コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- おいでませ、助太刀部!! ( No.270 )
- 日時: 2012/06/24 15:46
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
翌日、鎖月を呼び出して、事の顛末を伝えた。
伊野が横にいると、傷心中の鎖月にトドメを刺してしまう可能性があるため、一番フォローが上手い深間を横に置いといたのが功を成したようで、とりあえず納得してくれた。
案の定、戸籍の出どころについて聞かれたが、伊野がいないから分からない、とだけ答えておいた。
実際、俺もあれをどういう手を使って持ってきたのかはさっぱり分からない。
「解決したねっ」
鎖月が帰った後、深間が嬉しそうにそう言った。
解決したにはしたが、妹は存在しているという考えでいた鎖月にとっても俺にとっても釈然としない結果となってしまった。
恐らく、伊野は最初からいないことを前提に考えていたから、あそこまで早く結論に至ったのだろう。
伊野は見た目も可愛いし、文武両道だしで、完璧なように見えるが明らかにコミュニケーション能力に欠けている。
異常に少ない表情のバリエーションや平坦な口調は失礼だとは思うが、機械のように思える。
相斗もいつもヘラヘラとした作り笑いを浮かべているが、相斗の場合は兄貴に襲われた時や優や有とゲームをしている時にはちゃんと素の表情を浮かべている。
つまり、外に対しては人見知りなど諸々の理由で素直に感情を出すことができないが、身内相手なら素直に感情を出すことが出来る。
しかし、伊野と一番仲が良さそうな深間曰く、伊野は数少ないの肉親である祖父母にさえも、あんな感じの態度で接しているらしい。
「んー……」
「どうしたのっ?」
少しばかり引っ掛かる伊野のことについて考えていると、深間が心配気に覗きこんできた。
やはり伊野のことは気になるが、深間に尋ねて心配させてもしょうがないし、それにあんまり長く考えていると今度はどこからともなく現れた兄貴が心配してくるから、今はあんまり深く考えないようにしよう。
「どうしたの? 誰に虐められたの? またお前か、このガキ!!」
「違ぇよ!! っていうか、兄貴いつも現れるタイミングよすぎるだろ」
「ありがとう!」
心の中を読んだのでは無いかというくらい綺麗なタイミングに本当に兄貴が現れた。
大学の授業は終わっているのだろうが、晩ご飯の準備諸々の家事は一体どうしたのだろうか。
色々な疑問を頭の片隅に追いやり、「別に誉めてねぇーよ」と適当にあしらい、兄貴を放置して深間と相斗達が待つ部室へと戻る。
「おかえり」
「相斗、モフモフするー」
「くっつかないでください」
今日は主なカオス材料である中子や松、それから生徒会組が来ていないというのに、見事なカオス空間が出来上がっていた。
兄貴の存在は、材料どころかカオスそのものということか……。
「翔もおいで!!」
ソファーに座っている兄貴が自分の左側をポンポンと叩き、俺を呼ぶ。
反対側の席には、この数秒間の間に何かが起こったらしく、魂が口から出かけている相斗が座っている。
……兄貴がいると、真剣な悩みさえもどこかへ行ってしまう気がする。
もちろん、悪い意味で。