コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: サクラ ( No.1 )
日時: 2011/01/03 15:16
名前: 柚莉愛 (ID: LV9Enekb)

第2話 「探し物」

「夏君ってやっぱかっこいいよね〜。」
「水麻ってばそればっかり。」
「だって本当のことじゃん〜。」
夏が転校してきて早一週間。
夏はもう女子の間で人気者だった。
「玲奈は隣でずるいよ!」
そうなのだ。
玲奈は夏と席が隣のため、色々言われる。
「安藤君って忘れ物多いよ。私、いっつも教科書とか見せてあげてるもん。」
玲奈はあきれた表情で言った。
「え〜。そこがかわいいんじゃん!てか、貸すとか羨ましい!。」
——そう言われてもね。好きでやってるんじゃないし
玲奈はつい叫びそうになったが
その言葉を飲み込む。
「まぁ、私は本気じゃないけど、本気の子もいるから気をつけなよ?」
水麻は本気の顔で言った。
「私、好きじゃないから大丈夫!てか好きにならない!」
玲奈は微笑んだ。

それから数日たった4月下旬。
玲奈は朝から桜の木の下に一人でいた。
桜の花はとうに散り終わって、青葉がなりかけている。
——桜ちゃん。桜はもう散り終わって
  青葉がなっているよ
手に握っていた何かをさらに強く握りしめる。
そこでチャイムが鳴った。
玲奈は急いでバックを持ち、教室へ向かった。
大切なキーホルダーを落としたことにも気づかずに。

「ギリじゃん。危ないね。」
隣の席の夏が話しかけてきた。
「まぁ、間に合ったからいいの。」
玲奈は無愛想に答えた。
ふと水麻のほうを見ると、
口パクで「ずるい」と言っているのがわかった。
玲奈は苦笑いした。
——まぁ、確かにかっこいいし、おもしろいし、優し  いとは思うけど・・
これ以上夏のことを考えるのはやめた。

一時間目の授業が始まり、
玲奈は大切なものがなくなっていることに気づいた。
「あれ・・・?ない!」
独り言を呟くと、玲奈は机の周りを探し始めた。
——どうしよう・・。どこに落としたんだろう・・
玲奈は焦った。
その様子を察した夏が話しかけた。
「どうしたの?」
「何でもない。」
そう言いつつ玲奈は探すのをやめない。
「明らかに何か探してんじゃん。」
夏はそう言うと
何かをわからないものを探し始める。
玲奈は机の周りにはないとわかった。
その時、玲奈は思い出した。
10時になると学校の掃除人が掃除を終えることを。
そして廊下に落ちているすべてのものを
処分することを。
今の時刻は9時40分。
授業が終了するのは10時。
このままここにいても間に合わない。
「松井、探し物ってどんな・・って泣いてんじゃん!」
夏は驚いた。
玲奈が泣いていたからだ。
「どうしよっ・・このままじゃっ、捨てられる・・・。」
玲奈は涙が止まらなかった。

「そこうるさいぞ。」
数学教師村井が玲奈と夏を注意した。
幸い、玲奈が泣いていることには気づいていない。
泣いている玲奈の代わりに夏が答えた。
「すいません。松井さん、腹痛がひどいらしいんでしゃべれないらしいです。ってことで保健室連れて行きます。」
夏は言うが早いが玲奈の手をとり、教室を飛び出した。