コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: おいでませ、助太刀部!! =企画最新話、更新= ( No.248 )
- 日時: 2011/09/13 23:12
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)
第9.5章 「ドキッ☆ 三次元だらけの学園祭」
【part.盗まれる方が悪いんだよ?】
「兄貴!」
相手が猛スピードで走っていたため、なかなか追いつけなかったのだが、兄貴が2年G組の辺りで立ち止まったところでやっと追いつくことが出来た。
気づかれないというのは少し悲しいので、一応、兄貴に声をかけておく。
「翔!? 兄さんを追いかけてきてくれたの?」
俺の声に兄貴が嬉しそうに顔を綻ばせ、目にも留まらぬ速さでこちらに飛びついてくる。
日に日に飛びついてくるスピードが増したり、死角から飛び出してくることが増えているのは進化と捉えるべきなのか、退化と捉えるべきなのか、判断に困る。
「勘違いしてるようだが、俺は兄貴のせいで出る被害者を減らそうと思って来たんだ」
「うんうん、翔はツンデレだね。 そんなところも可愛いよ!」
俺の弁解、というかここまで来た目的の説明を、兄貴は何故だかツンデレのツンの部分だと捉えてしまっているらしい。
兄貴にデレた記憶は微塵も無いのだが、あいつの脳内には俺に甘えられた記憶があるのだろう。
そうでないと、ツンデレだ、とは言って来ないだろうしな。
だが、一つ言うとしたら、それは間違いなく記憶の改竄だ。
「……ん?」
ふと、兄貴の手元に目をやると、既に目的の燕尾服を手に入れたようで、紙袋が握られている。
演劇部や映画研究部辺りから奪ってきたものだと思うのが打倒なのだろうが、その2つの部活は両方ともこちら側の棟ではなく、部室棟に入っていたはずだからその可能性は低いだろう。
「……兄貴、それはどこから盗ってきたんだ?」
念のため、兄貴に燕尾服の元の在処を尋ねておく。
「ベルから奪ってきたんだよ」
兄貴が何事もなく他人から奪ってきたこと肯定する。
確かに去年の帰国子女枠にはベルがいたな……。
クリンベリルは2年G組に在籍する男子生徒で、本名が気に入らないのか自らを「ベル」と名乗っていたり、制服はちゃんと着ているものの、授業中だろうが何だろがいつでもヘッドホンを首にかけていて、更には「主がピンチだから」とかいうような理由で授業を放棄したこともある猛者だ。
「あっ!! 翔、ちょうどいい所にいた! そいつを捕まえてくれ!」
廊下の奥から、ちょうど話にあがっていたベルの声が聞こえてきた。
おおかた、兄貴に奪われた紙袋に入っている燕尾服を奪い返しに来たのだろう。