コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- おいでませ、助太刀部!! ( No.265 )
- 日時: 2012/02/14 22:15
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
「うへへへ、有は可愛いなぁ」
あぐらをかいた兄貴の膝の上に乗っている中性的な顔立ちの大人しげな子——俺の弟である岡崎有が苦笑いを浮かべる。
だいぶソフトな表現に直したが、現実には有の頭に顎を乗せてグリグリしたり、セクハラ以外の何物でもないことをしていた。
いや、今もしている。
「………もしかして、ぼくは忍にぃの機嫌直しのために呼ばれたの?」
「あぁ。 お前が学校説明会に来ててよかったよ。 都合よく事が進んだ」
「………お母さん、オブラートって知ってる?」
「食ったことはあるが、美味くなかった」
「………そういうことじゃなくてね」
有が不満を訴えるが、軽くスルーされる。
それこそオブラートに包むと、お袋と会話は通じない。
「岡崎さんの妹? お家は男兄弟だったはずですが?」
凪風に問われる。
「いや、だって有は男だし」
よく勘違いされるのだが、有は男だ。
身長が159cmと低めで、顔と声も中性的、しかも性格が大人しいせいでより女々しく見える。
本人も気にしていて、有から見て双子の兄の優に相談しているのを見かけたが、「え? 有は女の子でしょ?」と返される始末だ。
大丈夫、俺はちゃんと有のことを弟だと思ってる。
「でも、やっぱり見た目は完全に男装した女の子だよね」
限りなく身内の相斗にもやはりそういう認識をされているようだ。
「わぁ、可愛い子だねっ」
「ほら、お姉ちゃんって呼んでみてよぅ」
「何を言っているのじゃ? 未来の姉である吾にこそその呼び名はふさわしい!」
「それにしても、可愛い子ですね……。 はっ、男の娘萌えに目覚めそうです!」
深間達が有の周りに群がる。
深間のは純粋な感想なのだろうが、それ以外はあからさまにおかしい。
特に松。
兄貴に加え、さらに中子達にも頭をわしゃわしゃと撫でられて、有が魔の手から逃れようと一生懸命身体をよじる。
しかし、その可愛らしい小動物のような動きが仇となったらしく。
「今、中学生なんだよねっ?」
「いやぁん、もうペットにしちゃいたいくらい可愛いわぁん!」
「翔と結婚すればこんな可愛い妹まで出来るのじゃな……」
「有たん、松とお風呂入るですよ」
やっぱり深間以外のやつのリアクションがおかしい。
特に松。
「………翔にぃ、相斗にぃ、助けて」
ついに白旗をあげた有が涙目で助けを請う。
こういう表情をするから同じクラスの男子から告白されてしまうのだろう。
横目で相斗を見ると、にっこりと微笑み————
「…………」
スルーした。
今の笑みは「今助けてあげるから安心してね」っていう意味じゃねぇーのか!?
うっかり相斗の基本性質を忘れてた……!
奴に関してはドS、いや、鬼畜がデフォだった……!!
「有、大丈夫か?」
近くにいき手を伸ばして、有の手をつかみ勢いゆく引っこ抜く。
兄貴も有には特に気をつけて力加減しているようで、案外あっさり引き上げられた。
「あらぁん? 可愛いのが2人に増えてるわぁん!」
「2人とも一緒に寝るですよ」
そういえば、俺は今メイド服を着ていました。