コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

おいでませ、助太刀部!! ( No.201 )
日時: 2011/08/10 07:37
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: AzZuySm.)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=HLm1H9IsOcw

第9章 「嘘を紡いだ唇を」
(part13)
♪テーマ曲 one-sided love/℃iel(IOSYS)

「……取り込み中に悪いんですけど、そろそろ寝る準備してもいいですか?」

日本語が通じそうな朱里さんに声をかける。
兄貴の襲撃のせいで、明日は休日出勤をしなくてはいけないというのに、いつもの数倍も疲れてしまった。

「そうだな。 忍、さっさと帰ろうか」

朱里さんが兄貴の骨盤の辺りを軽く蹴りながら急かす。

「むぅ……。 しょうがないなぁ……」

兄貴も正当な理由がある朱里さんの言葉は割と素直に受け入れてくれる。
長年、一緒にいてくれた見返りなのだろう。

とは言っても、兄貴みたいな無茶苦茶な奴と長期間、つるんでくれている友人は、中子と朱里さんくらいなものだろう。

「じゃあ、翔、おやすみ」

兄貴が、どんな女性でも虜に出来てしまいそうなくらい魅力的な笑みを浮かべて言った。
だが、残念ながら俺は男だ。

「ん、おやすみ」

手を振りながら、兄貴に返事を返す。
明日は朝早いし、もう風呂に入っておこう。

* * * * * * * *

「翔、おはよう……」

翌日、部室に着くと相斗がやつれた表情で弱々しく挨拶をしてきた。
昨日のうちに、一体、何が起こったのだろうか。

「おはようっ! 私は部長の深間秋牙だよっ」

部室に着いてすぐに、依頼者と思わしき人が扉を開けた。

「あ、おはようございます」

深間の挨拶に訪問者が反射的に軽く頭を下げ、答える。
その動きに連動して、サイドに深緑色のメッシュが入ったポニーテールがふわりと揺れる。

「鎖月さんじゃないですか」
「あれ? 眸さん?」

ん? この二人は面識があるのか?

「…知り合い?」

花薇が助太刀部一同を代表して尋ねる。

「はい! クラスが一緒なんです」

眸が元気よく、満面の笑みを浮かべて返事をする。
入試の面接であれば、満点を貰えただろう。

恐らく、花薇が鎖月という人物を知らなかったのは、学年が一緒でも、棟の場所が違ったからなんだろうな。

「今日は依頼ですか?」
「うん」

眸の言葉に鎖月が頷く。
そもそも、生徒会のように巡回しなくてはいけない人間以外が、依頼も無く立ち寄るとは思えない。

「えーとっ、鎖月ちゃんの依頼は……。 伊野ちゃーんっ! ファイル、どこにあるっ?」

深間が伊野に依頼用のファイルの所在を尋ねる。

「そこの棚の二番目の引き出しの中」

伊野が無表情のまま答える。

「ありがとっ! 依頼内容は妹探しであってるっ?」
「はい、合ってます」

ファイルを確認した深間の問いに、鎖月が頷く。
妹探しというと……あのツチノコ探しか。

「あっ、タイミングが悪いんだけど、新入部員の紹介をするねっ」
「いくらなんでもタイミング悪すぎだろ!」

どう考えたって、依頼者の話を聞く方が先だろう。

「道成ちゃんと中子ちゃんとまつくんですっ。 沫くんは松ちゃんの弟なんだってっ」

コレは何のいじめだ……!?
というか、部外者の沫まで入れちゃうのか? というか、周りの人が「誰?」っていう視線を向けてるじゃねぇ−か。

他人と身体以外の関係を持とうとしない相斗と普通に接している辺りから、度量やカリスマがあることは分かっていたが、まさかここまでとは……!!

「というわけで、今回の案件は私こと、紅中子と沫と嫁の翔クンで担当するわよぅ」
「俺は嫁じゃねぇーよ!!」

一応、突っ込みを入れておく。

「よ、よろしくお願いします」

鎖月が戸惑いながらも、礼儀正しく頭を下げる。



できることなら、中子の言葉にツッコミを入れて欲しかった。