コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: サクラ ( No.56 )
- 日時: 2011/01/13 22:33
- 名前: 柚莉愛 ◆VoHZnMKTK2 (ID: LV9Enekb)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi
第36話 「別れのプレゼント」
夏休みに入った。
夏は毎日のように部活へ通う。
時に桜がいないか探すこともあったが桜を見かけることはなかった。
悲しく思いながらも桜も部活に来ていることは知っていたため、
桜がどこかで見ているかもと思い必死で頑張っていた。
そして夏は自分の誕生日を楽しみにしていた。
そんな時、
8月10日の夜電話が鳴った。
「はい、安藤です。」
「安藤君?担任の原野です。」
夏はびっくりした。
担任から電話なんて滅多にないからだ。
「えっ!?俺なんかしましたか?」
先生は戸惑いながら夏に言った。
「実は今日の夕方同じクラスの松井桜さんが事故で亡くなったの・・・。で同じクラスだから両親がお通やに来てくれって。明日なんだけど。」
先生の声は鼻声だった。
先生は泣いていた。
「えっ・・・。」
夏は驚きのあまり受話器を手から離してしまった。
「嘘・・・!?」
受話器の向こうから先生が自分を呼んでいた。
だが夏は再び受話器をとる気になれなかった。
「母さん、先生から。」
そう言って珍しく家にいた母に夏は受話器を託した。
次の日夏はまだ桜が死んだということを信じることが出来ぬまま、
お通やに参加した。
だが会場に行ってからの記憶がない。
お葬式にも参加したが桜に花を添えた記憶のみがぽっかり抜き取られたようになかった。
周りを見ると親族が泣いている。
クラスメイトも。
親友だったあさかも大泣きだ。
だが夏の目から涙は溢れなかった。
自分でも不思議で仕方ない。
「何で・・・?何で桜死んだの?」
夏は独り言を呟くとそのまま会場を飛び出し学校へ向かっていた。
自分のクラス2-Aに入る。
夏は自分の席に座った。
「!?」
机の中から何かが見えた。
夏はその何かを出す。
「何これ・・・?」
そう思いそのきれいに包装されたものを開けてみた。
中には腕時計。
手紙もあった。
夏は黙って手紙を読む。
それは夏が大好きだった桜からのものだった。
「何だよこれ・・まだ早いじゃん・・。てかこれ俺が欲しかったものだし。今日音楽室に行ったら何があったの?」
夏は途端に涙が止まらなかった。
「桜!何で?俺に言いたいことあったんだろ!」
思わず叫ぶ。
夏にも桜に言いたいことがあった。
「好き。」
ただこの一言を。
桜が自分に誕生日プレゼントをくれたと同時に言うつもりだったのに。
こんな形でプレゼントをもらうことになるなんて。
「うっ・・。」
夏は机に伏せて泣いた。
泣き続けた。
夏休みの夕暮れの教室は嫌に静かだった。