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Re: サクラ ( No.60 )
日時: 2011/01/14 17:54
名前: 柚莉愛 ◆VoHZnMKTK2 (ID: LV9Enekb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi

第39話 「心の奥にそっとしまいこむ」

玲奈は家に着いた。
「ただいま。」
いつもどおりの挨拶をして家に入る。
「おかえり。」
家には母がいた。
父はまだ家に帰っていないようだ。
「先にお風呂入ったら?」
母が玲奈に言った。
「うん。」
玲奈は適当に肯くと風呂場へ向かう。
この頃母と玲奈はほとんど会話しなくなった。
玲奈は幼い頃は桜と共に母によく楽しい話をしていたが、
桜がいなくなり、口数も減り母に自ら話すことはあまりなかった。
「はぁ・・・。」
お湯に浸かった玲奈は思わずため息を漏らした。
今日一日で色々なことがあった。
土日があけたらどうなるのだろうか。
玲奈は不安でいっぱいになった。

お風呂に上がってからも母と会話をすることなく夕食をすませた。
テレビを見ることもなく玲奈は自分の部屋へ向かう。
ふとドアの前で足が止まった。
自分の部屋の向かい側の桜の部屋。
桜が天国へ旅立ってから一度も入っていない。
いや入れなかったのだ。
玲奈は唾を飲み込むと決意をしたように桜の部屋の扉を開けた。
桜の部屋は3年前と変わっていなかった。
しかし埃は全くない。
きっと母が毎日掃除をしているからだろうと玲奈は思った。
部屋の中は桜が大好きだった水玉だらけだった。
玲奈は桜の勉強机へ近づく。
そこは桜が3年前に使っていた教科書、文房具、ノートなどが置いてあった。
それには2−Aと書いてある。
ふと玲奈は机の引き出しからはみ出ていたアルバムを取り出した。
それは桜の中学校の写真がたくさんあった。
玲奈はひとつひとつを真剣に見ていく。
しかしあるページで手が止まってしまった。
それは桜が中2のときのクラス写真。
笑顔で移っている桜がいる。
近くには眼鏡をかけているあさか。
夏はというと高校生の今とほとんど変わらない外見。
少し今より背が低い。
その夏の周りには桜が書いたであろうと思われる、
ピンクでハートが書かれていた。
「桜ちゃん・・・やっぱり夏のこと好きだったんだね・・。」
玲奈はそのアルバムを元の場所に戻した。
——やっぱり私は夏のことを好きでいちゃいけないんだ・・・
  桜ちゃんは大好きだった人ともう話せないんだから・・
玲奈は心にそっと夏への気持ちをしまいこんだ。
もう夏のことは考えない。
自分は桜のために天文学者になることだけを考えようと。
玲奈の決心は固かった。