コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

おいでませ、助太刀部!! ( No.180 )
日時: 2011/06/21 06:29
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: AzZuySm.)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=HLm1H9IsOcw

第9章 「嘘を紡いだ唇を」
(part9)
♪テーマ曲 one-sided love/℃iel(IOSYS)

「分かった!! じゃあ、裸エプロンで添い寝してあげる!」
「もっと嫌です」

忍さんが健気にフォローをいれてくれた有の言葉を華麗にスルーして言った。
この人は一体、何が分かったんだろうか。

「ん、分かった。 じゃあ、明日、送っていく」

パチンッという軽い音と同時に、佑香さんが携帯電話を閉じた。
仕事関連の電話かな……?

「忍、朗報だ」
「何?」

忍さんの返事の後、佑香さんが一呼吸置いてから、内容を伝えた。

「翔が『明日、ちゃんと来れるなら相斗を泊めてもいいぞ』だとさ」
「あうっ!? 大変だ! 翔がメイドと2人っきりになっちゃう! ちょっと行ってくるね!」

佑香さんの言葉を聞くや否や忍さんが脱兎の如く、駆け出していった。
翔と眸さんを2人っきりにしたくないと思うなら、僕を寮に帰してもらいたい。

……とりあえず、翔にメールくらいはしておいてあげよう。

「あっ!」

忍さんが突然、大きく声をあげてから、こちらに戻って来た。

「帰ってきたら、ちゃんと約束通り、一緒に寝てあげるからね!!」

笑顔で危険なことを言い残し、忍さんが再び駆け出していった。
「お願いだから、戻ってこないでください」と言いたかったが、その言葉をグッと飲みこむ。

「……佑香さん」
「何だい?」
「僕は一体、どうすれば……?」

忍さんに対抗できる数少ない人に相談を持ちかける。

「普通にしてな。 帰ってきたら、馬鹿なこと出来ないように、お灸を据えておくから」

佑香さんが目と右手に持ったメスをギラつかせながら、そう言った。
忍さんは実験台モルモットにでもされるのだろうか。

でも、それはこの家だと日常茶飯事だしなぁ……。

* * * * * * * *
※翔視点です。

「岡崎先輩。 いい加減に大人しく、口を開けてください」
「いや、自分で食えるから!!」

相斗が「実家の方に泊まる」とか言い出したせいで、眸と2人っきりで放置されてしまい、今に至るわけだ。

「折角、2人っきりになれたんですよ? このくらい、大丈夫です」
「嫌だ!」

いくら見た目が可愛いからといって、男に「あーん」とかしてもらっても嬉しくない。

実を言うと、さっきまで月海、中子、松もいたのだが、朱里さんがつまみ出してくれた為、現在は3人とも大人しく帰路についている。

「……分かりました。 ボクも腹を括ります」

眸が妙に強い意志のこもった目をして、宣言した。
諦めてくれたのだろうか……?

眸はビシッという音が聞こえてきそうなほど、鋭く窓を指差した。

「次、食べてくれなかったら、僕はそこから飛び降ります!!」
「待て! 早まるんじゃない!!」

俺の言葉などに耳を貸さなかった眸は何も言わずに、箸でトンカツをつかみ、俺の口の近くに運んできた。

「はい、あーん!!」

眸が切羽詰まった表情で、箸をグイグイと前に差し出す。
正直言って、超怖い。 いや、怖いとかいう次元を超えていると思う……!!

「うっ……。 一回、だけだからな!」

プライドを捨て、トンカツを口に運ぼうとした瞬間————

「いけませんッ!!」

そんな声と共に、扉が勢いよく開いた。

「翔に『あーん』するのを許されるのは、家族だけだよ!!」
「お前らにも許した記憶はないけどな」

兄貴にツッコミを入れる。



…………というか、なんで兄貴がココにいるんだ?