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Re: サクラ ( No.72 )
日時: 2011/01/23 15:23
名前: 柚莉愛 ◆VoHZnMKTK2 (ID: LV9Enekb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi

第47話 「私の夢とあなたの夢」

水麻と別れてから家に着くまではあっという間だった。
家に帰った玲奈は、部屋に閉じこもり勉強を始める。
「玲奈、入っていい?」
その時ドアの奥から母の声がした。
「うん」
玲奈は不思議に思いながら返事をする。
母は玲奈の大好きなチーズケーキと紅茶を持っていた。
「進路について聞きたいの。」
玲奈は解いていた問題集を閉じ、母と向き合う。
「玲奈は本当に東大に行って天文学者になるの?」
「うん。」
玲奈は即答した。
少しの間沈黙が続いた。
先に口を開いたのは母だった。
「それは本当に自分のため?玲奈自身がなりたいの?」
玲奈はどういうわけか答えられない。
気持ちはそう思っているのに。
母は穏やかに言った。
「桜のためならやめていいのよ。桜はあなたの幸せを望んでるはず。
 あなたの夢はあなたの夢。桜の夢じゃないんだから。」
母の言葉は玲奈の心に深く刻まれた。
「もう一度よく考えなさい。まだ時間はあるんだから。」
母はそういい残すとチーズケーキのお盆を玲奈の机に置き、
玲奈の部屋を去った。

取り残された玲奈は先ほど母に言われた言葉と、
下校時に水麻に言われた言葉を思い返していた。
机に伏せ、考え込む。
——水麻のいうとおりかもしれない・・・私は夏のことちっとも忘れることができてないもん・・・
  お母さんの言うとおり天文学者にも本当になりたいのかわからない。
玲奈は泣いた。
静かに泣いた。
そのまま疲れきっていた玲奈は眠りに落ちた。

玲奈は夢を見ていた。
夢の中では死んだはずの桜が桜の部屋にいる。
「玲奈も夏のこと好きなの?」
桜が玲奈に尋ねた。
玲奈はためらいがちに答える。
「うん・・・でも私は諦めるから。」
「いいよ。諦めなくて。」
「え・・?」
「だって私はもう死んじゃったもん。今夏のこと幸せにできるのは玲奈しかいないよ。」
「でも・・・・。」
予想外の展開に夢の中の玲奈は戸惑う。
桜はあのかわいらしい笑顔で言った。
「だから素直になって!夏のこと好きって自分で認めて。」
「桜ちゃん・・・・。」
玲奈は思わず涙ぐんでいた。
「あともう一つ。」
「何?」
桜は優しく玲奈の手をとって言った。
「天文学者になりたいって夢を玲奈に押し付けたけど、これは私の夢だから。玲奈が本当になりたいものを目指してね。」
にこっと微笑むと桜は空高く舞い上がり消えた。

「桜ちゃん・・・」
玲奈は目を覚ました。
「あ!!もう朝!」
玲奈はそのまま夜まで眠ってしまったのだ。
風呂も入っていなかったため急いでシャワーを浴びる。
——大変・・このままじゃ遅刻・・・
玲奈は朝ご飯を食べずに家を出た。
昨日の昼から何も食べていないのに・・・

玲奈は走りながら昨夜の夢について決断した。
——桜ちゃん・・・私桜ちゃんの分まで幸せになる。夏を幸せにしてみせる・・天文学者にだってなってみせるから