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Re: サクラ ( No.63 )
日時: 2011/01/15 16:26
名前: 柚莉愛 ◆VoHZnMKTK2 (ID: LV9Enekb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi

第41話 「大好きだから」

2日間の土日が終わった。
玲奈は土曜日は一日中塾で勉強をし、
日曜日は水麻と遊んだ。
水麻にはすべてを話した。
桜が事故で亡くなったことを除いて。
水麻はそうとう驚いていた。
「そっかぁ・・その桜ちゃんと夏君は両思いなんだね。」
——まあ桜ちゃんはもういないけど・・・
「うん。」
「でも玲奈はいいの?」
水麻は真剣な顔で玲奈を見つめる。
「え?」
「玲奈はこのまま諦めるの?」
玲奈はなるべく顔に出さないように答えた。
「うん。新しい恋見つける。」
「そっか。じゃあ応援する!」
玲奈は水麻が親友でよかったと改めて思った。

そして月曜日。
玲奈はいつもどおりの朝を迎えた。
ただ夏と顔を合わせると思うと憂鬱だった。
——はぁ・・・隣の席なのに普通にするなんて無理だよ・・・
気持ちからかいつもより準備に時間が掛かった。
「いってきます。」
テンション低めで家を出た。

学校に着いた。
教室には誰もきていない。
玲奈は席に着くと問題集を開き勉強を始めた。
思えば玲奈は桜が死んでからの3年間勉強づくしの毎日を送っていた。
中3からは高校受験のため毎日塾。
この一番高の星が丘高等学校にいくために必死で頑張った。
星が丘は都内でも東京大学合格者が一番多い学校だ。
玲奈は天文学者になるためにこの高校へ入ったのだった。
高校に入学してからも週4回塾へ通い、
好成績を維持してきた。
今もこうして勉強をしている。
——私の人生って何なのかな・・・
  桜ちゃんのものなの?
  天文学者になるために必死でやってきたけど自分は満足しているの?
玲奈は自分で自分がわからなくなっていた。
問題集を閉じ机に伏せる。
「私は何になりたいの?」

その時教室の扉が開いた。
入ってきたのは夏だった。
夏は先ほどの玲奈の独り言を聞いていたらしく玲奈に尋ねた。
「何になりたいの?」
玲奈は一瞬迷って答えた。
「天文学者」
「それは桜のため?」
玲奈は何も言わない。
「俺科学者になりたいんだ。中2のときに桜が天文学者になるって聞いて対抗して俺は科学者になるって言って。だけど今は本気だよ。」
夏は一瞬黙って続ける。
「俺今でも桜のこと好きなんだ。たとえ桜がこの世にいなくても。俺は桜のこと一生忘れない。」
「わかってる!夏が桜ちゃんを好きって気持ち。桜ちゃんだって夏のこと大好きだったの。」
玲奈の声は涙声に変わった。
「だから私は夏のこと忘れる。もう好きにならない。だから夏は桜ちゃんのことをずっと好きでいてあげて。そのために私達もう前みたいに仲良くしないほうがいいと思う。」
「え・・・?」
「夏と仲良く出来ない。じゃないと私・・私・・・」
玲奈は涙を堪えることができなかった。
「ごめん。気にしないで。私のこと夏も忘れて。桜ちゃんのためにも。」
夏は静かに答えた。
「わかった。俺達が話すのはこれが最後だな・・。」
玲奈は夏に静かに微笑みかけると教室を飛び出した。
女子トイレに入った玲奈は思い切り泣く。
——桜ちゃん・・・これで良かったよね?

教室に取り残された夏もやりきれない思いでいっぱいだった。
「くそっ・・。」
夏は思いっきり机を叩いた。
——桜・・・俺は忘れないから

玲奈と夏の会話をずっと廊下から
あさかは聞いていた。
あさかの瞳から涙が滴り落ちた。
「桜・・・。」