コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- おいでませ、助太刀部!! ( No.269 )
- 日時: 2012/06/05 21:34
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
- 参照: 怒涛の急展開(`・ω・´)
……気まずい。
尋常じゃないほどに気まずい。
「…………」
「…………」
昨日の鎖月のぶっちゃけた話を聞いた後よりも静かだぞ!?
目の前の机に置かれたお菓子がギュウギュウに詰められた箱に手を伸ばし、せんべいの詰め合わせ小袋を一つだけ手に取る。
ビニールの袋から取り出し、口に運ぶ。
思っていたより美味い。
「これから、どうするんだ?」
このまま下校のチャイムが鳴るまでお互い無言で過ごしてしまったら、わざわざ深間達と別行動をしているんだ、という話になってしまう。
やはり鎖月の依頼はだいぶプライベートということもあり、俺と伊野は助太刀部の部室の横の教室でこうして相談しているのだ。
…………いや、まだ相談はしてないが。
「結局、妹の特徴は?」
伊野がいつにも増して冷静に言った。
言われてみれば、結局のところ、情報は掴めなかったし……。
「…………」
「なんで黙るの?」
「……すまん」
情報が全く掴めていない——いや、正しくは掴もうとすらしていなかったのだが、改めてそこに触れられると謝るしかない。
「だろうと思って、少し調べておいた」
伊野がいつも通り平坦な口調でそう言った。
本当に頼りになるなぁ、という考えと一緒に申し訳ない、という気持ちが出てくる。
「鎖月薺さんは、一年A組所属で、一年では学年トップの成績。 家は鎖月財閥——日本でも有数の財閥で、親は彼女を跡取りにしたいらしくて、相当厳しく育てられたっていうことまでは調べた」
伊野がカンペやメモを見ることもなく、スラスラと自分の調べたことを言う。
依頼が来てから1日でここまで調べたこともそれを完璧に暗記していることもどちらも凄い。
「妹については?」
「そんなのはいなかった」
「え?」
鎖月の妹の存在を否定した伊野に思わず聞き返す。
すると、伊野は何故か俺の横に移動し、ちょうど間らへんの距離に紙をおく。
何だかよく分からない名前からして鎖月家の関係者だということは分かる。
「戸籍」という字が見えるのは気のせいだよな?
「この人は鎖月さんのお父さん。娘——というか子供の欄には薺以外の名前は無い」
確かに子供の欄に記載されているのは「薺」、ただ一つだ。
つまり、鎖月の記憶が無いほど小さい頃に事故死したり誘拐されてしまった、という線は無くなった。
「じゃあ、養子に出され」
「養子に出した場合は、子供の欄に養子に出したみたいなことが書かれるの。 でも、そんなことは一言も書いてない」
俺の言葉を途中まで聞いた段階で、伊野が否定する。
そして、そのまま、結論を告げる。
「お母さんの方も調べたけど、やっぱり薺以外の名前は無かった。 つまり、彼女に妹はいないの」