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おいでませ、助太刀部!! ( No.261 )
日時: 2012/01/02 22:55
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: ADRuIPKx)
参照: もう今年も最終日ですね

「…………朱里さん、騙されたんじゃ……?」
「…………うん。 兄さんもそう思うよ」

扉の前で相変わらず不思議そうな顔で突っ立っている朱里さんに兄貴までもが同情の目を向ける。
身内以外には辛く当たる兄貴だが、朱里さんは例外だといってベッタリだったりする。

「じゃあ、黄緑が大丈夫なら帰りますね」

そう言って朱里さんが扉に背を向けた瞬間、ガスッという派手な音をたてて扉に風穴が空いた。
そんなことが出来るのは1人しかいない……わけではないのだが、そんなことをするのは1人しかいない。

「男子寮寮長、目黒朱里。 トラウマを負わずにここから出られると思うなよ」

「俺がルールブックだ!!」と主張するかのようなドヤ顔で、まだ煙が上がっている銃口を朱里さんに向けたまま桜がそう言った。

「は?」

朱里さんが銃を撃たれたことよりも、桜の言葉に疑問を示す。
兄貴と上手くやっていくにはこれくらいの神経の太さとスルースキルが必要なのか……。

「目黒くんならもう帰ったわよ〜?」

稲田先生がシフト表の余りを手に持ったまま、こちらに顔を向けて言った。
もう帰った、というか最初からいなかったはずなんだが……。

「目黒寮長、これを着てください」

巫女服姿の一条院と侍を意識したであろう衣装を着用した男子生徒——白根魔叉兎が朱里さんに紙袋を押し付ける。
朱里さんが一応中身を確認してみると、そこには兄貴のものとは細部が異なっている燕尾服が入っていた。

俺に降りかかる災難は理不尽なものが多いが、それでも半分くらいは自業自得だ。
だが、朱里さんは九割九分近く理不尽なものな気がする。

兄貴に懐かれた時点でもうダメな気もしないこともない——いや、ダメな気しかしない。
兄貴本人は至って幸せそうなんだけどな。

「何これ? ドッキリ?」

朱里さんが自分に渡された衣装と同じく燕尾服を着ている兄貴の方を見て問いかける。
それに対して、兄貴は首を横に振る。

「あらぁん? 忍だけじゃなくて朱里も巻き込まれたのぅ?」

誰かの着付けを手伝っていたと思わしきナース服姿の中子が顔を覗かせる。
兄貴は能動的に巻き込まれに来たようなものだから、一緒にしないであげて欲しい。

「巻き込まれたっていうか……訳が分からん」

朱里さんが戸惑いの表情を浮かべて答える。

「多分、あの変態顧問は朱里のルックスの良さを使って客を呼び込もうとしてるんだよ」
「だいたい合ってるけど、兄貴だけは他人を変態扱いしちゃいけないだろ」

兄貴以上の変態なんて、16年間生きてきて1人しか見たことが無い。
そいつは俺の父親なんだけどな…………。

未だに何でお袋が親父と結婚しようと思ったのかが分からない。