装置に映った映像がノイズ音と共に消える。
 それを合図に寝ていた人、遊んでいた人、他の勉強をしていた人が顔を上げた。

「このような事態が二度と起こらない事を祈り、我々は能力者と普通人の共存を進めて行くのです」
 お決まりの言葉で終わった歴史の授業。
 耳障りなチャイムを掻き消す子供の声。
 
 その全てを完全に無視する男がいた。

 ただ空を見つめ、次の授業が始まるのを待つ。
 右耳には赤く輝くピアス。
 燃えるような赤い髪。
 茶色がかった目。
 異様な雰囲気を放つ彼は、クラスから完全に孤立していた。

「そーいや、あの噂知ってるか!?」
 クラスの誰よりも早く情報を手に入れた金髪の男が教室の中央の机に飛び乗った。
「なんだよー」
「教えろー!」
 クラスメイトの声が飛び交う。

「実はッ!!」
 もったいぶるように口を閉じ、にんまりと金髪の彼は笑った。

「このシェルターにはッ! 監視員ジャッジメントってのがいるんだ!!」


 シェルターに蔓延る裏組織や無法者を監視し、”処刑”する。
 真紅の瞳と赤い髪を持つ男。
 黄金の瞳と金の髪を持つ男。
 彼らは多彩な能力と、ずば抜けた戦闘センスと身体能力。
 端整な顔と、天才的な頭脳。
 目をつけた相手は絶対に逃さない。


 それが金髪の男——獅戸琥珀(シシド コハク)——の話の概要だった。
 うるさい声だった。それはもちろん赤髪の彼の耳にも届いた。
「それってさー、琥珀と赤髪に似てない!?」
「確かにー! でもさ、赤髪がそんな事するわけないじゃん!! 能力以外の条件は揃ってるけどね」
 無意味な会話。
 赤髪にとってはただの騒音にしか過ぎなかった。

「悠!! 俺らの事みたいだってさっ」
 中央の机の上から、周囲のクラスメイトを飛び越え彼—獅戸朔哉(シシド サクヤ)—のもとへ飛んだ。
「さーくや、聞いてんの?」

 鬱陶しそうに朔哉は盛大なため息をつき、琥珀の腕を掴んだ。
「ちょっと来い」
「ほえ?」

 朔哉は何も言わず、琥珀の腕を掴んだまま、授業開始のチャイムを無視して屋上へと向かった。