コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 次元不適合者 一次元目2 ( No.45 )
- 日時: 2012/03/10 16:39
- 名前: 麿ん堂 (ID: EE33HIRZ)
「——これで入学式を終わります。新入生の皆さんは担任の先生と新しい教室へ移動して下さい」
あー、やっと終わった。よいしょ、と座っていたパイプ椅子から腰を浮かせ隣の子の後ろをついて行く。私はA組になったから移動が一番早くて嬉しいやら面倒やら。堅苦しい話で姿勢を正しすぎたから、伸びをすると背中がバキバキいった。
しっかし、この学校は何処も彼処も無駄に広いんだなぁ。しかも無駄に金をかけてる。玄関は開放感溢れる全面鏡張り、開放感は良いが太陽の光が反射して私の目を攻撃してくるのは嫌だ。靴箱は靴や傘などを入れておけるようにロッカー型で、しかも個人用……幅取り過ぎだろ。そして今歩いている体育館から校舎への渡り廊下は左右両方と下…つまり床の部分が鏡張り。おい……男子はいいが女子はどうすればいいんだ! ここは2階だから下から見たら下着が丸見えじゃないか!! 畜生、だから新入生パンフレットの制服についてというところで女子はスパッツ着用義務と書いてあったのか……!
学校の設計者に恨みを抱きながらゾロゾロと教室に向かっていると、窓の外に人影が見えた。そこは校舎の裏…所謂、裏庭というところだった。これがまただだっ広くて…畑やら家畜小屋らしき物やらがあり、その周りは木々が生い茂っている。その木の下に人が居るのだ。…はて、他の学年は今の時間授業中だったような……新入生だったらこの集団の中に居なきゃなんないだろうし……じゃあ、あれは誰だ? なにやら前方で渋滞が起きて列が動かないのでちょっと観察してみることにする。
その人は私と同じここの学校の女子の制服を着ていた。…ということは女子か。長い髪の毛を揺らし、くるくると舞っていた。…ん? よく見てみるとあの女子は靴を履いていなかった。何やってんだあいつは! あのままじゃ靴下が汚れるだろう!! もう汚れているだろうけども!!
「あの……」
後ろの女子に声をかけられて、はっとした。私は本当はこんなことをしている場合じゃないのだ。他の新入生と同じように先生の指示に従って同じように行動しなければならないのだった。すみません、と謝って前の女子を追った。
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教室はとても市立の中学とは思えない程豪華だった。机や椅子が使いやすいのは勿論、冷暖房完備、個人用のロッカーも靴箱のよりも大きく大容量。それに加え、個人用の冷蔵庫があった。それには購買で売っている物から校内のコンビニ、校外のコンビニで売っている物まで揃っている。いちいち買いに行かなくても便利だ。そして、担任の話によると文房具は無くなったら無料で配布されるらしい。正に、至れり尽くせりだ。
自己紹介、教科書配布、学校案内と時は過ぎ、今は昼休みだ。初日から午後まであるのかと思いながらふらふらと廊下を歩く。別に行くあては無いし、昼食は手作り爆弾おにぎりで早めに済ませた。ということで、暇すぎる。ふわぁ、と欠伸をしながら時間を潰す方法を考える。……そういえば、あの女子はあの後どうしたのだろう。ふ、と思い出した。何故か気になるのだ、あの女子のことが。うーん…廊下の窓にへばり付くのもなんだし、どうせなら景色の良さそうな屋上へ行くとしよう。私は屋上へ続く階段を上った。
「う、わ」
屋上のドアを開けた途端、春風がぶわっと吹き込んできた。うっすら桃色に色付いているように見えるそれは私の髪やスカートを揺らした。まだ少し肌寒い。ぶるり、と体が震えた。
屋上に踏み込んでみると暖かい太陽の光がまるでタオルケットのように私を包み込む。ああ、ここは良いお昼寝ポイントになりそうだな。そう思いながら裏庭の方へ歩く。かしゃん、とフェンスの掴んで裏庭を見渡す。あの女子は、何処にも居なかった。
自分のクラスへ戻ったのか…。ほっと安心したような気持ちになり屋上から出ようと振り返った瞬間、私はビックリした。
あの女子が、私の後ろに居たのだ。人の気配なんて無かったし、ドアが開く音もしなかった。急に現れた女子に私は普通にビビっていた。そんな私をきょとんとしたような、軽く驚いているような顔で見ている女子は上履きを履いてなかった。真っ白な靴下は土や泥で真っ黒に汚れていた。