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おいでませ、助太刀部!! ( No.271 )
日時: 2012/06/28 06:10
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)
参照: 翔「ため息の数まで数えてるのか……:(;゛゜'ω゜'):」

第10章「僕は一人になりたくないんだ」

「おはよう」
「んー……?」

鎖月さんの依頼があった一週間前以来、ずっと何か考え事をしているらしい翔から布団を剥ぎ取って起こす。
翔は基本的に完璧だが、ところどころ抜けていたり、寝起きが異常に悪かったりと細かい点が惜しい。

忍さん曰く、「そこに萌えを感じるんだよ!」とのことだが、気持ちは分からないでもない。
翔がそんな完璧な人だったら、今みたいに幅広い交友関係は作れていなかっただろう。

「やだ、まだ寝る」

案の定不機嫌そうな翔がそう言って、僕が手に持っている肌掛けを力いっぱい引っ張り、もう一度暖かい布団の中へ帰ろうと試みる。
こういうところを除けばだが、完璧な翔がモテないはずがなく、かなりの女子が僕に「相斗って、岡崎くんと一緒に住んでるんでしょ? 今度、遊びに行ってもいい?」とかふざけたことを抜かしてくる。
そもそも、僕は居候させてもらっているだけなのに——。

「やだじゃないよ。 早くしないと遅刻するよ!」

そんなモヤモヤした気持ちを抱えつつも、翔が掴んでいる布団を引っ張り返す。
こういう時だけは、翔の馬鹿力を恨む。

—*—*—*—*—*—

「…岡崎先輩がおかしい?」
「いつものことだろ?」

僕が部室に向かうと、花薇さんと桜さんと秋牙さんが何やら翔についての話をしているらしかった。

「岡崎は比較的まともな人だと思うよっ。 それなのに最近、ずっと考え事してるみたいで、おかしいのっ」

秋牙さんのいうまともの概念が世間一般と一致しているのか少し疑問だが、翔がここ最近悩み事を抱えているというのは、間違いないだろう。
翔は優しいから割と些細なことでも、他人のために悩んだりもする。
僕のことで悩んでいるところもたまに見かけるが、そういうところを見ると****なる。

—*—*—*—*—*—

「へ? 出て行ってほしい?」

キョトンとした可愛らしい表情でメイド服を着た男の娘がそう言った。

やはり翔が悩んでいるのは間違っていないらしいから、彼が帰って来る前に、一つ悩みの種をつまみ出しておこう。
最初は面白いかも、と思っておいておいてあげたが、つけあがり始めたからそろそろ潮時だ。

「うん。 君が来てから、翔がやつれてきちゃってて……」

嘘は言っていない。
現に、こいつが来てから翔の溜め息が増えたし。

具体的にいうと、前は多くても、一日五回くらいだったのに、最近は一日に十回近くになってしまった。
昨日に至っては、たった一日で十三回も溜め息をついていたのだ。