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Re: 白金の陽炎 ( No.3 )
日時: 2010/12/25 20:43
名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: 7aD9kMEJ)

「このクソがきッ!!」
「わわっ」
 金髪の少年、10歳の琥珀は5、6m横に転がった。
 直後に爆炎が道に降り注いだ。
「ちッ」
 爆炎の使い手は舌打ちをし、黒煙を掻い潜り、少年の追跡を再会した。

 琥珀は路地裏を疾走し、パイロキノをまこうとした。
 が、相手もしつこかった。
 
 ——今残った体力で逃げ切る事は不可能だ…!!
   なんせ、こんなモノを持ってるからな…なおさらだ。

 服のポケットにあるモノを取り出す。
 それは太陽の光を十分に吸収し、輝いていた。
 かなりの大きさのダイヤモンド。
 美術館から盗み出した物だ。
「待てッ!!」
 追手が目前に迫ってきた。
 自分の体力の限界も近い。
 …とその時。

「琥珀! こっちだ!!」
 琥珀の頭上、民家の屋根の上で”彼”は叫んでいた。
「早く! こっちに投げろっ!!」
 無言で琥珀は頷き、赤髪の朔哉にダイヤモンドを投げた。
 同時に琥珀もテレポートをし、追手から逃れた。
 琥珀は何度もテレポートを重ね、古ぼけた酒屋の床に倒れこんだ。
「琥珀じゃないか!! 朔哉は!?」
「まだなんですかッ!?」
 ——屋根伝いに走れば、かなり近道なはずなのに…
 ピッ…ピピッ
「ッ…——」
 電子音が響き、身体に駆け巡るエネルギーが途切れる。
 少しの違和感。
「すまないな…でも、お前達のためだ」
 能力を封じる制御装置リミッターだ。
「いいえ、大丈夫です。ありがとうございます」
 柄でもなく腰をおり、丁寧に礼を言う琥珀のシャツから見えるのは…生生しい鞭の傷跡。

 あのダイヤモンド…
 あの宝石は「破魔の宝玉」と呼ばれている。
 その名の通り、超能力を封じる強力な宝石だ。
 ——あれを持っている朔哉はテレポートが出来ないし、サイコキネシスも使えない。

 琥珀は朔哉が帰って来る事を祈りつづけた。