コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世にもベタな冒険モノガタリ ( No.8 )
- 日時: 2011/02/19 11:58
- 名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: JLRTe3gT)
*
まず状況を説明しよう。今回は説明だ、ちゃんと状況は掴んでるんだ。
…なんとかな。
「みれ…じゃない、レティシアさんとやら。何してるんだ?」
「シアでいいわよ。それから二度と向こうのあたしと間違わないで」
「あぁ」
って、何一つ質問に答えて頂いてないんだが…。
俺が質問をした事に気付いていないのか、レティシアはじっと空を見上げていた。
「…来た!」
なにがだよ。
その言葉を飲み込んで、つられて俺も上を見上げた。
「なんだよ、アレ…」
見上げた空には先刻まで無かったなにかがあった。
空が裂けている。その状況を認識するまで長い時間を要した…かった。
裂け目から覗く赤い閃光を忌々しげに睨んだレティシアが突然叱声を上げたからだ。
「あんたも来なさいッ!!」
どこにだよ。
意外と冷静に思ったけど、あえて言葉は発さない。レティシアさんは俺に答えを求めてないからな、どうせ。
レティシアさんの声には絶対服従希望しか感じ取れん。
腕を掴まれた。あまりに突然で、反抗する暇さえなかった。
レティシアは俺を掴んだ時と同じように、いきなり跳躍した。
「待て待て待て!!」
「何よッ!?」
言ってる間に地上が遠ざかり、かわりに空の亀裂が近づいてくる。
常識を遥かに超えた跳躍力。仮にも俺とそんなに変わらない女が、助走もなしに、飛んだ。
ピ、ピピッ…ピ———
微かに聞こえた電子音。
体中で空気の流れを感じるなか、微かな音が聞こえるなんて…俺もまだまだ余裕があるんだな。ふふん。
「状況は?」
みれ…レティシアが、突然言った。俺に言ったんじゃない事は確かだ。
『…悪い』
少しの沈黙(だった気がする)の後、一言だけ返ってきた。多分、女だと思う。
「ちッ」
舌打ち。そしてそんな目で俺を見るな。
全く状況が掴めてないんだ。反応できるかッ!!
『“蒼火”、進入します』
「了解、同じく“紅火”進入します」
蒼火さん(誰?)と紅火と名乗ったレティシアが進入する、って言ったよな。
…ここにか!? この亀裂にかッ!?
いや、薄々気付いてはいたんだ。でも、嫌だろ、絶対。
「無理無理無理無理……!!!」
*