コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: サクラ ( No.110 )
- 日時: 2011/03/23 20:59
- 名前: 柚莉愛 ◆VoHZnMKTK2 (ID: bLTkk.cx)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi
第61話 「自分に嘘はつけない」
「馬鹿みたい・・・」
泣きながら教室を出て行った小春は一人屋上で景色を眺めていた。
ハンカチをポケットから出し涙を拭う。
「こんなに泣いたって安藤君が好きになってくれるわけないのにね。」
そう呟いたその時。
「こはるん」
振り向くと夏が立っていた。
「安藤君・・・」
「夏でいいよ」
夏はにこっと微笑むと小春に近づく。
「夏・・・・君・・」
小春の表情が次第に明るくなった。
「ねぇ夏君。あの約束覚えてる?」
それは小春が倒れた日のこと。
意識を失い倒れた小春は病院で目を覚ました。
「あれ・・?ここは・・?」
小春がゆっくりと起き上がると側には夏がいた。
「夏君・・・?」
「大丈夫?こはるん体弱いんだから無理しちゃだめだよ。」
夏の優しい言葉に小春は胸がむずむずした。
「俺さ、ずっと中1の時から好きだった人がいたんだ。」
夏は自分の過去を小春に話し始めた。
小春は興味津々で聞く。
桜が死んだと聞いた時は驚いた。
「俺、まだその子のこと好きって思ってた。けど違ったんだ。
俺は・・・・」
「好き」
夏の言葉を遮って小春は呟いた。
「私安藤君のこと好きだよ。たとえ安藤君が玲奈ちゃんのこと好きでも」
「え・・・?」
小春は夏に必死で訴えかけた。
「お願い。お試しで良いから付き合って・・・私のこと好きになってよ。私のこと少しでも知ってよ。」
しばらくの間沈黙が続いた。
そして夏はゆっくりと口を開いた。
「・・・わかった」
こうして二人は付き合うことになったのだ。
「あの時私のこと好きになってくれるって言ったよね?知ってくれるって言ったよね?」
小春は夏に縋り付きながら言う。
夏は口を硬く閉じたまま下を向いている。
「夏君は玲奈ちゃんじゃなくて中1の時に好きだった子でもなくて私を選んでくれたじゃない。」
一旦収まった涙が再び溢れ出して来る。
小春はその場にしゃがみこんだ。
「何とか言ってよ・・」
夏はゆっくりと顔を上げ小春をじっと見つめて答えた。
「ごめん・・・こはるんごめん・・・俺やっぱり自分に嘘はつけないよ。」
夏は辛そうに小春に謝った。
小春は夏から手を引き、一歩後ろに下がった。
「そっか・・・そうだよね。ごめん。私夏君の気持ち知ってて最悪だね。」
小春は手で涙を拭い夏に笑顔で言った。
「今までありがとう。幸せになってね。短い間だったけど楽しかったよ。
小春は夏を振り返ることなく屋上を後にした。